24日(土)は、埼玉県川口市にある「大野教室」に行った。同教室は第1、第3の土・日曜日の開講だが、今年はゴールデンウィーク中の営業を止めたため、それぞれ第2、第4にズレた。
教室には午後1時半過ぎに入った。大野八一雄七段は4~5人に指導対局を行っておりまずまず人も多かったが、先日ほどではない。
きょうは植山悦行七段から教えていただく。手合いは今回も平手。この手合いがよく分からぬが、植山七段が駒落ちを指したがらないのだからしょうがない。
▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀。△6二銀に▲2六歩。温故知新である。「むかしの矢倉ですねえ」と植山七段がつぶやいた。
植山七段は△5三銀右と急戦の構え。△5五歩に▲同歩は注文通りなので、今回は▲5七銀と変化してみた。
△5六歩▲同銀△5四銀に▲2五歩。ここで植山七段は△7五歩。1秒も読んでない手で、シビれた。
これを▲同歩は△7六歩▲同銀△6六角で下手悪い。やむない▲6七銀に△7六歩▲同銀右となっては、金銀4枚が左に偏り、作戦負けは免れぬ事態になった。
私は▲7五歩とフタをするが、その歩を狙って上手は△6三金と進出してくる。私は1歩損を甘受して金銀交換となったが、今度はその銀を△5六銀とかぶせられ、いよいよ苦しくなった。私は泣きの涙で▲4六金。
植山七段は「大沢流ですねえ」と苦笑したが、これは植山七段の余裕の表れである。もうこの将棋は負けたと思った。
何度目かの金銀交換ののち、私はまたも▲4六銀と耐える。△7五同飛には△8七金を防いで▲7八玉。△2五飛の転回には屈服の▲2八歩。ホントに辛い。
植山七段△3六飛。これは△3七飛成(と桂を取る)▲同銀△5五桂の強襲を狙っているのだろう。それを防いで私は、▲5六銀と歩をはらって耐えた。実は本局、いちばん印象に残った手がこれである。上手のいちばんの戦力は「歩」。こういう素朴な攻め駒は、摘み取ってしまうのがいいのだ。
△7三桂には角道を遮断して▲5五歩。とにかく忍の一字である。
植山七段は△7六金と打つ。次に△8七金打があるので、私は▲7六同金。△同歩には▲7五金もあったが、私は▲6七玉と逃げ越した。
植山七段は△2六角と覗く。△3七角成▲同銀△同飛成となれば、次に△7五桂もあって下手はもたない。
私は▲3三歩△同桂を利かして▲2七金だが、こんなところに金を使うようではダメだと思った。ただ、たまたま横で見ていたFuj氏は、下手が悲観するほどでもない、の言だった。
植山七段は飛車角を切って、△7五桂から△7四金と縛る。私は▲5二角と打ち、寄せられたらしょうがないと開き直った。
植山七段は△8七銀から△6七歩。次に△7六金までの詰めろだ。上下から挟みうちにされ、やっぱり負けか、と思った。
図以下の指し手。▲7六歩 まで、一公の勝ち。
私は、敵の打ちたいところに打て、と▲7六歩と打った。単に頭金を防いだだけの手だが、△7八金は▲同飛△同銀成▲同玉で下手玉に詰みはなく、上手玉は▲4一飛~▲2一金の詰めろがかかってしまう。
植山七段は「▲5二角が銀なら△8五桂~△8六金で詰むんだが…」とつぶやく。
ややあって、そのまま投げてしまった。
「(あまり形勢がよすぎて)温泉に入っちゃったよ」
が投了後の第一声。そして「ここ(▲7六歩)は▲6七銀と指すでしょう。だって▲7六歩と打っても▲7五歩と取れないんだもん」と続けた。
「はあ…。でも先生、(▲7六歩で)投了されたじゃないですか」
と私も反論する。もちろんどちらも、苦笑しながらの発言である。
しかし本音を言えば、終盤までホントに私の負けだと思っていた。この将棋を何で勝てたのか分からぬ。その中であえて勝着を挙げるとすれば、▲3三歩△同桂の利かしを入れたことだろうか。これがなければ上手になかなか詰めろがかからず、下手が負けていただろう。
私が敵陣に侵入した駒は、この▲3三歩と▲5二角のみ。この2手が実に効果的だった。勝ちに不思議の勝ちあり、とはよく言ったものだ。
ここで3時休み。きょうはW氏が休みのようだ。いろいろ忙しいのだろう。
そしてもうひとつ、きょうは女流王座戦一次予選の一斉対局が行われている。Fuj氏などはそれが気になって仕方ないふうだ。
私は和田あき女流3級とHanaちゃんに勝利者賞を懸けているが、和田女流3級は午前中に渡部愛女流初段に屈し、Hanaちゃんもまた、船戸陽子女流二段に負かされていた。
「よかっ(た)…あっ!!」
思わず本音が出そうになり、私は慌てて口をつぐむ。まさか土壇場になって賞品を進呈するのが惜しくなったとは言えず、誤魔化すのに苦労した(ただし…。後日棋譜を見たが、Hanaちゃんの将棋はちょっとひどかった。Hanaちゃん、本気で女流棋士を目指しているなら、いまの将棋ではダメである)。
対局再開。きょうは新規の小学生が来ていた。4月から始まった「女性教室」はほとんど生徒が集まっていないが、こちらは相変わらず盛況である。
大野七段によると、棋力は初段程度らしい。そこで私と平手で指すことになった。ただし、小学生君はライバルが三間飛車の使い手だそうで、私が仮想敵として、三間飛車に振ることが条件となった。
対局開始。と、小学生君は中飛車に振ってきた。これは意外である。対三間飛車を望むから、てっきり私は、彼が三間飛車破りを実践したいのかと思ったのだ。
小学生君は早指しで▲5六金~▲6六角。
何だこれは!?
(つづく)
教室には午後1時半過ぎに入った。大野八一雄七段は4~5人に指導対局を行っておりまずまず人も多かったが、先日ほどではない。
きょうは植山悦行七段から教えていただく。手合いは今回も平手。この手合いがよく分からぬが、植山七段が駒落ちを指したがらないのだからしょうがない。
▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀。△6二銀に▲2六歩。温故知新である。「むかしの矢倉ですねえ」と植山七段がつぶやいた。
植山七段は△5三銀右と急戦の構え。△5五歩に▲同歩は注文通りなので、今回は▲5七銀と変化してみた。
△5六歩▲同銀△5四銀に▲2五歩。ここで植山七段は△7五歩。1秒も読んでない手で、シビれた。
これを▲同歩は△7六歩▲同銀△6六角で下手悪い。やむない▲6七銀に△7六歩▲同銀右となっては、金銀4枚が左に偏り、作戦負けは免れぬ事態になった。
私は▲7五歩とフタをするが、その歩を狙って上手は△6三金と進出してくる。私は1歩損を甘受して金銀交換となったが、今度はその銀を△5六銀とかぶせられ、いよいよ苦しくなった。私は泣きの涙で▲4六金。
植山七段は「大沢流ですねえ」と苦笑したが、これは植山七段の余裕の表れである。もうこの将棋は負けたと思った。
何度目かの金銀交換ののち、私はまたも▲4六銀と耐える。△7五同飛には△8七金を防いで▲7八玉。△2五飛の転回には屈服の▲2八歩。ホントに辛い。
植山七段△3六飛。これは△3七飛成(と桂を取る)▲同銀△5五桂の強襲を狙っているのだろう。それを防いで私は、▲5六銀と歩をはらって耐えた。実は本局、いちばん印象に残った手がこれである。上手のいちばんの戦力は「歩」。こういう素朴な攻め駒は、摘み取ってしまうのがいいのだ。
△7三桂には角道を遮断して▲5五歩。とにかく忍の一字である。
植山七段は△7六金と打つ。次に△8七金打があるので、私は▲7六同金。△同歩には▲7五金もあったが、私は▲6七玉と逃げ越した。
植山七段は△2六角と覗く。△3七角成▲同銀△同飛成となれば、次に△7五桂もあって下手はもたない。
私は▲3三歩△同桂を利かして▲2七金だが、こんなところに金を使うようではダメだと思った。ただ、たまたま横で見ていたFuj氏は、下手が悲観するほどでもない、の言だった。
植山七段は飛車角を切って、△7五桂から△7四金と縛る。私は▲5二角と打ち、寄せられたらしょうがないと開き直った。
植山七段は△8七銀から△6七歩。次に△7六金までの詰めろだ。上下から挟みうちにされ、やっぱり負けか、と思った。
図以下の指し手。▲7六歩 まで、一公の勝ち。
私は、敵の打ちたいところに打て、と▲7六歩と打った。単に頭金を防いだだけの手だが、△7八金は▲同飛△同銀成▲同玉で下手玉に詰みはなく、上手玉は▲4一飛~▲2一金の詰めろがかかってしまう。
植山七段は「▲5二角が銀なら△8五桂~△8六金で詰むんだが…」とつぶやく。
ややあって、そのまま投げてしまった。
「(あまり形勢がよすぎて)温泉に入っちゃったよ」
が投了後の第一声。そして「ここ(▲7六歩)は▲6七銀と指すでしょう。だって▲7六歩と打っても▲7五歩と取れないんだもん」と続けた。
「はあ…。でも先生、(▲7六歩で)投了されたじゃないですか」
と私も反論する。もちろんどちらも、苦笑しながらの発言である。
しかし本音を言えば、終盤までホントに私の負けだと思っていた。この将棋を何で勝てたのか分からぬ。その中であえて勝着を挙げるとすれば、▲3三歩△同桂の利かしを入れたことだろうか。これがなければ上手になかなか詰めろがかからず、下手が負けていただろう。
私が敵陣に侵入した駒は、この▲3三歩と▲5二角のみ。この2手が実に効果的だった。勝ちに不思議の勝ちあり、とはよく言ったものだ。
ここで3時休み。きょうはW氏が休みのようだ。いろいろ忙しいのだろう。
そしてもうひとつ、きょうは女流王座戦一次予選の一斉対局が行われている。Fuj氏などはそれが気になって仕方ないふうだ。
私は和田あき女流3級とHanaちゃんに勝利者賞を懸けているが、和田女流3級は午前中に渡部愛女流初段に屈し、Hanaちゃんもまた、船戸陽子女流二段に負かされていた。
「よかっ(た)…あっ!!」
思わず本音が出そうになり、私は慌てて口をつぐむ。まさか土壇場になって賞品を進呈するのが惜しくなったとは言えず、誤魔化すのに苦労した(ただし…。後日棋譜を見たが、Hanaちゃんの将棋はちょっとひどかった。Hanaちゃん、本気で女流棋士を目指しているなら、いまの将棋ではダメである)。
対局再開。きょうは新規の小学生が来ていた。4月から始まった「女性教室」はほとんど生徒が集まっていないが、こちらは相変わらず盛況である。
大野七段によると、棋力は初段程度らしい。そこで私と平手で指すことになった。ただし、小学生君はライバルが三間飛車の使い手だそうで、私が仮想敵として、三間飛車に振ることが条件となった。
対局開始。と、小学生君は中飛車に振ってきた。これは意外である。対三間飛車を望むから、てっきり私は、彼が三間飛車破りを実践したいのかと思ったのだ。
小学生君は早指しで▲5六金~▲6六角。
何だこれは!?
(つづく)