上手(平手)・植山七段:1一玉、1二香、1六成香、2一桂、2二銀、2四歩、3二金、3四歩、4四銀、4七歩、5四歩、6五歩、7三歩、8一桂、8二飛、9一香、9四歩 持駒:金、歩
下手・一公:1四歩、2六銀、2七歩、3六歩、3七桂、3八銀、3九玉、5六歩、5七角、5八金、6六歩、6七銀、7五歩、7七桂、8五歩、8八飛、9六歩、9九香 持駒:角、歩2
(△4四同銀まで)
81手目▲4四金と角を取り、△同銀までの局面。ここで私は▲4七金と目障りな歩を払ったが、すぐに▲4五歩と抑える手はなかったか。これなら△3三銀と引く一手で、そこで下手も▲6五歩と落ち着く。△4七歩はいつでも取れるから、まずは6筋の歩を取るのだ。
これで上手の持ち駒は「金歩」。2六に銀は落ちているが、△8二飛も合わせ、これだけで下手玉が寄るとは思われない。そこで冷静に下手陣を見ると、息苦しかった数手前より、ずいぶん景色が変わっている。思った以上に広々として、中央の制空権を支配している感じさえするのだ。
もちろん対局中は、▲4五歩も考えた。しかし手順に△3三銀と引かれるのが気に入らなかった。私の指したかった手は▲2四角の飛び出しで、以下▲2五桂~▲1三Xを狙いとする。しかし▲4五歩△3三銀の2手が入ると、前述の攻め筋がなくなってしまう。それが私に▲4五歩をためらわせた。
「これ(▲4五歩△3三銀▲6五歩)で大沢さんが優勢じゃないですか」
大野八一雄七段にあっさり結論づけられ、拍子抜けする。七段によると、この将棋はもう攻め合いではなく、振り飛車が受け切る将棋になっているという。△3三銀と追いやって、相手の攻め駒を1枚減らすのがいいのだという。
そうか…。私は攻めることばかりを考えていた。「攻め合い→受け勝ち」のギアチェンジができなかった。
整理すると、中盤で△1四歩と端を逆襲されたところは、下手の具合が悪い。しかし終盤、▲4四金と角を取ったあと▲4五歩と局面を収めれば下手も指せる。これを一応の結論としておこう。
遅い夕食は、近くのとんかつ屋で。参加者は、大野七段、Og氏、W氏、Fuj氏、青年2人、私の7人。先客は2人いたが、ここはカウンター席がないので、4人掛けのテーブルを使われてしまい、私たちは分散して座った。
やがて4人掛けのテーブルが空き、最終的に私とW氏、Fuj氏がいっしょになる。濃い。
私は冒頭の局面をメモし、あす植山七段に質してくれるよう、Fuj氏に頼む。我ながら諦めが悪いが、ちょっと植山七段の見解も聞いてみたかった。
「大沢さんが自分で聞けばいいじゃないですか」
とみなは言うが、あすはさすがに、撮りだめしたテレビ番組を観たかった。つまり、私の将棋熱もそのくらいということである。
とんかつ定食を美味しく食べ、そろそろ会計をしようか。食後はファミレスで…の話が出たところで、Fuj氏が
「けっこういい時間だし、明日の教室もあるから、きょうはこの辺で…」
と、訳の分からないことを言いだした。いつもはここからおしゃべりの第2弾が始まるのに、彼は何を言っているのだ。
まあ、帰りたいという人を深追いはしない。青年2人も帰るということで、以上3人とは川口駅前で別れ、残り4人でガストに向かった。
ガストで談笑中も、私の脳裏には先の植山悦行七段との将棋が渦巻いていた。いままでにも植山七段には平手や香落ち戦で緩めていただいたことはあるが、きょうのような捩じり合いの将棋ではなかった。こういう息の長い将棋で勝ってこそ、価値があるのだ。実際感想戦後の感想戦では十分勝機もあっただけに、いまだ自分の中で割り切れないでいる。
「▲4五歩で大沢さんがよかったですよ。だけど△5五歩が入ってからではダメですね」
たった一手の緩着で勝敗が決するとは、将棋は恐ろしい。
ところで大野七段は、引退して1週間になる。いまの心境を聞いてみた。
「やっぱりさびしいですね」
この答えは予期していなかったが、言われてみればもっともだと思う。
おおそうだ、Minamiちゃんにお土産があったのだが、植山七段に渡すのを忘れていた。私は先日の九州旅行で青島神社に行き、「女力」という御守りを買った。これは文字どおり「女力」を上げるというもので、袋の表にはズバリ「女」とデザインされている。もちろん「男力」もあり、「女力」はペアのつもりで買った。
これを誰に上げるかだが、和田あき女流3級に上げればHanaちゃんにも上げなければならないし、Minamiちゃんに上げれば長女と次女にも上げなければならない。いっそのこと5つ買えばいいのだが、そのときはひとつ買うことしか浮かばなかった。
結局、これはMinamiちゃんに指し上げることにした。とりあえずW氏に預けておく。
W氏提供の、ひとついい話。和田女流3級が教室での実戦に疲れ、休みに入った。ところが和田女流3級は詰将棋を解いていたという。
詰将棋を解くのが休養代わり。和田女流3級は強くなると思った。
話変わって、大野七段とW氏は先日、藤倉勇樹五段の将棋教室にお邪魔し、教室のシステム等を勉強してきたという。次回は飯塚祐紀七段の教室に赴くそうで、ふたりの熱心さには頭が下がる。
さらには棋書出版の計画まで出る始末で、ふたりの話には未来があり、私は大いに感心させられた。
下手・一公:1四歩、2六銀、2七歩、3六歩、3七桂、3八銀、3九玉、5六歩、5七角、5八金、6六歩、6七銀、7五歩、7七桂、8五歩、8八飛、9六歩、9九香 持駒:角、歩2
(△4四同銀まで)
81手目▲4四金と角を取り、△同銀までの局面。ここで私は▲4七金と目障りな歩を払ったが、すぐに▲4五歩と抑える手はなかったか。これなら△3三銀と引く一手で、そこで下手も▲6五歩と落ち着く。△4七歩はいつでも取れるから、まずは6筋の歩を取るのだ。
これで上手の持ち駒は「金歩」。2六に銀は落ちているが、△8二飛も合わせ、これだけで下手玉が寄るとは思われない。そこで冷静に下手陣を見ると、息苦しかった数手前より、ずいぶん景色が変わっている。思った以上に広々として、中央の制空権を支配している感じさえするのだ。
もちろん対局中は、▲4五歩も考えた。しかし手順に△3三銀と引かれるのが気に入らなかった。私の指したかった手は▲2四角の飛び出しで、以下▲2五桂~▲1三Xを狙いとする。しかし▲4五歩△3三銀の2手が入ると、前述の攻め筋がなくなってしまう。それが私に▲4五歩をためらわせた。
「これ(▲4五歩△3三銀▲6五歩)で大沢さんが優勢じゃないですか」
大野八一雄七段にあっさり結論づけられ、拍子抜けする。七段によると、この将棋はもう攻め合いではなく、振り飛車が受け切る将棋になっているという。△3三銀と追いやって、相手の攻め駒を1枚減らすのがいいのだという。
そうか…。私は攻めることばかりを考えていた。「攻め合い→受け勝ち」のギアチェンジができなかった。
整理すると、中盤で△1四歩と端を逆襲されたところは、下手の具合が悪い。しかし終盤、▲4四金と角を取ったあと▲4五歩と局面を収めれば下手も指せる。これを一応の結論としておこう。
遅い夕食は、近くのとんかつ屋で。参加者は、大野七段、Og氏、W氏、Fuj氏、青年2人、私の7人。先客は2人いたが、ここはカウンター席がないので、4人掛けのテーブルを使われてしまい、私たちは分散して座った。
やがて4人掛けのテーブルが空き、最終的に私とW氏、Fuj氏がいっしょになる。濃い。
私は冒頭の局面をメモし、あす植山七段に質してくれるよう、Fuj氏に頼む。我ながら諦めが悪いが、ちょっと植山七段の見解も聞いてみたかった。
「大沢さんが自分で聞けばいいじゃないですか」
とみなは言うが、あすはさすがに、撮りだめしたテレビ番組を観たかった。つまり、私の将棋熱もそのくらいということである。
とんかつ定食を美味しく食べ、そろそろ会計をしようか。食後はファミレスで…の話が出たところで、Fuj氏が
「けっこういい時間だし、明日の教室もあるから、きょうはこの辺で…」
と、訳の分からないことを言いだした。いつもはここからおしゃべりの第2弾が始まるのに、彼は何を言っているのだ。
まあ、帰りたいという人を深追いはしない。青年2人も帰るということで、以上3人とは川口駅前で別れ、残り4人でガストに向かった。
ガストで談笑中も、私の脳裏には先の植山悦行七段との将棋が渦巻いていた。いままでにも植山七段には平手や香落ち戦で緩めていただいたことはあるが、きょうのような捩じり合いの将棋ではなかった。こういう息の長い将棋で勝ってこそ、価値があるのだ。実際感想戦後の感想戦では十分勝機もあっただけに、いまだ自分の中で割り切れないでいる。
「▲4五歩で大沢さんがよかったですよ。だけど△5五歩が入ってからではダメですね」
たった一手の緩着で勝敗が決するとは、将棋は恐ろしい。
ところで大野七段は、引退して1週間になる。いまの心境を聞いてみた。
「やっぱりさびしいですね」
この答えは予期していなかったが、言われてみればもっともだと思う。
おおそうだ、Minamiちゃんにお土産があったのだが、植山七段に渡すのを忘れていた。私は先日の九州旅行で青島神社に行き、「女力」という御守りを買った。これは文字どおり「女力」を上げるというもので、袋の表にはズバリ「女」とデザインされている。もちろん「男力」もあり、「女力」はペアのつもりで買った。
これを誰に上げるかだが、和田あき女流3級に上げればHanaちゃんにも上げなければならないし、Minamiちゃんに上げれば長女と次女にも上げなければならない。いっそのこと5つ買えばいいのだが、そのときはひとつ買うことしか浮かばなかった。
結局、これはMinamiちゃんに指し上げることにした。とりあえずW氏に預けておく。
W氏提供の、ひとついい話。和田女流3級が教室での実戦に疲れ、休みに入った。ところが和田女流3級は詰将棋を解いていたという。
詰将棋を解くのが休養代わり。和田女流3級は強くなると思った。
話変わって、大野七段とW氏は先日、藤倉勇樹五段の将棋教室にお邪魔し、教室のシステム等を勉強してきたという。次回は飯塚祐紀七段の教室に赴くそうで、ふたりの熱心さには頭が下がる。
さらには棋書出版の計画まで出る始末で、ふたりの話には未来があり、私は大いに感心させられた。