5局目はSai君と。前日も指した子だ。Sai君の先手で、私は四間飛車に振った。
左では、佐藤氏とT君が戦っていた。佐藤氏の振り飛車にT君が銀冠。この戦いが面白く、私は自分の将棋そっちのけで見入ってしまう。
そうして自分の将棋に戻ると、どこか違和感を覚える。現在Sai君が考慮中だが、先手のSai君が12手指しているのに、後手の私が13手指している。これでは私がどこかで2手指ししている勘定になるが、それはいかんだろう。
私はSai君に手番を聞くが、これで合っているという。だが初手からやり直すわけにもいかないので、得した私が動揺してしまった。
Sai君は急戦の作戦を採ったが、私は一手先に受け損ねる。そしたら▲4六銀から▲3八飛と回られ、受けがなくなってしまった。
その後私も何とか捌いたが、駒損と▲4二のと金が大きい。しかしここでの投了は哀しすぎてできない。
しかし▲7一角打△7三玉▲8五桂△8四玉と引っ張り出されてはもうダメだ。
部分図は△7五同香まで。ここでは冷静に▲7六歩でもSai君の勝ちだが、彼はじっくり考える。やがて▲7五同角と、力強く応じた。
△7五同玉に▲7六歩が継続手。以下△同玉▲7七香まで、私は投了した。Sai君はにっこり笑い、彼もこんな顔をすることがあるのかと思った。
Sai君がW氏に結果を聞かれる。
「勝ちました」
「…ええ勝ったの!?」
なんだかさっきも聞いたセリフだ。実は前夜の食事会で私は「Sai君とは飛車落ちでいい勝負じゃないか?」と大口を叩いたのだ。それが平手で負かされたんじゃ、プライドがズタズタである。
ほかに対局相手がいなかったので、Sai君ともう一局指すことになった。今度は振駒で、私の先手。▲2六歩△8四歩から、私のタテ歩取り(▲3六歩)となった。
ここでは△3三金が定跡だが、Sai君は△3三角! たぶんSai君はひねり飛車の定跡を知らなかったのだろうが、△3三角もなかなかの手で、微妙に▲7六歩と開けづらくなっている。
やがて私の飛車が四段目で蟄居してしまい、また不利になった。これじゃこっちが駒を落とすどころではない。彼に平手で連敗か、と思うと目の前が暗くなった。室内はクーラーが効いているが、表は通り雨がすごく、肌寒くなっている。形勢も悪けりゃ天候も悪い。体調も悪けりゃ将来も暗い。まあ目の前が暗いのはいつものことなので、ここから踏ん張る。そこでSai君の緩手があり、私の飛車は何とか自陣に戻ることができた。
Sai君は△1六歩▲同歩△同香と、強引に香交換にくる。私は▲3四香と、角金の田楽刺しに打つ。しかしSai君も△8三香。なるほどこれがSai君の狙いで、次の△8七香成(角金取り)が厳しい。が、この一瞬は私が攻める番である。ごちゃごちゃやっているうちに、誤魔化すことができた。
「負けました」
とSai君。
「いや~、こっちが悪かったね。途中じゃ勝ったと思ったでしょ?」
Sai君もコクリと頷く。
まあ、あと数年も経てば、こっちが連戦連敗だ。いまのうちに花を持たせてほしい。
ここまで○○●●●○の3勝3敗。初戦に四段の高校生に勝って気分をよくしたが、3局目にKob君に叩きのめされ、すっかり調子が狂ってしまった。
最終第7局は、Og氏(元奨励会初段)に教えてもらう。
指導対局なので私の先手。ただ、持ち時間は設定した。時計を使っていないと早指しになり、急所の局面で考えることが憚られるからだ。
私の居飛車明示に、Og氏は四間飛車に振った。私はここまできたら、5筋位取りである。
第1図以下の指し手。△9四歩▲5六銀△9五歩▲4六歩△8二玉▲5七銀△6四歩▲6六歩△6三金▲6五歩(第2図)
そこでOg氏は△9四歩。私は早く中央に手を掛けたいので、▲5六銀。Og氏も意地で△9五歩ときた。これは大きな手で、私は▲9七角のノゾキがなくなった。
▲6五歩に次の手は。
第2図以下の指し手。△6二飛▲6八金直△5四歩▲同歩△同銀▲6四歩△同金▲5五歩△6五銀▲6七金右△7四銀(第3図)
第2図で△6二飛。さすがにOg氏で、一般アマとは応手が違う。ちなみにここ、▲9六歩と突いてある形で△6五同歩▲同銀△6二飛の手順前後だと、▲6四歩△同金▲同銀△同飛▲9七角で先手指せる。
Og氏は△5四歩▲同歩△同銀として全面戦争。なんだか森安秀光九段みたいだ。
▲5五歩に△6五銀も、こうすりこんでくるところだろう。大して私は▲6七金右。これに△5六銀なら▲同銀で、先手に悪い道理がない。
Og氏は△7四銀と撤退し、次の一手は。
第3図以下の指し手。▲7七桂△6五歩▲6六歩△同歩▲同銀△6五歩▲同桂△同銀▲同銀直△同金▲同銀△同飛(第4図)
ここは▲6六銀もあった。以下△6五歩▲7五銀△同銀▲同歩△同金に▲5四歩が気持ちがいいが、△5二歩のあと、△6六歩の突きだしが厳しく、やめた。
私は▲7七桂と力を溜めたが、角道を塞いでよくなかったかもしれない。
△6五歩には▲6六歩とこじ開けていく。以下桂損になるが、6筋の圧力を解消し、ギリギリ指せると思った。
ここで次の手がどうだったか。
(つづく)
左では、佐藤氏とT君が戦っていた。佐藤氏の振り飛車にT君が銀冠。この戦いが面白く、私は自分の将棋そっちのけで見入ってしまう。
そうして自分の将棋に戻ると、どこか違和感を覚える。現在Sai君が考慮中だが、先手のSai君が12手指しているのに、後手の私が13手指している。これでは私がどこかで2手指ししている勘定になるが、それはいかんだろう。
私はSai君に手番を聞くが、これで合っているという。だが初手からやり直すわけにもいかないので、得した私が動揺してしまった。
Sai君は急戦の作戦を採ったが、私は一手先に受け損ねる。そしたら▲4六銀から▲3八飛と回られ、受けがなくなってしまった。
その後私も何とか捌いたが、駒損と▲4二のと金が大きい。しかしここでの投了は哀しすぎてできない。
しかし▲7一角打△7三玉▲8五桂△8四玉と引っ張り出されてはもうダメだ。
部分図は△7五同香まで。ここでは冷静に▲7六歩でもSai君の勝ちだが、彼はじっくり考える。やがて▲7五同角と、力強く応じた。
△7五同玉に▲7六歩が継続手。以下△同玉▲7七香まで、私は投了した。Sai君はにっこり笑い、彼もこんな顔をすることがあるのかと思った。
Sai君がW氏に結果を聞かれる。
「勝ちました」
「…ええ勝ったの!?」
なんだかさっきも聞いたセリフだ。実は前夜の食事会で私は「Sai君とは飛車落ちでいい勝負じゃないか?」と大口を叩いたのだ。それが平手で負かされたんじゃ、プライドがズタズタである。
ほかに対局相手がいなかったので、Sai君ともう一局指すことになった。今度は振駒で、私の先手。▲2六歩△8四歩から、私のタテ歩取り(▲3六歩)となった。
ここでは△3三金が定跡だが、Sai君は△3三角! たぶんSai君はひねり飛車の定跡を知らなかったのだろうが、△3三角もなかなかの手で、微妙に▲7六歩と開けづらくなっている。
やがて私の飛車が四段目で蟄居してしまい、また不利になった。これじゃこっちが駒を落とすどころではない。彼に平手で連敗か、と思うと目の前が暗くなった。室内はクーラーが効いているが、表は通り雨がすごく、肌寒くなっている。形勢も悪けりゃ天候も悪い。体調も悪けりゃ将来も暗い。まあ目の前が暗いのはいつものことなので、ここから踏ん張る。そこでSai君の緩手があり、私の飛車は何とか自陣に戻ることができた。
Sai君は△1六歩▲同歩△同香と、強引に香交換にくる。私は▲3四香と、角金の田楽刺しに打つ。しかしSai君も△8三香。なるほどこれがSai君の狙いで、次の△8七香成(角金取り)が厳しい。が、この一瞬は私が攻める番である。ごちゃごちゃやっているうちに、誤魔化すことができた。
「負けました」
とSai君。
「いや~、こっちが悪かったね。途中じゃ勝ったと思ったでしょ?」
Sai君もコクリと頷く。
まあ、あと数年も経てば、こっちが連戦連敗だ。いまのうちに花を持たせてほしい。
ここまで○○●●●○の3勝3敗。初戦に四段の高校生に勝って気分をよくしたが、3局目にKob君に叩きのめされ、すっかり調子が狂ってしまった。
最終第7局は、Og氏(元奨励会初段)に教えてもらう。
指導対局なので私の先手。ただ、持ち時間は設定した。時計を使っていないと早指しになり、急所の局面で考えることが憚られるからだ。
私の居飛車明示に、Og氏は四間飛車に振った。私はここまできたら、5筋位取りである。
第1図以下の指し手。△9四歩▲5六銀△9五歩▲4六歩△8二玉▲5七銀△6四歩▲6六歩△6三金▲6五歩(第2図)
そこでOg氏は△9四歩。私は早く中央に手を掛けたいので、▲5六銀。Og氏も意地で△9五歩ときた。これは大きな手で、私は▲9七角のノゾキがなくなった。
▲6五歩に次の手は。
第2図以下の指し手。△6二飛▲6八金直△5四歩▲同歩△同銀▲6四歩△同金▲5五歩△6五銀▲6七金右△7四銀(第3図)
第2図で△6二飛。さすがにOg氏で、一般アマとは応手が違う。ちなみにここ、▲9六歩と突いてある形で△6五同歩▲同銀△6二飛の手順前後だと、▲6四歩△同金▲同銀△同飛▲9七角で先手指せる。
Og氏は△5四歩▲同歩△同銀として全面戦争。なんだか森安秀光九段みたいだ。
▲5五歩に△6五銀も、こうすりこんでくるところだろう。大して私は▲6七金右。これに△5六銀なら▲同銀で、先手に悪い道理がない。
Og氏は△7四銀と撤退し、次の一手は。
第3図以下の指し手。▲7七桂△6五歩▲6六歩△同歩▲同銀△6五歩▲同桂△同銀▲同銀直△同金▲同銀△同飛(第4図)
ここは▲6六銀もあった。以下△6五歩▲7五銀△同銀▲同歩△同金に▲5四歩が気持ちがいいが、△5二歩のあと、△6六歩の突きだしが厳しく、やめた。
私は▲7七桂と力を溜めたが、角道を塞いでよくなかったかもしれない。
△6五歩には▲6六歩とこじ開けていく。以下桂損になるが、6筋の圧力を解消し、ギリギリ指せると思った。
ここで次の手がどうだったか。
(つづく)