一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

田中沙紀さんの今後

2020-09-10 00:16:06 | 将棋雑記
田中沙紀女流3級は先の女流王位戦予選で敗れ、2年以内に女流2級に昇級することができず、「女流棋士」の肩書を返上した。日本将棋連盟の棋士データベースにもその名前はなくなり、田中さんは私たちの記憶に留まるのみとなった。
田中さんは研修会に再入会せず(できず?)、純粋なアマチュアに戻ることになったようである。石川県在住の田中さんがどこの研修会に行くにしろ、経済面で大きな負担が生じる。それでいて女流棋士になれる保証はまったくないわけで、この選択も尊重しなければならない。
いまさら、を承知で書くが、田中さんは女流3級になってからが勝負だったと思う。女流3級から女流2級への昇級規定は緩いから、私などは「女流2級昇級はただの通過点」と捉えていた。しかし現実には苦労した女流棋士が何人かいたわけで、田中さんもそのひとりだった。
田中さんは思うように星が伸びず、所属を関西から関東に移したりもしたが、勝ち星に結びつかなかった。
しかし解決すべきは所属ではなく、戦法だった。あの、角道も開けず飛車先も突かない戦法では、おのが実力を半分も出せない。結果、昇級成らずも当然だった。
「いや、飛車角の歩はいつでも突くことができる」という主張もあろう。だが、わずかの立ち遅れが作戦負けから不利に転ずるのだ。プロはその不備を許さない。
私が蕨将棋教室で植山悦行七段に平手で教わったとき、矢倉で惨敗したことがある(あるいは女流棋士との指導対局を診ていただいたときかもしれない)。そのとき私の▲2六歩が槍玉に挙げられ、「(本局の場合は)▲2五歩と突いてないから立ち遅れてるよね」と教えられた。
▲2六歩型で飛車の働きが半分なのだから、いわんや▲2七歩型においてをや、だ。それなら先に角道を開け飛車先の歩を突いたほうが、後顧の憂いなく戦えるというものである。田中さんにこの理屈を教える棋士がいなかったのが不幸だった。彼女が大野教室や蕨将棋教室に通えば、こんな理屈は真っ先に教えてくれたはずだ。田中さんが物理的に近い場所まで来ていながら、それが叶わなかったのが、悲しく、悔しい。

さて問題は今後である。女流棋界は男性棋界と違って、わりと広くプロの門戸を開いている。たとえば女流王座戦は、東西のアマチュア予選に参加できる。マイナビ女子オープンは引退女流棋士のチャレンジマッチ参加を認めていないが、田中さんは仮免だったので、参加はさせてくれるだろう。そしてプロをなぎ倒せばいいのだ。
田中さんが今後どの道に進むにしろ、将棋の勉強はできる。中井広恵女流六段に勝ったひとをアマの世界に埋もれさせるのは惜しい。田中さんには、ぜひ女流棋士に再チャレンジしてもらいたい。
コメント (3)
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