一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

羽生九段のA級順位戦

2020-09-11 00:26:07 | 男性棋士
2日に第79期順位戦A級・羽生善治九段VS糸谷哲郎八段の一戦が行われた。1勝1敗同士の3回戦である。

羽生九段が2018年暮れに竜王戦七番勝負で敗れ無冠になってから、将棋ファンは羽生九段を、大山康晴十五世名人と同じスタンスに置いたと思う。すなわち、羽生九段が順位戦で頑張りつつ、いつタイトル戦に再登場するかということである。
名人失冠後の大山十五世名人は、順位戦A級に「お客さん」が何人かおり、60代前半まで、降級の危機は微塵も感じさせなかった。だが羽生九段の時代はそうではない。A級のほとんどがタイトル経験者で、羽生九段に勝ち星を計算できる棋士が少ないのだ。例えば羽生九段は佐藤康光九段に相性がいいが、前期羽生九段は佐藤九段に負けた。これが祟って、順位戦は4勝5敗の負け越しになったのである。羽生九段が負け越すなど、想像もしなかった。
大山十五世名人は60代後半に降級の危機を何度か迎えたが、羽生九段は意外に早く、A級で苦戦する日が来るのではないか……そう思わせるに十分な星だった。
そしてこの糸谷八段戦は、ABEMAで中継があった。
将棋は羽生九段の先手で、横歩取りになった。最近横歩取りは「青野流」が優秀で、後手が回避傾向にあると聞いたが、そうでもないのか。ただ羽生九段は、青野流を採用しなかった。

将棋は羽生九段優勢で終盤に進み、第1図は羽生九段が△8八の竜に対し、▲8九歩△同竜と取らせたところ。この▲8九歩にA△8七角成は▲8八歩。またB△8七竜は▲同金△同角成に▲8二飛が厳しい。よってC△同竜は仕方がなかった。
そこでABEMAのAIは▲7二飛△4二金左▲7八銀を推奨していた。なるほど▲7二飛で7筋の利きをひとつ増やし、▲7八銀で竜角取り。これで角銀交換になれば羽生九段の桂得が残り、入手した角は活用範囲が広い。
しかしこの程度の読みなら、私にもできる。よって羽生九段も当然そう指すと思った。
ところが……。

第1図から羽生九段は、たんに▲7八銀と引いた。
これが「ええっ!?」と叫びそうな1手で、当然△7八同角成▲同金△同竜(第2図)となった。私は訳が分からない。

有名な格言に「二枚換えなら歩ともせよ」がある。角と銀桂でも二枚側が得なのに、それが「金銀」になっては、先手大損である。
まあ「タイトル99期」はヘボと思考能力が違うから、これでも羽生九段が指せるのだろうと思った。羽生九段は▲8二飛から▲8七角。なるほどこれは王手竜だが、△同竜と取れる。実戦もそうなり、羽生九段がでかしているようには見えなかった。
実戦はそのあと△4四歩から香を取りに来られ、最後は糸谷八段の勝ちとなった。
羽生九段投了? いやこれじゃ、私も納得できない。この進行なら、やはり第1図で▲7二飛を入れるべきではなかったのか?
私は羽生九段の真意が分からないが、これは日常のことなのだろうか。つまり、この程度の疑問手は、あっちこっちで現れるレベルなのだろうか。私はABEMA AIの▲7二飛~▲7八銀を見ていたからどうとでも言えるが、実際は難しい順だったのだろうか?
そうではなく、仮に誰でも指す順だったとすると、これは羽生九段、相当に不調ではあるまいか。といいつつ羽生九段は現在、竜王戦の挑戦者決定戦を戦っているのがすごいのだが……。
いずれにしても、19日の挑戦者決定戦第3局と、順位戦4回戦以降の戦いに注目である。
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