一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

渡辺正和五段の、順位戦復帰までの状況

2020-09-25 00:07:05 | 目を考える
24日に読者から、「渡辺正和五段もフリークラス脱出の目がある」と教えていただいた。
では2019年度の成績から見ていこう。

■2019年度
4月11日 第32期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦1回戦 ○青嶋未来五段
5月17日 第91期棋聖戦一次予選1回戦 ○遠山雄亮六段
5月17日 第91期棋聖戦一次予選2回戦 ●長谷部浩平四段
5月24日 第32期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦2回戦 ●阿部隆八段
6月27日 第4回YAMADAチャレンジ杯2回戦 ●井出隼平四段
7月8日 第13回朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦 ●石川陽生七段
7月16日 第5期叡王戦五段戦2回戦 ○石田直裕五段
8月? 第28期銀河戦予選1回戦 ○藤倉勇樹五段
8月? 第28期銀河戦予選決勝 ●窪田義行七段
9月10日 第61期王位戦予選1回戦 ○中座真七段
9月21日 第5期叡王戦五段戦3回戦 ●青嶋未来五段

9月26日 第68期王座戦一次予選1回戦 ○石川陽生七段
10月16日 第61期王位戦予選2回戦 ●丸山忠久九段
10月28日 第68期王座戦一次予選2回戦 ○北島忠雄七段
11月21日 第68期王座戦一次予選3回戦 ●梶浦宏孝五段
12月23日 第33期竜王戦ランキング戦5組1回戦 ○井出隼平四段
1月7日 第46期棋王戦予選1回戦 ○土佐浩司八段
1月15日 第33期竜王戦ランキング戦5組2回戦 ●梶浦宏孝五段
2月19日 第70回NHK杯トーナメント予選1回戦 ○戸辺誠七段
2月19日 第70回NHK杯トーナメント予選2回戦 ●八代弥七段
2月24日 第46期棋王戦予選2回戦 ○窪田義行七段
2月27日 第70期王将戦一次予選1回戦 ○高橋道雄九段
3月10日 第46期棋王戦予選3回戦 ○田中悠一五段
(13勝10敗、9月26日からだと8勝4敗)

■2020年度
4月2日 第46期棋王戦予選4回戦 ●西尾明七段
4月7日 第70期王将戦一次予選2回戦 ○岡崎洋七段
5月8日 第70期王将戦一次予選3回戦 ●佐々木大地五段
6月1日 第92期棋聖戦一次予選1回戦 ●川上猛七段
6月10日 第33期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦2回戦 ○中川大輔八段
7月1日 第33期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦3回戦 ○南芳一九段
7月15日 第14回朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦 ○西山朋佳女流三冠
7月22日 第33期竜王戦ランキング戦5組昇級者決定戦4回戦 ●上村亘五段
8月18日 第14回朝日杯将棋オープン戦一次予選2回戦 ●野月浩貴八段
8月27日 第62期王位戦予選1回戦 ●高野智史五段
9月11日 第29期銀河戦予選1回戦 ○田中寅彦九段
9月11日 第29期銀河戦予選決勝 ○田村康介七段
9月23日 第69期王座戦一次予選1回戦 ○金沢孝史五段
(7勝6敗)

渡辺五段はプロ志望が遅かったため、奨励会には特別受験に合格し、初段で入会した。その後、三段リーグで次点を2回取り四段昇段したが、これはいままでにないパターンになった。
そして2011年1月、吉田四段(当時)は規定の成績を取り、晴れて順位戦C級2組に編入が決まった。
2015年11月に結婚し、姓を「渡辺」とする。奥様は有名な「かるたクイーン」で、2017年1月にはTBSのバラエティ番組で、夫婦の面白生活が取り上げられた。その際番組は渡辺五段を「順位戦から落ちそうな崖っ淵棋士」と紹介した。実際はそうでもなかったのだが、それが言霊になってしまったのか、渡辺五段は翌第76期と第77期に降級点を取り、フリークラスに降級してしまった。渡辺五段の通算成績は5割近いのだが、順位戦の成績がすべてに影響を及ぼす、という典型的な例になってしまった。
というわけで冒頭の成績は、フリークラス陥落後の全成績、となる。
よく勝っているようだが、「○●」の繰り返しが多い。フリークラスを抜けるには大きな連勝が必要だが、3連勝が最高なのは痛い。
現状では「いい所取り30局以上、勝率.650以上」が対象となる。となると、2019年度冒頭からの11局は5勝6敗なので、削除。すると2019年度は「8勝4敗」、今年度はここまで「7勝6敗」なので、合計「15勝10敗」となる。よって順位戦復帰には、今後「5連勝」「6勝1敗」……が必要となる。
今後の対局予定は以下の通り。

第69期王座戦一次予選2回戦 長谷部浩平四段
第29期銀河戦本戦トーナメント
第6期叡王戦五段戦

渡辺五段はフリークラス2期目。まだ34歳と若く向上心も喪われていないだろうから、順位戦には必ず復帰できると信じている。

   ◇

なお、川上猛七段も9月2日に銀河戦予選の対局があり、松本佳介六段に勝ち、佐々木勇気七段に負けた。
よって川上七段の直近の成績は「19勝12敗」。順位戦復帰まであと「4連勝」となる。
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蕨異変(後編)

2020-09-24 00:39:57 | 蕨将棋教室
8時になり、2組の母子は帰った。例の母子は次回も来るふうだったが、どうなるのだろう。
ようやく私の指導対局の時間である。飛車落ち君の席に座ると、右のOku戦は横歩取りになっており、植山悦行七段がウンウン考えていた。なんだか、私が入るのが申し訳ない気持ちになった。

初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀△6二銀▲2六歩△3二銀▲2五歩△3三銀▲4八銀△5四歩▲5六歩△7四歩▲7八金△7三銀▲6九玉△6四銀(第1図)

▲7六歩に△3四歩なら振り飛車のつもりだったが、△8四歩だったので、居飛車にスイッチした。
△3二銀は左美濃の構想だと思うので、早くも▲2五歩と突いてしまう。
「それじゃしょうがないナ」
と、植山七段は△3三銀。その後△7三銀から△6四銀の早繰り銀に出た。これは予想されたところである。

第1図以下の指し手。▲6六銀△8五歩▲5七銀上△3二金▲4六銀△4四銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2五飛(第2図)

私が▲6六銀と対抗すると、「大沢君だけだよ、そうやって対抗してくれるの」と言った。いや私も▲6六歩としたいのだが、むかし植山七段にそう指したとき、「ここは▲6六銀と指さにゃあ!」と窘められたことがある。よってここは▲6六銀が最善と信じる。
以下はお互い二枚銀を繰り出し一触即発の形だが、私の▲2五飛がちょっとした工夫。一公流ではないが、Oku戦での指し手を参考にした。

第2図以下の指し手。△1四歩▲3六歩△4一玉▲3七桂△7三桂▲9六歩△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8一飛(第3図)

▲9六歩としたあと、植山七段は飛車先の歩を交換する。▲8七歩に△8一飛が工夫で、この将棋でも下段飛車が有効のようだ。なるほど、そう指したいから△7三桂を跳ねるまで、飛車先の歩の交換を保留していたのだ。

第3図以下の指し手。▲5八金△6二金▲1六歩△9四歩▲2八飛△5五歩▲同歩△7五歩▲5四歩△7六歩▲4五桂△5二歩▲3五歩△6五桂▲3四歩(第4図)

第3図で▲5五歩△同歩▲5四歩と指そうと考えたが、あまり効果がなさそうで止めにした。だが▲5八金の感触はあまりよくなかった。
△9四歩に、▲2八飛と引く。前回同様、また私が後手番になってしまった。
植山七段は△5五歩▲同歩に△7五歩。なるほどこうやって手を作っていくのか。
私は▲4五桂と跳ね、△5二歩と謝らせた。これは大きなポイントに見えたが、そうでもない気もしてくる。
私は▲3五歩から▲3四歩と取り込んだが、次の3手をうっかりした。

第4図以下の指し手。△4五銀▲同銀△7七桂打▲同桂△同歩成▲同銀△同桂成▲同角△同角成▲同金△5五角(投了図)
まで、66手で植山七段の勝ち。

植山七段はいきなり△4五銀と桂を食いちぎった。返す刀で△7七桂打。これで下手が潰れているのに愕然とした。実は私も▲3四歩と取り込んだとき、桂があれば▲3三桂打がある、と考えていた矢先だった。
△7七桂打以下は必然の手順が続き、△5五角まで投了。前回に続いて、またも惨敗してしまった。

「最近は早い将棋ばかり指すようになってね」
と、植山七段。確かにそれは最近の傾向である。私は定跡を外れた急戦の形になり、指し方がよく分からなかった。▲5四歩に△5二歩と受けさせたが、意外と効果が薄かった。
「この形は昔、田丸(昇九段)さんと研究したことがあるんだよ」
「ああ、田丸先生はこんな将棋好きそうですもんね」
私は惨敗だったから感想戦のしようもないが、いま考えると、第3図の▲3四歩では、こちらが先に▲6五銀とし、△同銀に▲3四歩(参考図)と取り込むのだったか。

ただこのあと上手と同じ順に進んだとしても、最後の▲5五角が両取りにならない。ここでも△8一飛型が活きている。いずれにしても▲6五銀△同銀▲3四歩のほうが、5筋を凹ませた効果は活きた。
以上、今日は3局指していずれも惨敗だったが、得るところは多かった。何となくだが、次の社団戦は全勝できる気がした。
時刻は8時半を過ぎたところ。右の将棋は、こちらが一局終わったのに、数手しか進んでいない。どちらも長考派だが、植山七段の気合の入り方がハンパではない。
W氏がいれば食事会までおしゃべりをして時間をつぶすのだが、これでは間が持てない。「半沢直樹」はビデオ予約をしているが、早く見るに越したことはない。私はここで教室を後にした。
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蕨異変(中編)

2020-09-23 00:08:01 | 蕨将棋教室

第1図以下の指し手。▲6五銀△2四歩▲同飛△6五銀▲6六歩△5三銀(第2図)

飛車が五段目にいるうちに、私は▲6五銀と桂を食いちぎった。これで有利と思ったが、△2四歩が意表の好手。▲同飛△6五銀に▲6六歩でまだ有利と思いきや、そこで△5三銀でシビレた。

第2図以下の指し手。▲5五歩△2三歩▲2五飛△5五角▲5七銀△7五歩▲5六歩△3三桂▲2八飛△4四角▲8八角△8六歩▲同歩△7六銀(第3図)

第2図で▲2二飛成△同金▲6五銀は、△4九飛が厳しく先手不利。私は▲5五歩としたが、大駒を近づけてもメリットがなく、ここはふつうに▲8八角だった。
△5五角に▲5七銀が味のいい活用だと思ったが、△7五歩が好手だった。▲6五歩は相変わらず△9九角成が厳しい。
私は遅ればせながら▲8八角だが、△7六銀と、捕獲予定の駒にのさばられては計画が破綻した。また負けたか、と思った。

第3図以下の指し手。▲7六同金△同歩▲7三歩△8七歩▲同金△6七金▲7二歩成△4七金▲8一と△6七銀▲7一飛△5一金▲4九銀△6八銀打(投了図)
まで、Oku氏の勝ち。

以下は指してみただけ。最終▲4九銀は△6八銀打をうっかりしたのだが、仮に▲5九銀でも△6八歩で詰んでいた。
感想戦である。
「1筋の端の突き合いはいいですけど、▲9六歩はどうだったですかね……」
とOku氏。以前大野教室でアマ五段の小学生と対局したとき、同じことを言われたことがあった。高段者になると、端歩の1手にも神経を遣うのだと感心した。
そして第1図からの▲6五銀が急ぎすぎだったようで、ここは▲4七銀(参考図)を指摘された。

その後▲5八玉~▲8八角とすれば一局の将棋。対局中は私も▲4八銀の中途半端が気になっていたのだが、▲6五銀と桂を取れるチャンスはここしかないと思い、つんのめってしまった。強豪相手に、腰が据わっていなかった。
以上2局戦ってみて、Oku氏は確かに強かった。同じ相手に短時間で吹っ飛ばされたのは、相当に久しぶりである。とはいえ、次に戦えれば、もう少し抵抗できそうな気はする。
ただOku氏は基本的に植山七段としか指さないし、第一私が蕨にあまり行かないので、今後その機会は訪れないと思う。とにかく、ひどい将棋を指してしまった。

ここで私が植山悦行七段に代わり、母子への講義を申し出た。母子は私の正体が分からず不審そうだったが、構わない。

私は第1図を並べ、「どこに香車を打つのがいちばんいいですか」と問うた。
だが小学生君はまったく興味がなく、香車をおもちゃ代わりにして遊び始めた。植山七段はこの状況下で将棋を教えていたのかと思うと、同情を禁じ得ない。こっちは気が短けぇからこの母子にお引き取り願いたいところだが、そんなわけだから、耐えた。
その後もいくつか出題してみたが、やはり小学生君の心はここにあらずで、まったく興味を示さなかった。しかしいま思うと、たとえば第1図は、すでに▲4九香と▲7九香を配置し、次に先手がどう指すか答えてもらうべきだった。

ヤンママに聞くと、いままでテレビゲームの類はさせなかったが、教育上将棋がいいと思い、今回将棋をやらせることにしたという。
これも将棋ブーム、いや藤井聡太ブームの影響なのだろう。駒の動かし方を知らない、並べ方を知らない、は教室で教えるからいいとしても(まあこれも、覚えてから来てほしいが)、本人にやる気がないのは致命傷である。
しょうがないから、私はヤンママに比重を置いて話す。
「将棋は最終的に玉を仕留めますが、その段階として、相手の強い駒を取って自分の戦力を強くするのです。この▲2二歩(第6図)で桂馬を取りますよね。その桂馬で両取り(第2図)をかけて、また高い駒を取る。そしてその駒を使って、玉を仕留めるのです」
「なるほどォ……って、あたしが頷いちゃった」
とヤンママさん。

「あとはかなり高度になりますが、歩そのものをパワーアップさせる方法もあります。これは直接▲2三歩と打つのではなく、▲2四から打って、次にと金を作るのがいいのです。ほら、敵陣の三段目に駒が入るとパワーアップするって教わりましたよね。あのルールを利用するのです」

私は第9図を作る。「ここで▲6一と寄とやると、相手は△8一金と逃げますね。続いて▲6二と寄とやると、△8二金寄と逃げる。後手はと金を取っても歩だから、交換したくないのです」

私は第10図を作る。「今度同じように▲6一金寄とやると、後手は△同金と取ります。なぜなら金を持てるからです。だけどと金なら逃げますね。だからと金のことを、『マムシ』と呼んだりします。将棋の駒は飛車が強いですが、交換しても飛車ですから、その意味では、と金が最強かもしれません」
ヤンママはフンフンと頷く。ただこの話は高度すぎた。
7時45分になったので、私も話を終わりにした。小学生君は相変わらず遊んでいた。
しかしここでも植山七段である。
「でもお子さんは素晴らしいですよ。たいていの子供は、駒を放っぽりだして遊ぶものです。だけどお子さんは駒で遊んでいる」
指導対局の傍ら、ヤンママにそう告げた。植山七段の師匠である佐瀬勇次名誉九段は褒め上手だったというが、その遺伝子は立派に受け継がれているのだ。
(つづく)
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蕨異変(前編)

2020-09-22 00:28:15 | 蕨将棋教室
蕨将棋教室はコロナ禍の関係で室内滞在人員が最大9名となった。そこで同ブログへの事前申し込み制となった。13日の該当ブログを見ると、差出人不明のコメントが3件、そのあとにYos氏と思しき人のコメントが1件入っていた。私が入っても定員内に収まりそうなので、13日の分を申し込んだ。
夕方、蕨駅の駅そばでかけそばを手繰り、「くるる」に入ったのが午後5時45分だった。
教室では植山悦行七段とOku氏が談笑中だった。「宣言法……」とかいう単語が聞こえたので、先日の倉敷藤花戦本戦のことだと思った。この準決勝で中井広恵女流六段と野原未蘭女流2級の将棋が持将棋模様になったのだが、野原女流2級が投了の時期を逸し、大変な長手数になったのだ。最近は持将棋のルールも整備されてきたが、植山七段に聞くと、両者は「宣言法」のことをそこまで詳しく把握しておらず、終盤グダグダになったものらしい。
ともあれ中井女流六段は久々の挑戦者決定戦進出である。仮に挑戦者になっても私は倉敷まで応援に行かないけれど、頑張ってください。

6時には10分前だが、「はじめましょうか」と植山七段が言う。まだW氏が来ていないが、今日は休みとのことだった。そうか、それでOku氏がスタッフ席に座っていたのだ。
そこに母子がきた。ここは初めてのようで、ブログには申し込みをしたという。
子供は小学2年生で、もちろん彼が生徒なのだが、母親が「息子は将棋のルールを知らない」というので、私たちはのけぞった。私はすごくすごくイヤな予感がした。
さらにもう一組の母子が来た。どちらかの母子の名字が「Yos」だったようで、常連のYos氏ではなかったようだ。では今日の生徒はこれで終わりか。
あとの母子は、ヤンママが小学生の子供を置いて帰った。
先の母子は、ヤンママがそのまま残った。さあこれは植山七段が大変である。植山七段は母子に駒の読み方、駒の動き、初形の配置、を教え始めた。これでは植山七段は私たちに手が回らず、もうひとりの小学生はそのまま指導対局、いっぽう私とOku氏はふたりで対局することになった。「大沢さん、Okuさんは強いからね」。
それはこちらも承知しているが、どのくらい強いのか、ようやく体感できるのだ。
Oku戦は植山七段が先手で指しているのだから、当然私が先手でいいのだが、初対局なので、Oku氏に振ってもらった。そして私が後手になった。
▲7六歩△3四歩▲2六歩。ここで△4五角戦法に誘導しようと思ったが、Oku氏はすべての定跡に精通しているとフンだ。私は△4四歩と角道を止め、四間飛車に振った。
するとOku氏は▲5八金右から▲5七銀。穴熊はなさそうだが、作戦は何か。すると▲5五歩と来られビックリした。最近マイブームの5筋位取りをやられたからで、私以外にこの手を指すアマがいるとは思わなかった。

第1図で△7三桂を考えたが、▲7七桂と対抗されるので△6三金と上がった。しかし▲6五歩から1歩交換されたのは面白くなく、してみると1回は△7三桂とすべきだったかもしれない。振り飛車側から見ると、6筋の歩交換は居飛車にとってかなり大きいと思った。
私も1歩を入手すべく△5四歩から動いたが、これはのちに▲5三桂の筋を残して、よくなかった。どうも、後手の陣立てが微妙におかしい。
そして数手進んだ第2図で、私は悪手を指す。

△6五歩がそれで、これはのちに攻撃目標になってよくなかった。さらに△3五歩▲同歩△3八歩も、相手に歩を渡して疑問。言い訳をするわけではないが、このあたり、さして読みを入れず感覚的に指してしまい、取り返しのつかないことになってしまった。

断言しておこう。振り飛車が△3八歩と垂らしたら、100%振り飛車が勝てない。
話を戻して、Oku氏相手に2つも悪手を指しては勝てず、以下Oku氏にペシャンコにされた。▲8四桂(投了図)となって、攻防ともに見込みなく、投げた。

感想戦では、やはり△6五歩と△3五歩に悪手の烙印を捺された。しかしこれはこちらも承知していたので、まあいい。もっともOku氏は手厚い指し回しで、仮に私が最善手を続けたとしても、結局は負けたと思う。植山七段がOku氏に平手で苦戦しているという話も、あながち大袈裟ではないと思った。
時刻は6時24分である。Oku氏は指導対局に入りたいだろうが、植山七段はまだ小学生君に手一杯である。しかし肝心の彼は、駒を立てて遊んでいる。ここは児童館か。
飛車落ちの小学生には、植山七段が投了していた。植山七段も小学生相手にはうまいこと負けるのである。続けて第2局が始まった。
私はOku氏にお願いし、もう一局指すことにした。もう私の先手で、▲7六歩△8四歩。私は▲6八銀とし、以下相矢倉となった。といっても昨今は後手が急戦で来るのが主流で、Oku氏も米長流急戦できた。Oku氏は意外に、昭和の指し手が多い。
私はふつうに駒組を進めたが、▲7九角が若干誘いの隙で、Oku氏は△6五歩▲同歩△同桂ときた。ここで▲8八銀は弱気で、△5五歩以下潰される。よって私は▲6六銀と上がった。
Oku氏は飛車先の歩を交換し、第1図。ここで先手には指したい手があるが……。

(つづく)
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異例ずくめの社団戦(4)

2020-09-21 00:46:22 | 社団戦

第3図からの指し手。▲6二金△7一歩▲6三角△7二歩▲同金△7一飛(第4図)

現在2勝2敗で最後の大一番。周りは人が集まり、固唾をのんで見守っている。時間もだいぶ押し、すでに20秒将棋になっていた。
第3図に至る前、どこかで▲7四歩の桂取りを入れれば先手の勝ちだったときがあるのだが、それは言うまい。
第3図では▲6三角が私の第一感だったが、Abe氏は▲6二金と打った。川崎組三将氏は△7一歩。そこでAbe氏が▲6三角と打ったから驚いた。それは△7二歩で竜のタダ取りである。Abe氏、何をやってるの!? 私は眩暈がした。
Abe氏は△7二歩に▲同金とし、これが一応▲8一金の詰めろ。これには△1一飛くらいでもいいが、三将氏は△7一飛とジカに打った。しかしこれは▲同金で先手が得である。
ところが……。

第4図以下の指し手。▲8一金△同飛▲同角成△同玉▲1一飛△7一歩▲7二歩(第5図)

(9月25日註:この前の局面の変化で、「△6五飛」を指摘した読者がいました。よく考えたら第4図の△7一飛でも、まだ△6五飛が成立します。これなら後手の明快な勝ちでした。検討不足をお詫びします)
Abe氏が8一の駒をつまんだから驚いた。そっちの駒を取るの?
以下、角金と飛香の交換になったが、この飛車はもともとタダでくれてやったものだから、実質角金と香の交換となる。終盤は駒の損得よりスピードとはいえ、こんなに駒損をしては勝てない。
Abe氏は▲1一飛と打ったが、△7一歩がピッタリだ。そこで▲7二歩は詰めろでも何でもない。しかも先手は、いちばん渡してはいけない駒を渡していた。

第5図以下の指し手。△3六角▲3五玉△4五飛(投了図)
まで、川崎組三将の勝ち。

△3六角が当然の王手。これで、入玉寸前だった先手玉が捕まってしまった。以下▲3五玉△4五飛にAbe氏が投了した。時に午後5時3分。大熱戦にしては急転直下のフィナーレで、急に場の空気が弛緩した。

チームは初の負けとなり、私は落胆を抑えきれない。Abe氏もよく戦ったからアレだが、第3図からの△7一歩に▲6三角はないだろう。秒読みだった、というエクスキューズはあるにせよ、慌てたら▲7一同金と取るか、▲6一竜と逃げるものだろう。
そのあと、△7一飛に対しての▲8一金も同様である。指す手が分からなかったら、とりあえず飛車を取りそうなものではないか。
恐らくAbe氏は、▲8一から王手する順しか見えなくなってしまったのだろう。だから竜や角金を捨ててまで、強引に王手をした。
……しかしこうなってみると、どこかに私が入っていれば3勝できたんじゃないか、の思いが拭えない。今回思ったのだが、ヒトの将棋を見るのは楽しいが、チームの勝敗を考えると、精神衛生上よろしくない。まだ自分が指していたほうがいい。もし次回も参加できたら、3局は指したいと思った。

何とこの将棋が全組最後で、辺りはもうガランとしていた。
現在コロナ禍ではあるが、軽く打ち上げとなる。参加者は木村会長以下9名。さらにA氏がこちらに向かっているとのことだ。
場所は浅草駅前の和民にしたが、何と休みだった。そういえば和民は、コロナ禍の影響で何店か閉店していなかったか?
ともあれほかの居酒屋をあたる。木村会長は蕎麦屋に入ろうとしたが、9人の団体なので断られた。それに蕎麦屋で長居はできない。「みろく庵」ではないのだ。
磯丸水産があり、ここは入店OKだった。しばらくしてA氏が合流し、ほかの店を探していた三上氏、Kan氏も合流し、総勢10人になった。
では、席の配置を記しておこう。

藤原父 息子 Abe 山野 Kan
  □   □   □   □
木村会長 山本 A 一公 三上

私は最初の1杯目は、生ビール。喉が渇いていたので、一口目は美味かった。
改めて今日の成績は、3-2、3-2、3-2、2-3の3勝1敗。際どい星で勝って、この成績は御の字だろう。Abe監督は、参加した人がみな勝利したので、満足しているようだった。
私は夏子さんの話をしたいのだが、ここはその雰囲気ではない。A氏は私のブログの誤字を指摘してくれた。「私は大沢さんのブログを読み込んでいるんですよ」。それからしばらく文章談義になったが、あまりにもマニアックなので、今年の観戦記大賞に輪を広げる。これで三上氏とKan氏が話題に入れた。
それが終わるとオリンピック談義で、これで山野氏が合流できた。
木村会長は静かに飲んでいるが、落語云々の話が聞こえる。今年の長照寺大いちょう寄席は11月3日の予定だが、このコロナ禍ではどうなるか分からない。
つまみは海産物が多く、どれも美味い。しかし私は自身の立場が不安定なこと、体調が万全でないことも相まって(コロナとは無関係)、心から楽しめる状況ではない。ただこうやって席をともにして語り合っていると、何か癒される気はするのだ。
けっこう飲み食いして、8時前に散会となった。バスで帰るのは私ひとりで、浅草駅前でみなと別れた。
自宅方面へのバスが停まっていたので乗車しようとしたが、ANA Suicaがセカンドバッグから取り出せない。グズグズしていたら運転手から「ガミガミ」と怒鳴られた。
「……何ですか?」
「後ろに人がいるからどいて!!」
振り返ると、後ろに客がいた。ああ、それは私が悪かったが、言い方ってもんがあるだろう。しかもあの運転手の目つき。ヤクザのようだった。
これはこのバスに縁がなかったということだ。昨年の鹿児島・加世田バスターミナルの時と同じく、もうこの便は利用しない。私は自宅まで歩いていくことにした。
だが道に迷ってしまい、自宅まで1時間近くかかってしまった。まあ運動不足が解消されたと思えばよい。
次回の社団戦まで、メンタル面だけでも回復させたいと思っている。
(おわり)
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