神様がくれた休日 (ホッとしたい時間)


神様がくれた素晴らしい人生(yottin blog)

「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた (122) 長尾家 35

2024年06月25日 15時39分38秒 | 甲越軍記
 ここ信濃、甲斐の国境白峰の麓に二郎吉という若者がいる
五歳の時に父母と離れ、叔父に養われていたが幼い時より腕力強く、大胆不敵な童子にして、尋常の子供の遊びには親しまず、常に山野を駆け巡って猪、猿を相手に修練すれば、叔父はこんな風に勝手我儘な二郎吉を説教すれども、聞く耳持たず、あきらめて放っておいたが、次第に二郎吉は家に寄り付かぬようになった。

この辺りは山深く、峰々が幾重にも重なり、谷が幾筋も流れ、人が入るなど稀な場所である。

悪鳥、猛獣の棲み処となってはびこる、里を襲って幼子を連れ去って喰らうことも度々で、この度は叔父の愛子までも連れ去られ、夫婦は嘆き悲しみ「せめて亡骸だけでも」と言うのを二郎吉が聞き、悪鳥を殺して叔父夫婦の嘆きを慰めようと、悪鳥が巣くう奥山の断崖絶壁を目指した。
夜は岩を枕に、昼は谷を下り、峰を上って進むこと十数日、あてなき冒険であるが人跡途絶えた大山に至ると、森は深く猿も容易に動けぬところである
渓は深く、峯高く、爆風の大滝は斜めに飛び散る様であった
その時、頭上にさ~っと一陣の風が起り、二郎吉の体も傾くほどであった
怪鳥のけたたましい鳴き声が響き渡り、上を見るとまさしく二郎吉が求める人食い鳥である。
鳥は二郎吉を歯牙にもかけず目の前の大木に止まり、いずこかで捉えて来た幼子を引き裂いて食べようとするのを、二郎吉はさっと槍をしごいて思い切り鳥に差し込めば、鳥は驚いて幼子を離すと、子は谷底に落ちていった。
怪鳥は二郎吉に向かって爪を立て、掴もうと襲い掛かって来たが、怪力の二郎吉は逆に鳥の足をむんずとつかんで離さない。
片手で足をつかみ、片手で槍を繰り出し首を貫いた
流石の怪鳥も首を上げて飛び跳ねることもできず、羽を羽ばたかせて吠え猛る声は山野に響き渡った
二郎吉はここぞと、腰刀を抜いて飛び掛かり、所かまわず突きまわれば、ついにも猛鳥も息絶えた。
一息つくと谷底から幼子の泣き声が聞こえて来た、二郎吉は驚き、生きているならばこれを救おうと、深い谷を蔦につかまり、岩に足をかけて下って行った
谷底に下りると三歳ばかりの子であった、このまま捨てておくのも哀れと、子を懐に入れて、また崖を上っていった
途中で息絶え大鳥をひき担ぎ峰々を下れば、ようやく山道に出た
この時、ちょうど景虎らの一行がこの道を通りかかって、二郎吉と出会った。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿