見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

紀伊国屋書店「書評空間」をほめる

2005-12-05 00:03:45 | 見たもの(Webサイト・TV)
○紀伊国屋書店BOOKLOG「書評空間」

http://booklog.kinokuniya.co.jp/

 丸谷さんの書評を読んだついでに、紀伊国屋書店の「書評空間」をほめておきたい。同サイトの「ブックログ宣言」は、紀伊国屋が「プロの読み手による書評ブログ」を開設する理由を(私なりに要約すると)以下のように語る。

 いま、多くの書評は、膨大な新刊書をやみくもに追いかけ、それを効果的にプロモーションすることが主眼となっている。しかし、我々が本当に必要としている情報は、書評子がどんな趣味の持ち主で、どんな生活をおくっており、その書籍を、どういう興味で読んだか、ということなのではないか。 書評子に対する信頼と親近感があってこそ、その書評は、我々が本を選ぶ参考になる。そこで、同サイトは、「たくさんの書籍を日常的に購入している専門の方(=プロの読み手)にご登場いただき、(ブログを通じて)書籍をどう読んだかをご紹介いただこう」と考えたのだという。

 この考えかたは丸谷さんと共通する。丸谷さんは前掲書の冒頭インタビューで、本を選ぶときは、プロの書評家として選ぶのか、それともまず自分が読みたいものから読むのか、と聞かれて、「僕はなるべく内心の欲求から本を読むようにしています」「近頃はこの傾向が流行っているか(略)そういうことは考えないで」「自分の内部にいる読者を大事にする」と答えている。その結果、彼の書評は、「ひとりの本好きが、本好きの友だちに出す手紙」(前掲書のオビ)になっている。結局、本読みにとって、いちばん価値ある書評とは、こういう、いくぶん私信めいたものなのだ。

 紀伊国屋の「書評空間」が、いつから始まったのか、私は知らない。各執筆者のアーカイブを覗いてみると、例外的に2004年の記事を持つものもあるが、おおむね2005年以降に立ち上がったブログである。特にこの夏以降、続々と新しい書き手が増えているように思う。

 個人的によく見にいくのは、大阪市立大学大学の早瀬晋三さんのサイト。東洋史の先生なので、取り上げる本が、いちいち私の琴線に触れる。実は全然存じ上げない方だったが、この書評ブログで、すっかりファンになってしまった。哲学者の中山元さん国文学の紅野謙介さんのサイトも、ときどきチェックを入れている。

 ところで、この記事を書くにあたり、ほかの書店はどうなのかな?と思って、大手書店のサイトをいくつか覗いてみたが、紀伊国屋の「書評空間」に比肩できるページを作っているところは見つからなかった。う~ん、ネットでできることはオンラインショッピングだけじゃないよ。ほかの書店もがんばれ。

*三省堂 http://www.books-sanseido.co.jp/
*丸善 http://pub.maruzen.co.jp/
*有隣堂 http://www.yurindo.co.jp/
*ジュンク堂 http://www.junkudo.co.jp/
コメント
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