「あきらめた時が運命に負ける時よ。だったら、あきらめなきゃいいのよ！」北見美優の言葉。
本に挿絵は必要不可欠とは思わないけれど、ライトノベルは絵の魅力が作品評価に大きく影響するものだから、きちんとしたイラストがついていると嬉しいし、手抜きのイラストだとがっかり。イラストが全部キャラクター設定的な背景もない殴り描きだったり、どれも同じ角度のバストショットだけだったり、メカが主役のはずなのにメカニック・イラストがまったくなかったり……そんな作品に出会うと、それだけでげんなりします。無いなら無いで、最初からイラストなんか付けなければいいんです。
この作品が意外だったのは、電気機関車とかディーゼル車とか橋梁とか駅舎とか、必要に応じてしっかり描き込んであること。慌てて確認したら『ゆりてつ』とか『鉄娘な３姉妹』 の人でした。本領発揮してます。この人選に、本気の仕事を感じるよね。
栗原駿はたいしてモテたこともなく、運動や勉強が特にできるということもない平凡な高校生だが、唯一こだわりを持っているのは、旅行先で食べる美味しいもの。きしめんでも讃岐うどんでも、本場で食べるのがいちばん美味しいのだ。
そんな彼が夏休みに出かけた信州旅行で遭遇したのは、北見美優・宮田くれあの美少女２人組。彼女らはどうも鉄道に詳しい「鉄子」のようで、彼のことも「鉄」の初心者だと思い込んでしまう。そして、行く先々で出会ううちに、なし崩しで行動を共にすることになるのだが……。
変にマニアックな面白さだけの話だったらイヤだなあと思いましたが、鉄道には特に興味もないし詳しくもないけれど、それでも愉しく読めました。
考えてみれば相対性理論や核分裂について知らなくてもＳＦは読めるし、戦国時代の日本地図や武将の家系について知らなくても時代小説は読めますよね。
鉄道そのものについてまったく知らない主人公があたふたとしているうちに巻き込まれる様子は、なにも知らない読者が話に引き込まれていくのと同じだなあと納得。
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