付け焼き刃の覚え書き

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「おやすみなさい、ホームズさん(上)」 キャロル・ネルソン・ダグラス

2011-12-07 | ミステリー・推理小説
「真実はダイヤモンドに似ているんですよ、ティファニーさん。適度な透明性と色、そして重さがなければ価値はない」
 諮問立探偵シャーロック・ホームズの言葉。

 考えてみれば、子供の頃に創元版でホームズものは読破したけれど、その後20年くらい読み直していないかもしれません。
 ジェレミー・ブレッドのホームズはよく観てたし、ホームズが火星人や吸血鬼と戦ったり、日本を訪問する話は読んだし、なぜか研究本は山積みだけれど、原典の方はとんとご無沙汰だなあと反省。
 そのホームズが唯一、その知性と行動力を認めて敬意をいだいた女性がアイリーン・アドラー。「ボヘミアの醜聞」事件に登場した女優ですが、彼女がホームズと事件を通じて出会い、対決する以前の物語です。

 盗みの罪を着せられて職を失ったペネロピーは、下宿代も払えなくなってロンドンの街をあてもなく放浪するはめに。
 そんなペネロピーに声をかけ、お茶に誘ってきたのはアイリーン・アドラーと名乗る美女。その職業は「女優」という、教区牧師の娘であるペネロピーには眉をひそめてしまう生業だったが、彼女には「探偵」というもう1つの顔があった。
 アメリカ人の宝石商ティファニーから、マリー・アントワネットゆかりのダイヤモンド探しの依頼を受けたアイリーンは、ペネロピーを助手に捜査に乗り出すのだが……。

 『ライヘンバッハの奇跡』のモリアーティー教授もそうだけれど、こういう有名な作品をベースに展開されるリスペクト話は、原典の描写を裏切らない範囲で、どれだけ意外な設定、物語を付け足せるかがカギ。
 そういう意味で、アイリーン・アドラーの奔放で無邪気にして、実利的で計算高く、道徳心はあるけれど必要なときには忘れたふりができるという描写は成功。相棒を道徳的でお堅い教区牧師の娘にしたことでそれが引き立ち、また一方で真面目な娘がアイリーンに染まっていくプロセスが面白いのです。
 さらに、アイリーンとホームズのニアミスするあたりのバランス感覚もツボ。
 下巻が楽しみです。

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コメント (1)
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