付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「いわゆる天使の文化祭」 似鳥鶏

2011-12-25 | ミステリー・推理小説
「まったく、女子というのはどうしてあんなに男子の女装を喜ぶのか不思議でしょうがない。男子は女子の男装をあんなに喜んだりしないのに」
 葉山くんの嘆き。

 「にわか高校生探偵団」シリーズの第4弾。
 今回は美術部の葉山くんと吹奏楽部の蜷川奏ちゃん2人の視点で、代わる代わる物語が語られます。いわゆる2人探偵ストーリー。というか、今回もいつの誰のことかも分からない挿話が入っても最後にきれいにまとまるという構成。このパターンに弱いのです。

 文化祭の準備で大騒ぎの市立高校に出現した、謎の天使の絵を描いた貼り紙。
 同じ天使がさまざまなバリエーションで、各教室や各クラブの部室の前に張り出されている。誰が、いつ、なんのために、こんなことをしているのか?
 なんとなく気になるからと調査を始めた葉山くんだったが、いつしか文化祭が一部中止になるか否かの問題にまでなっていた……。

 話のキーとなる<天使>が、なんというか、羽の生えたエリザベスなんだよなあ、銀魂の……。
 冒頭の慌ただしい文化祭の準備光景にわくわくしてしまいます。
 どんなことでも準備段階でのワクワク感が描けている作品は傑作です。学校ぐるみで年々エスカレートしていく市立の文化祭がステキすぎ。リアル系文化祭の最右翼っす。学校を舞台にした作品なら文化祭イベントが起きるのはお約束だけれど、読んでいて騒々しい愉しさまで伝わってくるものは、そんなに多くないのです。自分の基準は『ビューティフルドリーマー』と『ハレーション・ゴースト』なんですけどね。
 そういう視点で、このどこにでもありそうながら、近くにあったら何が何でも観に行きたいと思ってしまう市立高校の文化祭は素晴らしいと思います。
 ミステリとしても上質。ちょい役ながら翠ちゃんの安楽椅子探偵ぶりもさすがですが、伊神さんは格が違いました。
 この本だけ読むと伊神さんと翠ちゃんの正体はまったく不明ですが、それでも学園ミステリとして十分に愉しめると思います。

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コメント (1)
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