付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ベン・トー10~バレンタインデースペシャル弁当350円」 アサウラ

2013-04-28 | 食・料理
「日本人は“限定”“今だけ”そういったものに弱い。それは我々が農耕民族の末裔であり、狩猟ではなく草木を育み、季節の恵みを享受して営みを続けてきたが故である」
 だから、ロリな少女を愛するのは日本人としてあたりまえなのだと、在りし日の霧島君。

 節分も間近になり、《東北のカナリア》の唄を聴いた《退魔師》が姿を現した。
 狩人はその分析力とパワーで幽霊を追い詰め、その行く手に立ち塞がった白梅が叩きのめされた……。

 時期は、節分からバレンタインデーまで。あいかわらず熱い戦いが繰り広げられ、ライバルとの共闘、権謀術数、友情と慕情、セガの盛衰が語られます。でも、ロリはやめとけ。茉莉花は既に確信犯の域で、「結界危うし」だけれど姉よりは妹の方が良いと思います。

「ケーキはね、罪の味がするから甘くておいしいんだよ……」
 電波さんこと、紫華蔓の言葉。

 このシリーズとか小林信彦のオヨヨ大統領シリーズは、本筋とはまったく関係ない、横道にそれた部分のエピソードとか雑学語りが作品の面白さの半分を占めています。
 小説なのに、銃とかバイクとか料理とかアイドルとか、やたら専門書か技術書かというくらい詳しく書かれた小説は少なくありませんけれど、それらは大半が本筋ストーリーの補足。マニアックな銃の描写が細かいことで知られる大藪春彦はバイオレンス小説。宇宙船のミッション描写がやけに詳しすぎる笹本祐一は宇宙SFやスペースオペラと、決して本筋と補足はかい離していません。
 でも、「オヨヨ大統領」ではストーリーは情報や資金の争奪戦であり、スパイ小説とかハードボイルド小説の基本ラインなのに、主人公は放送作家だったり料理人だったりDJとかで、創生期のテレビ業界の裏側とか、日活や東映のアクション映画のよもやまとか、料理のうんちくとかやたら詳しいし、それ抜きだと面白さ半減なのです。
 この「ベン・トー」も、基本フォーマットは仲間やライバルたちと切磋琢磨していく格闘技小説とか番長マンガのソレなのに、やっていることが半額弁当の争奪戦。それをあくまで真面目に熱く語っていて、弁当や食事の描写がやけに詳しく美味そうで、そのギャップが面白さの半分。そして残り半分が、セガの盛衰とか石岡くんの悲惨な過去エピソードであり、佐藤父母のダメさ加減であり、筋肉質な男性同士の同性愛小説であり、男子寮のモテない男たちの歪んだ言動であり、その他もろもろの余計ごとなのです。これを抜いてしまったら、単なる格闘技小説のパロディでしかありません。
 さて、その「余計ごと」で気になっているのは、霧島くんと心霊現象研究部のくだり。あくまで主人公たちは知らない裏の話になっていますが、これが表に出ませんように。それだけは信じております。
 ほら、ポール・ウィルソンの『城塞』という小説があってね、東欧の古城で吸血鬼と戦うナチスドイツの軍隊の話。前半はミリタリーアクションとホラーの融合っぽくて面白かったのに、その話の合間合間に遥か遠方から駆けつけてくる男の描写があって、誰だろう?と思っていたらそいつが本当の主人公で、後半はそいつが主役の単なるヒロイック・ファンタジーになってがっかりしたことがあるのです。あれはいかんわ(これは個人の感想であり、作品の評価・完成度をあらわすものではありません)。

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コメント (2)
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