付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ノーゲーム・ノーライフ」 榎宮祐

2014-05-30 | 異世界転移・召喚
「イカサマはどんだけ凄いかじゃなく、どう使うかだ」
 『  』に敗北はあり得ない。

 あらゆるゲームで無敗の連勝記録を重ねる凄腕のプレイヤーがいた。その正体は誰も知らず、男か女か、あるいは1人なのかグループなのかも分からない。ただ、そのプレイヤー名は『  』(くうはく)。
 その正体は引きこもりの兄妹の空と白。
 その2人がある日、君たち兄妹は生まれてくる世界を間違えたと感じたことはないかと書かれたメールを受け取る。自分たちの正体を知る者は誰か? 
 謎の挑戦を受けて立ったことから、2人はこの世の全てが単純なゲームで決まる盤上の世界(ディスボード)へと召喚されてしまう……。

 現実世界では生きていけず、ただ兄妹だけでゲームの世界に生きていた少年少女がさまざまな種族がゲームで競い合う異世界に放り出され、こここそ自分たちの世界だと水を得た魚のように大暴れする、生まれてきた世界を間違えた2人の物語。
 名前だけは聞いていたけれど、よくあるゲーム世界転移ものであろうと放置。たまたま26年4月放送開始のアニメを視て、期待以上に面白かったので子供に訊いたら原作があるというので読み始めました。うん、アニメ版は80点の作品を100点にしている。

かわいいは、この世で唯一不変の正義だ」

 凄腕のゲームプレイヤーが世界の危機に立ち向かうというとバンクスの『ゲーム・プレイヤー』という小説があったのだけれど、肝心のゲーム部分に意外性も魅力も無くてがっかりした覚えがあって警戒していたのだけれど、これはちゃんと面白いゲームをしてます。種族は全部で16種類。そのうち人間だけが魔法も使えないし魔法が使われていることを感知することもできない。そんな状況下で、じゃんけんからチェスまでさまざまなゲームが登場し、人間以外の種族は皆それぞれに魔法が使えるのに、確率計算からイカサマまでありとあらゆるテクニックが駆使されて不敗神話が更新されていきます。コンゲーム小説としても読めます。

【ノーゲーム・ノーライフ】【ゲーマー兄妹がファンタジー世界を征服するそうです】【NO GAME NO LIFE】【榎宮祐】【MF文庫J】【「すべての国に対して宣戦布告する」】【プロパガンダ戦略】【ポーカー】【チェス】【だが断る】【暗殺】【内政】【具】【18禁】【じゃんけん】
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「地図から消えた島々」 長谷川亮一

2014-05-30 | エッセー・人文・科学
 昔、『巨神ゴーグ』というサンライズのアニメがあって、それは多国籍企業の陰謀によって地図から存在を消去されたサモア諸島東南の孤島を舞台にした冒険SFだったのだけれど、そのとき疑問に思ったのは、島1つどれだけ簡単に消せるのだろうかということ。
 それがこの本を読むと、なんか考えるだけバカらしくなってくるのです。
 大航海時代、世界の大海原に乗り出した欧州の航海者たちは、7つの海を渡って金銀財宝やら交易で大儲けできる商材を求め、新たな植民地を求め、やがて鯨油目当てで大西洋のクジラをあらかた殺し尽くして日本近海にまで到来し……となるわけですが、正確な位置を観測することが困難な時代です。天測から六分儀へと道具は進歩しても誤差は出ます。船乗りたちの見間違いはもちろん、地図作成や記録の段階で東西を逆に書き写すことも茶飯事。明神礁に限らず、できた島があっと言う間に沈むことだってあります。
 存在しない島が「ある」と記録されたり、1つの島が別々の座標に記録され、それぞれに名前が付けられ、ごっちゃになったり……、ちゃんと足を地に着けて確認できる陸地だって境界線で揉めるのですから、海の上ならなおさらです。それもそんなに大昔の話ではないというところがポイント。
 存在していたはずのロス・ジャルディン諸島が、やっぱり存在してなかったと地図から正式に削除されたのは1972年。1907年に発見され上陸して測量までして、第二次大戦での敗戦後にGHQから「日本領の範囲」について出された訓令にも名前が挙げられたのに、やっぱり存在していなくて、それが公式に認められたのは1998年の参院総務委員会で……という中ノ鳥島って、どうなのさ?
 そりゃあ、竹島だとか尖閣諸島だとか、日本ですら領土をめぐる他国とのいざこざのタネがつきないのも当然です

 この本は、そうした地図上に一度は存在したけれど、やがて実在しないことが判明した島々の誕生から消滅までの経緯を、江戸時代から明治維新後にかけての日本領の拡大と、それに便乗して一攫千金を夢見る冒険家というか冒険商人というか、やってることをみれば単なるヤマ師でしかなかった人々の姿を通じて描いていくもの。
 記録の積み上げで書かれているので読み物としての面白みには欠けるし、だいたいにおいて孤島の開拓によって成功したケースというのはアホウドリやアザラシを撲殺して羽毛や毛皮を欧米に売り飛ばしたというものなのでトホホ感も満載。
「アホウドリが減った。このままではタイヘンだ。理由を調べろ」
「殺しすぎです。このままでは絶滅します」
 わざわざ理由を学者に調べさせて、殺しすぎと理由が分かって、なお止まらない欲の皮。今も昔も。まったく。

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