付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「雲の王」 川端裕人

2014-05-01 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「世の中には、志を持って生きるに足るものに出会えた者と、一生出会えない者がいる」
 南雲由宇の言葉。

 気象台に勤務する南雲美晴は、幼い頃に事故で両親を失い、夫とも離婚して、今は小学6年生になる息子の楓大と二人暮らし。
 そんな美晴のもとに、行方不明だった兄からの封書が届く。中身はただ住所だけ。不審に思いながらも無視できない何かを感じた美晴は息子とともに山間の村に赴くが、そこは彼女が存在も知らなかった両親の故郷だった。
 そんな不可解な里帰りから戻って間もなく、美晴はなぜかプロジェクトGへの参加を命じられる……。

 竜眼などと呼ばれる、天候を視たり感じたりできる能力を持つ一族の物語で、そこに気象庁の実験プロジェクトGとか、国際的な科学者のコミュニティが絡んだ壮大なクライマックスへと突入します。
 基本の設定がファンタジーではあるのだけれど、それ以外は極めてロジカル。半村良のような伝奇小説的な展開になるかと思いきや、小松左京のような巨大プロジェクトものに。雰囲気的には映画『緯度0大作戦』の「緯度0」みたいなものを目指しているんだろうな、アーチーは。
 ただ、印象的なのは登場する男性陣のダメっぷりと、最後までそれを容認できない主人公の立ち位置でしょうか。男はどいつもこいつも理系思考というか自己中心的に好き勝手なことばかりやって飛び回っているダメ人間ばかり。そして、その無責任さに眉をひそめ、嫌悪感やら忌避感を覚えつつ、家族を守ろうとする主人公の母性みたいなものが対照的になっていて、それは対立軸では無いけれど交わりもしないんですよね。
 能力は高いけどダメダメな男連中と、否定しないし協力もするけれど一歩下がって冷めた目で見ている女性視点が、ちょっと居心地が悪い読後感でした。

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コメント
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