
不定期ではあるけれど、なにか「わたし、気になります!」モードに突入すると、あれこれ一斉に関連書籍や映画をかき集めて頭に叩き込むのが趣味です。あまりに一気呵成に詰め込むので、だいたい熱が冷めると同時に9割方忘れますが。
ミステリ小説の有名どころを網羅しようとしてみたり、江戸風俗に凝ってみたり、架空の博物学にのめり込んでみたり、クトゥルフ神話や日本神話を追いかけてみようとしたり。
インターネットが普及し、ネット通販が常識となって何が変わったかというと、こういうときに簡単に文献や映像が集まってしまうのですね(カードの限度額の範囲で)。適当な単語を放り込んで検索かけて、そこで発見した文献を購入し、そこに記載されている参考文献や引用文献にまで遡り、そこでさらに気になること分からないことを発見して……と、そういうことを繰り返していくといつまでも愉しめるのです。
そんな感じで、20世紀初頭の上海にのめり込んだ時期がありました。
ところが、もともと体系づけて学んでいるわけではないので、基本的なことがわからないことばかり。通貨や物価はどうなっているのかなど、さんざん悩みました。
なにせ、日本の「円」は簡略化された文字で、もともとは「圓」と表記されていましたが、中国の通貨単位だって「元」と簡略化される前は「圓」と表記されていました。さらにはこのあたりでは、米ドルだって「圓」とすることもあったというのです。
そんなこと、学校では習ってませんよ!
また集めた本のデータや記載内容にしても、わざわざ中国の通貨か日本の通貨かなどとわざわざ明記しないまま、「××を××圓で購入」とか書いているのですから、相場の感覚がぐちゃぐちゃです。それをはっきりさせるために、ますます手当たり次第に購入していくことになったのですが、これもそのときの1冊。
19世紀末から一応1945年までの上海の風俗や文化を、その時代ごとの背景を踏まえて紹介しています。
「上海にいると年をとらないんだよ。いつも少年のままでいるような、そんな気がしてここでは少年の日々しかないんだ」
身経百戦の戦闘英雄、老紅軍兵士・彭自強の言葉。
上海の誕生から租界の拡張プロセス、各地区の紹介やその推移を地図や写真を挟み込みつつおこなっていて、入門用にはちょうどいい1冊だったかも。
モノクロながらとにかく図版が多く、けっこう細かいのです。たとえば上海事変の話なら、集結したアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、日本の各軍の様子を写した写真が何枚も何枚も続きますし、娯楽の中心「大世界」なら完成当初から文化大革命当時までの外観の変化を追い、内部の賭博場からボールルームまで見せています。その建設当時の事情から解放後の様子までを絵物語で紹介した記事も、普通なら「こんな記事がありました」くらいで済まされそうなものを、まるまるそのまま掲載されているのがありがたいです。わかりやすい。
黄金栄と杜月笙の肖像写真があるのもポイントかな。
【上海セピアモダン】【メガロポリスの原画】【森田靖郎】【朝日新聞社】【開示する魔都の素顔】【オールド上海は未来都市】【モダンガール】【魯迅】【江青】【野鶏】