「事実はひとつしかないけれど、真実はいくらでもある。どう捉えるかは人次第だからね」だから、イチローは自分以外の価値判断を気にしない。
明日葉ことフェリシアがハトコの石蕗一朗をギルドに誘おう、一緒にＶＲＭＭＯ「ナローファンタジー・オンライン」でギルドを作ろうと思いついたとき、既にイチローは自分のギルド「Iris Brand」を立ち上げていた。
自分の装備をすべて自分好みにオーダーメイドするために、オリジナルデザインの防具やアクセサリーを生産するための拠点が必要だったのだが、それにデザイナーとして巻き込まれ、周囲の大手生産系ギルドにケンカを売る形になってしまった錬金術師アイリスはたまったものではなかった。
「僭越ながら、イチロー様は客観的に見てイヤなおカネ持ちです……」
キルシュヴァッサー卿はこほんと咳払いしてそう指摘した。
“御曹司”イチローが最初の１週間に何をしでかしていたか、どうやってフルオーダーの防具を手に入れたかの経緯を、もっぱらアイリスの視点で描いたもの。ｗｅｂの「小説家になろう」版とはかなり構成が変えてあるらしく、長男は「邪神アイリス登場の回だよ」と言ってますが、まだアイリスはそこまで邪悪じゃなかったですよ。挫折しかけていたデザイナーのタマゴで、ちょっと開き直って毒舌を吐き始めたくらい。どんどん濃くなるけど。
お金をなんだと思っているんだ。
こういう主人公無双系の話は、そのままだと主人公の大活躍だけが単調に続いたり、あるいは強さのインフレだけがエスカレートしちゃいますので、適当なところで戦いの主役がサブキャラに移るのは巧い手です。思わずウェブ版を読み始めて、外伝まで読破しちゃいました。
おかげで紙の本が貯まること……。
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