付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「薬屋のひとりごと」 日向夏

2014-11-05 | ミステリー・推理小説
 もともとウェブ小説として連載されていて、2012年にソフトカバーで書籍化されたものの文庫化です。しのとうこのイラストが良い感じに物語にマッチしています。 

 花街の薬師・猫猫(マオマオ)は、ちょっとした気の緩みから人さらいにあって後宮に売り飛ばされてしまった。
 人さらいに儲けさせるのも癪なので、薬の知識があることも文字を読めることもその他諸々ごまかして、何の取り柄もない下女として下働きを淡々とこなしていたのだが、後宮で発生した赤ん坊の連続死をこっそり解決してしまったのを宦官の壬氏に見抜かれてしまい、皇帝の寵妃の「毒見役」として抜擢されてしまう。
 暗殺の危険が少なくない後宮での毒味役であったが、これこそ猫猫にとっての天職だった。彼女は実はマッドがつくほどの毒薬マニアだったのだ……。

 中世レベルの文明で、中国っぽい東洋風の帝国を舞台にしたミステリ。
 ミステリといっても、トリックというかネタそのものはある程度毒薬ミステリとか雑学本を読んでいれば聞いたことあるなというものがほとんどではあるので、そういう方面に期待するものじゃないです。むしろ主人公の変わり者っぷりと、その彼女に振り回されたり振り回したりする後宮の側室や侍女や宦官たちとのやりとりを愉しむもののような気がします。
 あの名探偵ホームズだってトリックやストーリーよりも、自室の壁に銃弾を撃ち込んで文字を刻んだりコカイン中毒になったりするキャラクターの切れっぷりの方が魅力みたいな気がします。それを思うと、売れっ子の妓女たちを相手に花街の裏も表も知り尽くし、毒薬を盛られるのがご褒美という主人公は、ミステリの正統派ヒロインというべきなのかもしれません。

【薬屋のひとりごと】【日向夏】【しのとうこ】【ヒーロー文庫】【痛快ミステリー】 【夾竹桃】【夢遊病】【鉛中毒】【松茸】【テトロドトキシン】【チョコレート】【冬虫夏草】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする