付け焼き刃の覚え書き

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「“文学少女”と神に臨む作家」 野村美月

2009-05-23 | 本屋・図書館・愛書家
「読者は作家を裏切るのよ。読者の喜ぶ顔を見たいと思っても、勝手な要求ばかりする。こちらの想いが伝わらない。勝手に憧れて、勝手に失望して、勝手に憎悪する。ある日突然、手のひらを返したように冷淡になる。そのうち忘れてしまう。そして、別の作家を見つけるのよ」
 朝倉美羽の言葉。

 文学少女の最終章は、遠子先輩の卒業を前にさまざまな事態が一斉に動き出し収束していきます。

 大学入試を控えた遠子と心葉が会う機会は少なくなり、書くことを捨てた心葉は、遠子に井上ミウは2作目を書くべきだと告げられると裏切られたように感じます。そして心葉と琴吹ななせはつきあい始め、流人が、竹田が、麻貴が、それぞれの思惑で動きだします。
 人は変われるのか変われないのか。
 そして、最後に提示される謎は、遠子の両親の死について。
 当事者である遠子ではなく、井上心葉が死者の代弁者となり、彼らの物語を想像し始めます……。

 シリーズ全体で評価しないといけない作品でした。遠子と心葉のほんわかしたやりとりに誤魔化されがちですが、それぞれの巻では個々のキャラクターの描写が不足していたり、謎が完全に解決されていないかとか、解決されていても後味が悪すぎるとか、いろいろ物足りない部分や何かしら引っかかりが残っていて、誰も気持ちの整理はついていても全然幸せになっていないものばかり。それがすべて「めでたし!」といえる形で決着がついてしまったのは流石は最終章。読み終えてすっきり晴れ晴れとした気分になれました。
 人間失格コンビともいうべき”竹田千愛と流人についても「めでたし!」といえるかどうか疑問な部分は残りますが、大きく欠けた部分がある者同士うまく収まったというところかもしれません。

【“文学少女”と神に臨む作家】【野村美月】【狭き門】【ぺたんこ】【ヘタレ】【毒薬の小瓶】【シュークリーム】

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