付け焼き刃の覚え書き

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「物語 カタルーニャの歴史」 田沢 耕

2007-08-22 | 時代・歴史・武侠小説
 PBMやTRPGで安易に便利に使われがちなのが「傭兵」。一昔前なら「戦士」でひとくくりにされたカテゴリーだけれど、キャラクター・クラスが細分化されたため脚光を浴びるようになりました。兵士のように国王や領主の命令でしか動けないわけではなく、騎士のように行動規範を神や誓いに縛られないから、ゲーム的に使い勝手がいいのでしょう。
 ただ、平時になると途端に始末に困るのも傭兵。戦闘能力に優れており、それだけが取り柄という連中が、主君も持たず、やることもなかったら……。14世紀頃のイタリア半島といったら傭兵天国。長く統一国家が誕生しなかったも傭兵のせいといわれるほどです。最初のイタリア王オドアケルは元々はゲルマン人傭兵隊長。ミラノ公になったフランチェスコ・スフォルツァも傭兵隊長。チェーザレ・ボルジアも傭兵隊長を経験してますね、ちょっと意味合いは違うけど。ここらへんは資料も豊富です。
 イベリア半島でも傭兵は大活躍していました。13世紀にキリスト教文明圏とイスラム教文明圏が衝突した時代、常に最前線にいたのはカタルーニャの傭兵部隊でした。イスラム圏といえば、当時は世界最先端の文明圏。そこに荒くれ者の集団が「剣よ、目覚めよ!」をかけ声に殴り込みをかけるものですから、傭兵団は<アルモガバルス(アラビア語で襲撃者)>と呼ばれ恐れられるようになりました。しかし半島の情勢が安定すると当然のように邪魔者扱いされます。戦うことしかできない戦士の集団なのですから。
 そこで首領のフラーが今度はビザンティン帝国に次の戦場を見つけ出します。皇帝に雇われ、これまたオスマントルコ相手に獅子奮迅の活躍をします。そしてまた戦況が安定すると邪魔者扱いされるようになり、ついにはフラー以下主立ったメンバーが皇帝に謀殺されてしまいます。しかし、それで霧散してしまう傭兵団ならかわいいものです。逆にいきり立った<アルモガバルス>はビザンティン帝国を荒らし回り、ついにはアテネ公国とネオパトリア公国という国家を築き上げてしまいます。傭兵恐るべし。

【ミリタリー】【傭兵】

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