付け焼き刃の覚え書き

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「紅蓮の翼~『爆風』死闘の果て」 内田弘樹

2008-04-06 | 架空戦記・仮想戦史
 1トン爆弾を抱えて急降下できる戦闘攻撃機<爆風>。もし、そんな攻撃機が存在していたらという仮定の下に話が進むのが、この『紅蓮の翼』シリーズ。「<爆風>が戦争に投入されたことで戦局がどう変わっていったか」ではなく「<爆風>という戦闘攻撃機が存在していたら、どのような戦術が採用され、どのような戦場に投入し、その結果をどう発展させていっただろうか」という方向にIFの重心が傾いていますから、連作短編集の形式は、このテーマを語るのにふさわしいスタイルだと思います。
 シリーズ最終巻の『「爆風」死闘の果て』も、爆風を凶鳥ハーピーと呼ぶアメリカ艦隊の対抗戦術を描いたプロローグ「ソロモンに逃げ場なし」、爆風をコルセアに見立てて味方飛行隊の教育を行う爆風戦闘教導隊の物語「我らカモメにあらず」、反跳爆撃(スキップボミング)戦術を実戦に採用することになった五五三空の顛末を雑誌記事の体裁で描く「スキップボミングに勝機あり」、陸軍に地上攻撃機として採用された爆風一五型を駆って敵に挑む男たちの「辻斬り稼業」、そして捲土重来を期してガダルカナルの戦いに臨む空母エセックス視点で語るエピローグ「爆風の名の如く」と、さまざまな視点で<爆風>について語られます。
 「こんな戦闘攻撃機が日本にあったらスゴイぜ!」という妄想大爆発で登場した<爆風>を大事に大事に(=リアルにシビアな視点で)育て上げていきます。たとえば「スキップボミングに勝機あり」も、単純に新型機に新戦術で大勝利!という話ではなく、多大な犠牲を払いながらも試行錯誤で前進していく物語です。
 凄い! でも万能じゃない。だからこそ、その性能をあらゆる方策を使って、とことん引き出して活かしてやろうという熱さこそが、この作品の魅力です。

【架空戦記】【太平洋戦争】【爆風】【内田弘樹】

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