付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「“末摘花 ”~ヒカルが地球にいたころ……(5)」 野村美月

2012-09-17 | 学園小説(ミステリ)
「気づくことが進歩だよ。失敗したと思ったらやり直せばいい」
 生きているならやり直しはできるとヒカル。

 ヒカルの次なる心残りの女性は“サフラン”。ネット上で知り合っただけで、名前も歳も容姿も知らないというのだが、是光はそれどころではなく、紫織子や帆夏とプールに行くはめになったり、さらには他の女性陣とも次々に遭遇し……。

 本人はともかく周囲から見れば「是光ハーレム」ですね。でも、末摘花の姿に反射的に可愛いと断言し、流れるように賛美の言葉を垂れ流すヒカルには勝てませんが。
 みんな幸せになって終わって欲しいなあ……。

【末摘花】【ヒカルが地球にいたころ……】【野村美月】【竹岡美穂】【ファミ通文庫】【学園ロマンス】【ロリ疑惑】【サンタクロース】【ツチノコ】【パンダのプリント】【夜のプール】【目つき悪い主人公】
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「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(11)」 伏見つかさ

2012-09-16 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「人生の黄金時代は、きっといつだって、山ほどの後悔と共にある」

 約束を果たすため、京介と桐乃は麻奈実と向かい合わせで話すことになる。
 それは3人の過去の物語。
 あの凄かった京介がいつの間に、無気力なダメ男になったのか。あれほど京介を慕っていた桐乃がいつから毛嫌いするようになったのか。
 『凄いお兄ちゃん』なんて、最初からいなかったんだよ。

 エピローグとプロローグ付きで語られる、兄妹と幼なじみの回想録であり、雰囲気的には最終章前のタメという感じで、ここから一気呵成に女性陣が動きそう。
 麻奈実視点の語りはやはりコワかったけれど、他の少女たちが負けず劣らずだったのがポイント。

【俺の妹がこんなに可愛いわけがない】【伏見つかさ】【かんざきひろ】【電撃文庫】
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「魔法科高校の劣等生(7)」 佐島勤

2012-09-15 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 新刊到着。家族間で争奪戦を繰り広げながら読了。

 横浜で開催された『全国高校生魔法学論文コンペティション』を、謎の武装集団が襲撃。横浜全域に大亜連合軍の魔法師とその機動兵器群が襲いかかる。
 警戒していた第一〇一旅団独立魔装大隊にも出動命令が下り、仲間たちの前で達也は指令を受ける。部隊に復帰して戦闘に参加せよと。

 下巻はほぼ横浜騒乱の顛末だけで1冊でした。修羅場だー。愉しくもあり、覚悟を決めた少年少女が恐ろしくもあり。しかし、ここでふざけた調子とかエセヒューマニズムにまみれて殺し合いに参加されても興ざめですし、司馬兄妹のみならず仲間たちが覚悟を決めて躊躇わない姿勢に好感が持てます。
 国際法上はまだ戦争は継続していて最後の戦いからまだ数年と経っておらず、各魔法科高校にも少数ながら実戦経験者が存在しているのですから、それも自然な流れなのでしょう。
 けれども、彼らの活躍を観ていると、あの対抗戦がよく対抗戦で終わったなーと思わずにはいられません。

【魔法科高校の劣等生7】【横浜騒乱編(下)】【佐島勤】【石田可奈】【電撃文庫】【異能学園】【式神】【直立戦車】【戦略兵器】【ハロウィン】
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★宇宙戦争

2012-09-14 | 破滅SF・侵略・新世界
 ここでいうのは、狭義の意味で、ウエルズの小説『宇宙戦争』と、その派生群のこと。

『宇宙戦争』 H・G・ウェルズ
 宇宙侵略ものの嚆矢。今の科学知識から観ればおかしな箇所も多いけれど、刊行当時の最先端科学を取り入れた作品ではあるので(それを言い出したら古典なんて読めません)、ここは素直にパニック状態に陥る人間の小ささや愚かさと、それでも脅威に立ち向かう人類の勇気を堪能したい。



『ザ・グレートゲーム』 イアン・エディングトン
 一度は撃退した火星人の技術を取り入れつつも、いまだ英国は火星との戦争を継続していて全体主義国家になっているというアフターストーリーのアメコミ版。擬態して人間に潜り込むスパイとか、オリュンポス山の攻防とか、見所多し。


『第二次宇宙戦争』 伊吹秀明
 最初の火星人襲来で遺された戦闘機械を西欧列強が鹵獲して、「特型戦車」として覇権争いに利用していたら……というのが伊吹秀明の『第二次宇宙戦争』。こちらは架空戦記的な解釈をしていて、あの名艦<サンダーチャイルド>の名を継ぐ軽巡洋艦も活躍するなど、また違った面白さがあります。
 火星人vs地球人類ではなく、人間vs人間ですが。


『シャーロック・ホームズの宇宙戦争』 マンリー&ウェイド・ウェルマン
 年表を作成してみたら、たぶん火星からの攻撃があった時代って、ちょうど名探偵ホームズが活躍していた時代だよね?と気づいてしまい、『宇宙戦争』やその他ウェルズのSF短編に、ドイルのシャーロック・ホームズや『失われた世界』のチャレンジャー教授の登場する諸作品を相互に組み合わせ、辻褄を合わせてしまった傑作。
 え、このエピソードはこのこと!とか、あそこにいたのはあの人だったんだ!とか、意表を突く新事実が続々と。


『火星人類の逆襲』 横田順彌
 再び火星人が襲撃してきた!
 そのうち日本に降下した一隊を迎え撃つのは、帝国陸軍の白瀬中尉や乃木大将、それに冒険小説家・押川春浪ら天狗倶楽部の面々であった!という、明治の日本でバンカラ男たちが火星人に立ち向かうという話。


『宇宙戦争1941』 横山信義
 第二次大戦のさなか。真珠湾に奇襲攻撃をかけようとしていた日本の聯合艦隊は、先にハワイを襲撃している謎の勢力と遭遇した。それは火星から飛来した宇宙人の侵略兵器だったのだが……。
 史実通りのテクノロジーと国際関係で、地球の各国は火星人との戦いに勝てるのか?というシミュレーション小説。勝てそうで勝てない、力を合わせられそうで合わせられない、微妙なリアルさが売り物の侵略SF。


『トリポッド』 ジョン・クリストファー
 サマーキャンプの少年たちは、巨大な三本脚の物体が現われて軍隊と戦うのを目撃する。
 やがて地球はトリポッドの異星人によって支配されて文明は後退し、100年が経過する……という、宇宙人が操る三本脚の戦闘機械との戦いを、こどもの視点から描いた4部作。


 映像化作品を除けば、日本で普通に手に入る、『宇宙戦争』とその派生はこのくらいかな? もちろんウェルズ版もこども向けから大人向けまで含めると、今でも5種類以上は買えるみたい。

 この他にウェルズが生み出した、火星人=タコ型というのも根強く残っていて、ハインラインの『太陽系帝国の危機』を経由して、竹本泉あたりまで痕跡があります。
 もっとも日本には、「火星人は白い髪に赤い瞳のスレンダーボディ」という萩尾望都の『スター・レッド』が端緒の系譜ができつつあるようで、これは今のところ『宇宙戦艦ヤマト2199』まで続いています。
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「珈琲店タレーランの事件簿」 岡崎琢磨

2012-09-14 | ミステリー・推理小説
「邪気がないということと、邪気にあふれているということは、こんなにも似通っているものなのだろうか」
 ほら、両極は一致するというやつですよ。

 京都の裏通りの珈琲店を仕切っているバリスタは、可憐な女性だ。
 しかもこの女性バリスタは、わずかな手がかりから、相手のことを見事に推理して暴き出してしまう。
「これはたいへん聡明なお方だ、とでも言わせたいのでしょうが。怖いです、純粋に」

 京都で小さなコーヒー店を取り仕切る女性バリスタと、オーナーなのにあごで使われる老人と、コーヒーマニアの青年を中心に繰り広げられる連作短編ミステリ集。
 書店ランキングをみると、かなり上位につけている様子。『ビブリア古書堂の事件手帖』がいまだ好調なことと合わせて考えると、一般向け書籍(日常系ミステリ)でも、「古い街の小さなお店でがんばっている黒髪の若い娘が、マンガイラスト風だけれど柔らかな色調で上品に表紙に描かれている」とヒットしやすいのかな。
 でも彼女、イメージ的には『めぞん一刻』の管理人さんにホームズの推理力を与えたようなキャラクターなので、かなり面倒くさいですよ?

【珈琲店タレーランの事件簿】【また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を】【岡崎琢磨】【shirakaba】【宝島社文庫】【「このミス」大賞2012隠し玉】【ストーカー】【祇園祭】
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「バーサーカー 皆殺し軍団」 フレッド・セイバーヘーゲン

2012-09-13 | 時間SF・次元・平行宇宙
「人間の血はいったん流されたら、あとでまちがいだとわかっても元の血管にもどすことはむずかしい」
 ハールの言葉。

「支えの欲しい人には、神とか寺院とかは良いものだと思う。ぼくはその必要を感じないがね」
 デロン・オードガードの言葉。

 遙かなる太古。宇宙の彼方で滅びた名も知らぬ帝国が生み出した戦闘機械。すべての生命体を殺戮することだけを目的に、増殖し、進化していくバーサーカーと遭遇した人類は、銀河系の各所で戦闘を繰り広げていくことになる。
 しかし、ここ惑星サーゴルでは人類戦線は苦戦していた。時空間が不安定のため、防衛軍は原始時代から現在まで、あらゆる時間からの攻撃に対処しなければならなかったのだ……。


 ということで、殺戮機械バーサーカーとのタイムスリップ大戦争。
 フレッド・セイバーヘーゲンのバーサーカー・シリーズはあちこちに大きな影響を与えた作品。宇宙を放浪し、組織的に生命体を抹殺しようとする戦闘機械の群という発想は、「パワードスーツ」とか「サイボーグ」と同じようなSFの定番ガジェットの1つになりました。アニメやコミックだって『超時空世紀オーガス』から『宇宙家族カールビンソン』とか『究極超人あ~る』でお馴染みの存在。『スターウェブ』にもバーサーカー・クラスがあったしなあ……。
 プログラムに従って破壊と殺戮を繰り広げるバーサーカーは時として同族同士で殺し合う人間の合わせ鏡ともなり、それを正面から命題として突きつけたのがアニメ『無敵超人ザンボット3』の敵ガイゾック。そしてそれをそのままひっくり返して打ち返したのがサウンドドラマ版『ARIEL 幻影の侵略』だったりするので、『バーサーカー』『無敵超人ザンボット3』『ARIEL』は是非セットで楽しみたいもんです。(2007/10/10 2012/09/13改稿)

「わしら人間は感謝すべきときに感謝を忘れることがあまりにも多い。それどころか、他人に先んじようとして精力ばかり使っている」
 ジョバンの言葉。これに対抗できる言葉は「みんなでしあわせになろうよ」しかない。

【バーサーカー皆殺し軍団】【フレッド・セイバーヘーゲン】【ハヤカワ文庫SF】【バーサーカー】【タイムトラベル】【人間そっくり】
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「異国トーキョー漂流記」 高野秀行

2012-09-13 | エッセー・人文・科学
 著者が日本で出会った海外からの来訪者を通じて見つめ直すと、ありふれた日本の街がトーキョーという異国に見えてくる。幻の怪獣ムベンベを探す旅に必要だからとフランス語やらリンガラ語を習ったり、コンゴから来たお客を案内している内に案内されていたり……。
 借金取りが長蛇の列を作る大使館というのもスゴイと思ったし、フランス語を習うつもりでいつの間にか暗黒舞踏を見ていたというのには笑ったけれど、結婚式のスピーチには素直に感動しました。普通に良い話ですよね。他にスピーチを頼める人がいなかったというのは少し悲しいけれど。

【異国トーキョー漂流記】【高野秀行】【卒業論文】【暗黒舞踏】【カトレア】【なるほど!ザ・ワールド】
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「デート・ア・ライブ5~八舞テンペスト」 橘公司

2012-09-13 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 人類社会に天災のように破滅をもたらす精霊の力をデレさせて封じようという『デート・ア・ライブ』の5冊目。

 修学旅行で南の或美島を訪れた士道たちは、2人の精霊が争っている現場に遭遇する。
 彼女たち八舞耶倶矢と夕弦の姉妹はもともと1人の精霊。再び1人に戻る際に、どちらの人格を主とするかで争っていたのだが勝負は付かず、最後の決着をどちらが先に士道をデレさせるかで決めるということになってしまった……。

 巻ごとに美少女キャラが登場するパターンにも飽きてきたというか、十香と折紙以外はその巻限りになりがちで掘り下げが物足りなく思います。出し過ぎだよ。
 令音、鳶一、狂三、四糸乃、五河、八舞、十香、士道と、まだ4人くらいは出てきそう……。
 そして、鳶一は連れ込みに覗きと、単なる寡黙な色情狂になっちゃってますが。

【デート・ア・ライブ3】【八舞テンペスト】【橘公司】【つなこ】【富士見ファンタジア文庫】【修学旅行】【露天風呂】【添い寝】
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「風来忍法帖」 山田風太郎

2012-09-12 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「殿……仰せにはそむきまする。いかにわが夫の仰せでございましょうとも、主家のためでありましょうとも、麻也は妻として、女として、人間として、仰せにはそむきまする」

 悪源太ら香具師たちが飛び込んだのは豊臣勢の包囲下にある忍城。彼ら7人の風来坊の目的は北条方の麻也姫。姫を守るのは風摩小太郎が率いる忍者団・風摩組、そして攻め寄せる石田三成の軍勢もまた麻也姫の身柄を確保せんとしていた……。

 戦場に潜り込んでは戦を逃れてきた奥方侍女をたぶらかしては売り飛ばし、鉄砲玉や薬を戦場のど真ん中で敵味方に売りつけてきた悪党たちが、何の因果かハッタリと機智と詐術で攻め寄せる豊臣勢を迎え撃ち、風摩忍者と戦うことになる物語。
 『のぼうの城』と同じ、浮城こと忍城をめぐる攻防戦で、奇々怪々な忍術の数々や攻守が二転三転するシニカルなストーリー展開はさすが山田風太郎です。

 この話の忍法にはやたら「糸」が出てきます。
 単分子ワイヤーとか、細く長い糸を使って戦い相手を細切れにしてしまうというと、最近では『HELLSING』のウォルター・C・ドルネーズの極細の鋼線。その元ネタである『魔界都市ブルース』の秋せつらのチタン合金製の妖糸。『庖丁人味平』で無法板の練二が使う白糸バラシ……はちょっと違うか……。まあ、こうした異能の糸使いというと、やはり山田風太郎まで遡ってしまうんですね。
 北条家の乱波組頭領である風摩小太郎らが使う忍法「風閂」は髪の毛で人体を真っ二つにしたり、首に巻き付けて遠隔操作で人を操ったり。女忍者たちも蜘蛛の糸のようなものを使いますが、これはバルトリン氏腺から分泌する粘液なので、これは白糸バラシなみに違うような気がします。忍法「恋さみだれ」って名前はかわいいんですけどね。

【風来忍法帖】【山田風太郎】【山田風太郎忍法全集】【講談社】【大男根】【うすい胸】【浮城】【エンコヅケル】【太田三楽斎】
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「The Dragonlover's Guide To Pern」 ジョディ・リン・ナイ

2012-09-11 | その他SF(スコシフシギとかも)
 「歌う船」シリーズの後半でマキャフリーと共著しているジョディ・リン・ナイによる、惑星パーンのガイドブックです。学生時代に、今はもう無い名古屋伏見のファッションビルのブックセンターで、いかにもな感じで飾られているのを発見し大枚はたいて購入。
 惑星パーンの地図から各城砦や工舎の紹介、ヨコハマ号やシャトル、糸降りの際の竜の編隊フォーメーション図とか、動植物や昆虫、食生活や医療品、パイやタルトのレシピ、ニット編みのパターン、マルク貨のデザインや交換レートなどなど、マキャフリィの監修のもとでとことんまとめたソースブックになっています。

 メインのイラストレイターを務めるトッド・キャメロン・ハミルトンは「時の車輪」シリーズやジュブナイル版「スタートレック」の挿絵などを担当しているけれど、ワールドコンのゲスト・オブ・オナーにもなったことのあるSFイラスト界の重鎮。地図と図版を担当しているジェイムス・クローズは「魔法の国ザンス」などのガイドブックにも参加しているようです。
 この上なく面白く、日本語訳が待たれる本ではあるけれど、唯一いただけないのはイラストがかわいくないこと。リアルではあるのだろうけれど、下手ではないのだけれど、こうした絵柄がアメリカのスタンダードなんだろうけれど……ジャクソムはおっさんだし、このやけに面長のおばちゃんをメノリとか言われると……ねえ?
 あと文章では軽く流していたけれど、パーンの原住生物って、基本複眼なんだ……と改めてつきつけられる衝撃。

【The Dragonlover's Guide To Pern】【ジョディ・リン・ナイ】【アン・マキャフリー】【DEL RAY】
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「創世の大工衆」 藍上ゆう

2012-09-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 ファンタジー小説なんだけれど銃使いや鍛冶屋や料理人とかが主役とか、毛色の変わったものは一通り押さえようと心がけているのだけれど、そこで「大工」ときたら買わないわけにはいきません。

 獣人の国にただ一人の人間であり、奴隷工として暮らす少年・カナトの前に現れた少女シアは、伝説の大工衆デミウルゴスの一人だというのだが……。

 何年経っても壊れない完璧な建築物を魔法の大工道具を使って、あちらこちらで建てまくって結果的に大工という職業を潰してしまった大工衆。絡みづらいヒロインは置いておくとしても、設定としてもストーリーとしてもツッコミ処が多くて練り込み不足。話としてもうちょいなんとかなったんではないかなーと思いました。

【創世の大工衆(デミウルゴス)】【藍上ゆう】【ぴょん吉】【このライトノベルがすごい! 文庫】【建築ファンタジー】
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「ホテルオークラ 総料理長の美食帖」 根岸規雄

2012-09-10 | 食・料理
 ホテルオークラの総料理長だった著者が、オーナーが帝国ホテルに対抗してホテルを建設したいきさつから、時代ごとの食材仕入れの変遷、人材の育て方、皇族の方々やアメリカ大統領の饗応を担当したときの思い出まで、ホテルオークラ流とは何かを語った回想録。

「ホテルのサービスマンは、『マメ』じゃ駄目なんです、『コマメ』でないと」

 1960年代に修行のためにホテルオークラから欧州へ派遣された著者は、スイスが国として調理師訓練校で若い料理人を育て、それを各レストランに週何日か実習生として派遣するということをしているのを知り、現場を巻き込んだ育成システムの重要性を知ります。日本でやっと高校生レストランが評判になったくらいですから、まだまだなのかもしれません。

【ホテルオークラ 総料理長の美食帖】【根岸規雄】【新潮新書】【トナカイ】【西洋の模倣はいらない】【財閥解体】【アプランティ】【フレンチトースト】【ローストビーフ】【デクパージュ】
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「青い鳥文庫ができるまで」 岩貞るみこ

2012-09-09 | エッセー・人文・科学
 青い鳥文庫を題材に、人気シリーズ最新作について作者と編集の打ち合わせから、宣伝材料の手配、校閲、校正、帯作成、印刷、書店配送、サイン会までを、編集者モモタ視点で紹介した、小中学生向け「本ができるまで」。
 装丁も本物の青い鳥文庫そっくりなのだけれど、それよりは大判のハードカバー。なによりも(本文中ではあれだけ重要性を強調しているのに)イラストレイターの名前が表には出てこなくて、奥付に小さくちょろっと載っているだけなのが象徴的。軽視されてるなー。
 そして、途中はけっこう紆余曲折あるのに、最後は本屋の店頭に新刊がどかんと積み上がってめでたしめでたし。これは大都市の大書店限定の話ですよね。いくら宣伝していて、評判で、人気があっても、いや、新聞やテレビで宣伝されていて、前評判が高ければ高いほど、地方の中小書店には配本されないんですよ。売れる数だけ注文をかけても入荷しない。
 売れ残りが怖いのだろうけど、ぎりぎりしか刷らない。取次はまず大型書店にどかんと配本して確実に売ろうとするから、5冊10冊という小さなところには届かない。届かないから売れない。まともに届くのは人気も下火になった2週間後とか1ヶ月後なので、今さら来ても売れやしない。売れないから実績があがらない。実績がないから配本されない……のエンドレス。
 確実に手に入れたければ、アマゾンで予約ですよね。

【青い鳥文庫ができるまで】【岩貞るみこ】【藤田香】【講談社】【豊国印刷】【図書印刷】【トーハン】【有隣堂】【セント・ワーズ】
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「さよなら駐車場妖精」 ジャスティーン・ラーバレスティア

2012-09-08 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「あたしはルールが好きだよ。それがあるからスポーツが意味をなすんだもん」
 だから学校が規則で生徒をがんじがらめにしていても、そのこと自体は別になんとも思わないよとシャーロット・アデル・ドナ・セト・スティール。

 オーストラリアでもアメリカでもないけれど、似たような国の物語。そこにはニューアバロンという大都市があり、そこに住んでいる人には1人1匹の妖精が憑いているという。妖精を見た者はいないけれど、住人はみんなそれを知っている(あるいはみんながそう信じていると知っている)。
 けれど、スポーツ専門校に通うチャーリーは不満だ。彼女に憑いているのは“どんなに混んでいても車を駐めたい場所に空きスペースがみつかる”妖精だからだ。他の少女たちのように、“素敵な洋服がお値打ちに手に入る”とか“男の子がみんなとりこになる”妖精だっていいのに!

 創元推理文庫はジュニア向けのレーベルを作ればいいと思うよ。
 対象は中高生の少女かな。恋に悩み、学業成績や部活で昇格できるかどうかに一喜一憂する高校生たちの物語です。まさに「愉快でちょっと痛い青春学園ファンタジー」。妖精が本当にいるのかどうなのかとか、妖精のことを信じているのはこの街の人々だけみたいなのは何故なのかとか、この街の人々がやけにド田舎並に内向きに身内意識が強いのはどうしてとか、そういう話は結局スルー。気にしたら負け。

【さよなら駐車場妖精】【ジャスティーン・ラーバレスティア】【ミギー】【創元推理文庫】【愉快でちょっと痛い青春学園ファンタジー】【タブレット】【社会奉仕】【ボブスレー】【バスケットボール】
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「屍者の帝国」 伊藤計劃×円城塔

2012-09-07 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 伊藤計劃の30枚ほどの遺稿を円城塔が引き継いで完成させた冒険小説。いわば夭逝のフィリップ・K・ディック記念賞作家と芥川賞作家によるコラボ作品。

「物語はわたしたちの愚かさから生まれ、痴愚を肯定し続ける」
 世の大半の者は理屈を理解できないし、理解できないということは彼らにとって存在しないということなのだと、ニコライ・クラソートキンの言葉。

 フランケンシュタインの屍体蘇生技術が全世界に拡散した19世紀末。家事労働・工業生産から軍事まで、生きる屍体なくしては社会は成り立たなくなっている。
 医学生だったジョン・H・ワトスンは、ヴァン・ヘルシング博士の推挙により英国政府機関の秘密諜報員としてアフガニスタンへ赴くこととなった。同行するのは、天衣無縫にして猪突猛進の陸軍大尉バーナビー。目的はアフガニスタンの奥地に屍者の帝国を築こうとする一派の野望をくじくことだというのだが……。

 フランケンシュタインの怪物で始まる話かと思っていたら、どちらかというとゾンビ小説で(そりゃそうだ)、ホラーかと思っていたらスチームパンク・アクションで、クトゥルフ神話っぽいかと思っていたらSFだったという話。キム・ニューマンの『ドラキュラ紀元』をゾンビでやってみたような話といえば……。

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