付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「上海セピアモダン」 森田靖郎

2014-08-05 | エッセー・人文・科学
 不定期ではあるけれど、なにか「わたし、気になります!」モードに突入すると、あれこれ一斉に関連書籍や映画をかき集めて頭に叩き込むのが趣味です。あまりに一気呵成に詰め込むので、だいたい熱が冷めると同時に9割方忘れますが。
 ミステリ小説の有名どころを網羅しようとしてみたり、江戸風俗に凝ってみたり、架空の博物学にのめり込んでみたり、クトゥルフ神話や日本神話を追いかけてみようとしたり。
 インターネットが普及し、ネット通販が常識となって何が変わったかというと、こういうときに簡単に文献や映像が集まってしまうのですね(カードの限度額の範囲で)。適当な単語を放り込んで検索かけて、そこで発見した文献を購入し、そこに記載されている参考文献や引用文献にまで遡り、そこでさらに気になること分からないことを発見して……と、そういうことを繰り返していくといつまでも愉しめるのです。

 そんな感じで、20世紀初頭の上海にのめり込んだ時期がありました。
 ところが、もともと体系づけて学んでいるわけではないので、基本的なことがわからないことばかり。通貨や物価はどうなっているのかなど、さんざん悩みました。
 なにせ、日本の「円」は簡略化された文字で、もともとは「圓」と表記されていましたが、中国の通貨単位だって「元」と簡略化される前は「圓」と表記されていました。さらにはこのあたりでは、米ドルだって「圓」とすることもあったというのです。
 そんなこと、学校では習ってませんよ!
 また集めた本のデータや記載内容にしても、わざわざ中国の通貨か日本の通貨かなどとわざわざ明記しないまま、「××を××圓で購入」とか書いているのですから、相場の感覚がぐちゃぐちゃです。それをはっきりさせるために、ますます手当たり次第に購入していくことになったのですが、これもそのときの1冊。
 19世紀末から一応1945年までの上海の風俗や文化を、その時代ごとの背景を踏まえて紹介しています。

「上海にいると年をとらないんだよ。いつも少年のままでいるような、そんな気がしてここでは少年の日々しかないんだ」
 身経百戦の戦闘英雄、老紅軍兵士・彭自強の言葉。

 上海の誕生から租界の拡張プロセス、各地区の紹介やその推移を地図や写真を挟み込みつつおこなっていて、入門用にはちょうどいい1冊だったかも。
 モノクロながらとにかく図版が多く、けっこう細かいのです。たとえば上海事変の話なら、集結したアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、日本の各軍の様子を写した写真が何枚も何枚も続きますし、娯楽の中心「大世界」なら完成当初から文化大革命当時までの外観の変化を追い、内部の賭博場からボールルームまで見せています。その建設当時の事情から解放後の様子までを絵物語で紹介した記事も、普通なら「こんな記事がありました」くらいで済まされそうなものを、まるまるそのまま掲載されているのがありがたいです。わかりやすい。
 黄金栄と杜月笙の肖像写真があるのもポイントかな。

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「宇宙軍士官学校5」 鷹見一幸

2014-08-04 | ミリタリーSF・未来戦記
「自分を客観的に見ることができなくなったとき、人は愚行に走ります」
 教導者カラム・リューゲルの言葉。

 粛正者の偵察機が太陽系に出現した。
 しかし、それはこれまでの粛正者には見られなかった、攻撃力の高い強行偵察機と観測機の2機編成で、その最初の一撃で急行した哨戒艦は撃破されてしまう。
 地球に与えられた艦艇では迎撃できないと判断され、ケイイチたちが指導する士官学校の生徒たちに出撃命令が下る。旧世代艦ではあっても、彼らに与えられた装備の方がまだ新しく、またその運用に熟知していたからだ……。

「戦争ってのは、突き詰めれば経済活動と同じだよ。コストは、より大きな利益を得るために支払われるんだ」
 有坂恵一の言葉。

 ということで、人類初の実戦!となりましたが、これは予想以上にあっさりと処理され、その後の地球の新体制発足と援軍を求め銀河系の上位種族への使節団が派遣されるところまでが語られます。いろいろ幾らでも波瀾万丈に描け、血でも汗でもだーだーに流れそうなストーリーですが、あくまでマイルドにさらさらと。女性関係だって、幾らでもどろどろしそうなものですが、淡泊にほんわかと進みます。いわゆる草食系。

【宇宙軍士官学校】【前哨5】【鷹見一幸】【太田垣康男】【銅大】【ハヤカワ文庫JA】【戦争SF】【ワープゲート】
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「ALKYON2」 岸田恋

2014-08-04 | 戦記・戦史・軍事
「僕は君じゃない。だから、此處へおいで」

 ナポレオン好きで、宇宙戦艦ヤマトが好きで、美女美青年からガキ、オヤジまで描き分けられて、アクションも描けるし、馬でもメカでもOKというマンガ家・岸田恋のファンクラブ会報……というより個人誌で、1982年発行。ちょうど前年の81年に「別冊アクション11/27」の『はっぴDo!Do!』でプロデビュー。忙しくなって、同人誌作品の執筆ペースが落ちていた頃です。
 掲載されている作品は、帆船時代の海洋戦記「ビフォー・ザ・マスト」の第6話「掌砲長の過去」が24頁。「別冊アクション」に短期連載していた『時代にキッス』の作品解説と名セリフ集、今となっては考えられないファンクラブ会員名簿(電話番号付き)、SF版ナポレオンもの『ネオ・ダイナスツ』のパロディ、ナポレオン関係書籍紹介、岸田恋作品リスト、映画コラム、ナポレオンの兵学校の同級生にして秘書のブーリエンヌ回想録の抜粋のコミックエッセイ……。
 面白い帆船マンガなんて、今でも貴重ですよ!

 これを今読み返して思うのは、化物語シリーズで忍野忍が余談として、ナポレオンの睡眠時間と入浴時間についてもっともな指摘をしていたけれど、ブーリエンヌが書き残していた話によるとナポレオンの入浴中、ブーリエンヌがずっと新聞や雑誌を読み聞かせて情報をインプットしてたんだとか。
 寝る暇、ないじゃないか?

【ALKYON】【SECOND SINGLE】【岸田恋】【RFC】【岸田恋合】【ネオ・ダイナスツ】【デジレ】【時代にキッス】
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「リ・モンスター4」 金斬児狐

2014-08-03 | 異世界転生
 お転婆姫から依頼が来た。
 自分の衛兵たちを訓練して欲しいというのであるが、その実、反乱を企てている貴族派への切り札にしたいらしい……。

 ゴブリンに転生した主人公のピカレスク・ファンタジー。強さの秘密は食べて相手のスキルを身につけるということにあって、黒神めだかの「完成(ジエンド)」というより星のカービィだよね。しかも、この手のコピー能力者にありがちな、見たものしかコピーできないとか、コピーできる能力の数に制限があるとか、オリジナルに劣るとかのデメリットもなく、思う存分「俺TUEEEE」を満喫してます。
 それでいて、用心深さも忘れない……というか、スタートがゴブリンだったので、強くなっても力押しにはならないようです。
 今回は迷宮なんかも軽く踏破しながらのクーデター潰しの回ですが、主人公はかなりえげつないことしていますし、女武者はあっさりそれに適応してるし、お転婆姫は内面成熟しすぎてねじれてますし、一見清楚なお后は変態だし、頭が痛い展開です。
 こういう主人公無敵のお話は主人公が「向かうところ敵なし」を前提にいかに面白くするかがツボなので、同じく異世界から来た人間が出没し始めても(狡猾さもあっての)無双状態に変わりが無いのが安心です。さらに凄い敵が出てきて苦戦してなかなか勝負に決着がつかなくなったらげんなりですから、ここはさくさく進むのを楽しみにしています。

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「僕とおじいちゃんと魔法の塔(6)」 香月日輪

2014-08-02 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「批判することを、頭がいいことと勘違いしてる奴ぁ、多いからな。褒めるより批判する方が上等だと感じるのよ」
 こういう単純な思い込みにはまるのは己の世界をきちんと作れていない奴だと秀士郎。

 条西高の修学旅行は北海道。魔女エスペロスも初めての体験にうきうき気分を隠せず、新しい下着も買い込んで準備万端。
 ところが美人でお金持ちだけれどエスペロスと張り合う女子やら、人の話に口を突っ込んでは文句ばかりつける男子やらいて、誰でも誰とでも気持ち良くつきあえるわけではないのだから人間関係に見切りをつけるのも必要だと秀士郎は言うのだ……。

「品性ってのは、一般常識のうちなのよ」
 誰でも身につけているようなものだけれど、最初から乏しい者もいる。目の前のものだけを考えていては人生は豊かにならないと秀士郎。

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「異次元のエデン~銀河辺境シリーズ」 A・B・チャンドラー

2014-08-01 | 宇宙・スペースオペラ
「おれは前から、出しゃばるくせのある機械が大嫌いなんだ」
 機械に監視され、交尾を強制されては面白いわけがないよね。

 海賊が宇宙船に設置した核爆弾が破裂して、美人捜査官ウナ・フリーマンと共に救命艇ごと異次元空間に飛ばされたグライムズ。
 男と女が閉鎖空間でやれることをやりながら漂流していたグライムズたちを救出したロボット宇宙船は、彼らに新世界のアダムとイブになれというのだが……。

 ジョン・グライムズが美女と二人っきりで漂流する話。
 これで救命艇の食事が、完全リサイクルシステムでなかったら極楽だったのにねえ。まだ、宇宙戦艦エルトリウムとかヤマトのシステムくらい美味しかったら良かったのに、そこは日本人と欧米人の食にかける意気込みの差なんでしょう……。 

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