西相知駅は鉄道レイアウトにしたいような駅である。駅前にはと言ってもホームしかないが、ちょっと傾いた電話ボックスぽつんとたっている。その並びには桜の木が五、六本。二三人の人が汽車をまっている。そこに黄色のディーゼルカーが一両で入ってきた。これは絵になる。写真になる。と、思ったのは一瞬のことである。運転手の御仁も褒めたのであるが、「後で寄って見ましょう」で通り過ぎてしまった。その一角だけ切り取ることができるものならと思うほどの風景である。ローカル線ならではのいい風景である。その前を風のように通り抜け、愈々伊万里に入る手前に佐里温泉はある。温泉と言うからには温泉街を思い浮かべていたのではあるが、その思いは裏切られることになる。ぽつんと一軒だけ。しかも、ただ道路沿いにあるのである。本当は気づかずに通り過ぎたのである。何処まで行ってもないので引き返して見つけたのである。この温泉の売り物は、ご存知のようにガラス張りで、且、ピラミッド型の湯宿である。ここは女性専用、泊り客ならば男性でもいいとのこと。ガラス張りといって中は見えない。当たり前のことか。大きいものを想定していたが、さほどではなく、こじんまりとしている。湯はいい。よくぞ日本に生まれけりは、どこの温泉に行っても同じであろう。湯客のコスモスの写真を見せてはいるが感心はしない。小一時間もいただろう、駅に行かねばならない。しかし逆光である。ローカル線ゆえ汽車は来ない。人も来ない。それに雪がちらついている。湯冷めをする。季節のいいときに来ねばいかん。そう思いつつも何枚かの写真を撮ったが面白くなく、やはり絵にならない。(写真:西相知駅)[まだまだ続く]
佐賀県相知といえばコスモスを思い浮かべることであろう。佐里といえば、やはりコスモスであろう。そして温泉である。今回初めて行った。それも前回、湯平に行った御仁とである。九州が見納めだからと言うので湯平に行ったのだが、見納めはまだまだあったらしい。それが今回の佐里である。小城方面から多久を通り抜け、厳木を抜け、相知へと至る。これは唐津街道と言っていい。ここ相知は宿場町である。街道に沿って両脇に街並みが残るが、ほんの一部であるのが残念である。田舎にと言っては失敬かもしれないが、少々新しい街並みとなっている。この付近は炭鉱があったようで、そのため古い街並みが残っていないものだと思われる。殆どと言っていいほど車は通らない。ここに町があることをまるで知らないかのように横に流れる川に沿った土手上をバイパスのようにして車が駆け抜けていく。この道を北上すると唐津に至る。南北に川が流れ、東西はまだ冬景色を色濃く残す山々に抱かれているのである。ここを抜けたとたんに左へ伊万里方面にとる。山並みに向かってすすんでいくと、右手に西相知駅が目に入る。(写真:西相知駅)[続く]
骨折で入院した伯母を見舞いに、二人の妹を連れて行った帰りの道である。89の齢を重ねてきた伯母は足腰が弱くなり、一人で出かけていくことが困難になっている。ために、私は、ことあるときには動いてやらなければならない。この伯母ののご主人の出は、ここ木屋瀬で、醤油屋を営んだ大店であった。このことを既に伯母は記憶にない。場所も記憶になかったのである。年齢がそうさせているようである。それでも木屋瀬の雰囲気には浸っているようであった。ご存知のように長崎街道の宿場街である。皆さんも一度は訪れたことが御ありであろうと思われる。整備されすぎた感があるものの、一つの財産である。(写真:伯母、母、妻)