生活の中の古墳群である。ここで産まれた人達はこの風景が当たり前で無いのが不思議なくらいに感ずるのかもしれんな。
大原足尼命を祀った神社はみやこ町にもあり、その境内には中規模の円墳がある。やはり神社には古墳がつきものだ。
しかし、古墳を削ってまでの神社なら創る必要はないと思うのは我輩だけだろうがな。
手品師は握らせた左手の脇に指を突っ込んで抜き取る動作をしている。
上手いこと取り出せないのだろうか。身体を折り曲げ覗き込んでいる。ようやく抜き取ることできたようだが、「あれっ」 まずったのか戸惑っているではないか。どうしたのかなと思ってみていると「もう一回ね」と担当君に言っている。
担当君の左手は既に生贄になっているから手品師の思うがままである。先ほどと同じ動きをしている。ただ少し異なっていることがある。それは紙幣の上下であった。当然のように手の甲が上になるから手の平に置いたときは上下が違ってくるのである。それを考慮しないから失敗をするのである。
今回は取り出すのもスムーズにいったようだ。いいじゃないか。
ふと見ると彼は八分の一に折り畳まれた2ドルと5ドルを手にしている。日本円で味を占めたからであろうか、先ほど失敗したドルでやり直そうとしているのかもしれない。果たして上手くいくのだろうか。
手品師は手にした2種類の紙幣を担当君の目の前に突き出し「左手を出して」と言った。担当君は聞こえなかったのか、それとも血の気が引いているのか反応すらなかったのである。すると手品師は彼の左手をむんずと掴んで手を突き出させ手の平を上にした。その上にした手の平に折り畳まれた2ドル、5ドルを置き、それらを軽く握らせ手をひっくり返した。手の甲を上にして拳を突き出すようにしたのである。
この一連の動作は担当君の意思ではなく総て手品師の意思であったということは言うまでもない。もう生贄だな。この段階で既に担当君の頭の中は真っ白である。