村上春樹・文 大橋歩・画 2001年 マガジンハウス
きのうの続き。って出版の時系列でいったら逆だけど。
村上春樹のエッセイ集。きのうとりあげた新しいやつ「おおきなかぶ、むずかしいアボカド」と同様、「anan」に連載してたもの。
もう10年も経ちましたか、そうですか。これはちっとも読み返してなかったんだけど、新刊が出たもんだから、ひさしぶりに読んでみた。
ホントかウソかわかんないことが書いてあるのが村上春樹のエッセイの楽しいとこだけど、読み返してみたら、この本には「真っ白な嘘」って章があって、そこで次のようなことが語られてる。
嘘をつくのは得意ではないが、嘘をつくこと自体はそれほど嫌いではない。それって「深刻な嘘をつくのは苦手だけど、害のない出鱈目を言うのはけっこう好きだ」ってこと。
そのあたりのこと、たとえばの話で、昔、ある月刊誌で書評を頼まれたことがあって、普通にやっても面白くないから、架空の本をでっちあげて、それを評論したけど、なかなか愉快だった、なんて、とんでもないこと書いてある。
「でっちあげをするぶん頭は使うけれど、本を読む時間は節約できる。」だなんて、読書好きの村上さんらしくない言い方だ。
で、あとで読者から苦情とか問い合わせが、来るかと覚悟してたのに来なかったんで気が抜けた、って書いてあるんだけど、そこまで読んで、これって、もしかして「そういう書評をしたことがある」ってこと自体が、でっちあげなの?って思わされて、おもしろい。
ほかにも、例によって食べもの屋さんの話があるんだけど、奈良を旅行していて、小さな町で古いうなぎ屋さんをみつけたときの話なんてのが、私は気にいっている。
二階の静かな座敷に通されて、1時間近く待てど暮らせど料理は出てこない、ほかに客はいない、一階の調理場のほうは、しーんとしている。
>のぞいてみると、ひと昔前のポーランド映画っぽい湿った仄かな光の中で、腰が曲がったおばあさんが一人、太いくしみたいなものを手にむこう向きに立っていた。そして僕が見守る中で、それをどおんと振り下ろして、うなぎの首を刺した。まるで古い夢の中の光景みたいだった。
って、やっぱ小説みたいだよなー。
きのうの続き。って出版の時系列でいったら逆だけど。
村上春樹のエッセイ集。きのうとりあげた新しいやつ「おおきなかぶ、むずかしいアボカド」と同様、「anan」に連載してたもの。
もう10年も経ちましたか、そうですか。これはちっとも読み返してなかったんだけど、新刊が出たもんだから、ひさしぶりに読んでみた。
ホントかウソかわかんないことが書いてあるのが村上春樹のエッセイの楽しいとこだけど、読み返してみたら、この本には「真っ白な嘘」って章があって、そこで次のようなことが語られてる。
嘘をつくのは得意ではないが、嘘をつくこと自体はそれほど嫌いではない。それって「深刻な嘘をつくのは苦手だけど、害のない出鱈目を言うのはけっこう好きだ」ってこと。
そのあたりのこと、たとえばの話で、昔、ある月刊誌で書評を頼まれたことがあって、普通にやっても面白くないから、架空の本をでっちあげて、それを評論したけど、なかなか愉快だった、なんて、とんでもないこと書いてある。
「でっちあげをするぶん頭は使うけれど、本を読む時間は節約できる。」だなんて、読書好きの村上さんらしくない言い方だ。
で、あとで読者から苦情とか問い合わせが、来るかと覚悟してたのに来なかったんで気が抜けた、って書いてあるんだけど、そこまで読んで、これって、もしかして「そういう書評をしたことがある」ってこと自体が、でっちあげなの?って思わされて、おもしろい。
ほかにも、例によって食べもの屋さんの話があるんだけど、奈良を旅行していて、小さな町で古いうなぎ屋さんをみつけたときの話なんてのが、私は気にいっている。
二階の静かな座敷に通されて、1時間近く待てど暮らせど料理は出てこない、ほかに客はいない、一階の調理場のほうは、しーんとしている。
>のぞいてみると、ひと昔前のポーランド映画っぽい湿った仄かな光の中で、腰が曲がったおばあさんが一人、太いくしみたいなものを手にむこう向きに立っていた。そして僕が見守る中で、それをどおんと振り下ろして、うなぎの首を刺した。まるで古い夢の中の光景みたいだった。
って、やっぱ小説みたいだよなー。