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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

理想の死にざま

2009-09-19 21:13:40 | Weblog
きのうのつづき、っていうか。
死んだらどうなるか知らない人を導くチベット仏教もすばらしいんだけど、自分が死ぬときどうするかっていう話。
自身A級棋士というだけでなく、かつて将棋連盟の会長もつとめ、普及にも尽力し、平成16年に81歳の盤寿(将棋盤のマス目が9×9の81なので棋士の81歳を盤寿という)で亡くなった故原田泰夫九段の生涯を紹介した『青春、原田泰夫のノート』という記事が、「将棋世界」誌に2008年8月号から2009年8月号まで12回にわたって連載された(2009年5月号は休載)。その最終回に、平成16年3月に肺炎を患って入院した後、自宅療養になってからの原田九段のさいごの時期の様子が書かれている。
長いけど引用しちゃう。

>「盤寿の会」が終わったころから、原田は徹底的な書斎の整理を始めた。押し入れの中からたくさんのダンボール箱を引っ張り出して、熱心に整理をしている。箱には、過去何十年分の講演関係の名簿や記録などの資料が保管されていた。それらは「いつか原稿を書くときに必要になるから」と手をふれさせなかったものだ。原田はそれらの資料一つ一つに目を通しながら、必要のない物を破り捨てるなどしてコツコツと処分していった。
 そんなことが毎晩続く。夫人は、なんで急にそんなことをし始めたのか分からなかったが、やがて何かを覚悟しているんだなと感じたそうである。気持ちのよい光景ではなかったが、黙って見守るしかなかった。
 そんなことが、いつまで続いただろう。
 ある日、最後の処分を終えた原田は、「ハァ~」と大きなため息をついて横になった。原田の部屋は、きれいさっぱり片付いていた。目をつむったままじっと動かないので、夫人が声をかけると「起こすな。いま、田舎の道を歩いているんだ。親友のヒサオ君の家に行くところなんだ」と、つぶやくようにいった。原田はすでに自分の死が近いことを悟り、生まれ育った新潟の分水町の、懐かしいあの道この道、来し方を思い出していたのかもしれない。
 7月の七夕の朝。原田は突然「将棋連盟へ行く」といい出した。夫人が体調を気遣って止めても「いやどうしても行ってきます」というので、しかたなく、ふだんから秘書的な世話をしてくれていた知人の女性に頼んで、タクシーで付き添ってもらった。車の中から建物を見て帰ってくる予定だったが、原田は「降りる」といって、しっかりとした足取りで会館の中へ入って行った。
 原田は、会議中の理事たちや事務局の職員たちに声をかけて回ったあと、玄関の前で静かに一礼をして将棋会館を後にした。自宅に戻った原田は「もう、これでいいだろう」といい、安心したように床に入ったという。
 その4日後の7月11日。原田は自宅で静かに息を引き取った。享年81。将棋に捧げた生涯だった。


すべてを自分で片付けて、準備が整った後、関係する人に挨拶して、静かに死んでいく。
私の部屋なんて散らかりっぱなしだけど、死ぬときはこうありたいものだ。
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三万年の死の教え

2009-09-18 21:18:15 | 中沢新一
中沢新一 平成8年角川文庫ソフィア版
副題は「チベット『死者の書』の世界」
きのうから、チベット仏教つながりで。
三章からなる本ですが、第一部はNHKのテレビ番組のためのの台本で、カラーの挿絵がついています。私は残念ながらそのテレビは見ていないけど。
ひとが死ぬと、魂というか意識の連続体はどこへどう行くか、ふつうの人はそのことを学んでないので、僧が枕元で死にゆく人に、いま何が起きているか、どうしたらいいのかを説いてあげる。そんなすばらしい行いを解説しています。
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虹の階梯 チベット密教の瞑想修行

2009-09-17 20:46:06 | 中沢新一
中沢新一 ラマ・ケツン・サンポ 1993年中公文庫版
文庫は改稿版です。1981年平河出版社の単行本をもってたんだけど、いま探してもみつからない。
チベット密教のはなし。オウムのおかげで、なんか誤解されてるかもしれないけど、密教とは心とは何であるかを学ぶことである。
この本は、すばらしい。仏教とは、この本を実践するかしないかである。書いてあることをやるかやらないか、やるべきことはすべて書かれている。
無常、輪廻、因果といった仏教修行を始めるにあたって理解すべきことも解説してあるし、実際の瞑想やマンダラのささげ方の手順も詳しく述べられている。ポワ(この語も何も知らない人に誤解されているのでは)についても書かれている。
全編にわたって、仏教らしい、わかりやすい例え話を交えて、イメージしやすい解説がなされており、ムリに修行の実践をしようと思わなくても、読んでるだけで面白い。
なかでも、おそらく、仏教にとって最も大切なものは、「発菩提心」であろう。
発菩提心ってのは何かってのは説明が難しいんだが(だって、この本一冊分のころになるから、簡単には説明できない)、すべてのものの心が救われるといいなーと願い、そのために心の覚醒を祈るって感じになるだろうか。
心には始まりも終わりもなく、心の連続体はとだえることがない。輪廻する生きるものすべては、かつて自分の親や子であったかもしれない。そう思えば、すべてのものに対して慈悲の心がわいてくる。そして、あらゆる生きものが心を解放し、心の本然にたどりつけるよう願うのである。

虹の階梯―チベット密教の瞑想修行 (1981年)
中沢 新一
平河出版社

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アンダーグラウンド

2009-09-16 18:56:02 | 村上春樹
村上春樹 1997年 講談社
きのうのつづき、ってことになるのかな。
村上春樹が、地下鉄サリン事件の被害者にインタビューしたものをまとめたノンフィクション。
この本がでたとき、私には、なんで村上春樹がこのような仕事をしたのかわからなかった。いまも、よくわからないんだけど。
ただ、あのとき、どうして、あんなことが起きてしまったのかと考え続けることは大事だし、あの事件から何か学べたのか、まだ何も学べていないのかと考え続けることも必要だと思うし、著者はずっとそのことを考えていると思う、たぶんだけどね。

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A

2009-09-15 15:42:57 | CD・DVD・ビデオ
森達也監督作品 2003年 発売・販売マクザムのDVD版
劇場公開は1998年、製作は「A」製作委員会。
というわけで、きのうの続き。
森達也氏の著作が好きで、いろいろ読んだんだけど、肝心なこのドキュメンタリー作品を観ていなかったんだから、ひどいものだ、私も。
で、文庫本で「A」を読んだんで、いよいよ観る気になって、DVDを買った。まったくもって、順番逆なんだが、しょうがない。
主題曲は、なぜか『グッドナイト ベイビー』なんだが、それの流れるところで、話題の、公安が勝手に転んで、オウム信者を公務執行妨害で連れてっちゃうシーンが見られます。おかしいです。
どっちの味方をするわけでもないし、製作した人もどっちの味方でもないんだけど、やっぱ警察とか普通のマスコミのほうが、主人公の荒木広報部長に比べて、イヤな顔をしてるってことが、映像みたら一目瞭然になっちゃってます。
ドキュメンタリーってもの、あまり見たことなんで、うまく評価できませんが。

ちなみに、DVDについている小冊子には、解説文として、村上春樹が「もう一つの視点からのアンダーグラウンド」と題して寄稿しています。村上春樹フリークでも、なかなかここまで探して書いたもの読んだことのある人はいるまい。
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