many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

新中間大衆の時代

2010-06-26 20:13:11 | 読んだ本
村上泰亮 昭和62年 中公文庫版
副題は、「戦後日本の解剖学」
政治学関係のつづきっていうか、勉強してたころに、ちょうど文庫が出たから読んだんだっけかって、思いだして引っ張り出してきた本。
戦後日本の経済システムの特性とかってとこには、あまり興味なくて、目次でいったら第二部の戦後日本の政治システム(「新中間大衆政治の時代」)を主に目的で読んだかな。
中流階級とも大衆社会ともつかないものを、「新中間大衆」現象と命名して、どういった行動をするか考えています。
単行本が出たのが昭和59(1984)年らしいんで、70年代後半からのいわゆる保守回帰現象ってのが何故どのようにして起きたかっていうのが、一つのテーマでしょう。
あらためてパラパラとみてると、>新中間大衆の間では、自分たちの政治的要求がみたされるならば、政権の内容にはこだわらないという姿勢が潜在的には強まってきている。このような場合に普通生じる平均的状況は、多党化であり、あるいは政権の流動化であろう。 なんてあるんだけど、もしかしたら、これって今でも起ころうとしてる?なんて思ってしまう。
(二大政党制を目指そうとして、去年政権交代までこぎつけたのに、その直後に多党化を招いていることについては、いろいろあるんだが、選挙期間中に目の前の政治のこと、個人的意見を語るのはヤメとくか。)
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現代日本の政治過程

2010-06-25 19:11:58 | 読んだ本
小林良彰 1997年 東京大学出版会
副題は「日本型民主主義の計量分析」
マンガばっか読んでると思われるのも何なんで、最近政治がさわがしいことになってきたこともあるから、政治学の本。
日本の政治って何がどうなっているのか、計量的に解明し、何が問題なのかまとめているという点で、私が知る限り、政治について分析しているものとしては、この本が一番すばらしいかなと思う。
戦後日本の政治、時期としてはだいたい1955年以降から1993年の選挙までを取り扱っていますが、読んでけば、いろんなことがクリアになります。テレビの政治家が出てきて討論してる番組とか見て、なに言ってんだかわかんないなら、これ読めばよろしと思います。
第II部「民主主義の機能不全」には、「政党公約と政府支出」「公約と投票行動」と題した章がありますが、政党の公約が国の予算支出に与える影響が低く、有権者の意向が政策形成に反映されにくというショッキングなことがズバッと示されています。
選挙で選ばれた議員が、どうして選挙前の公約を守らず勝手なことをするかについては、第III部「政治家の合理性」で、自身の再選や、大臣のイスなどのポスト獲得のために、地元など特定の支持者のために動くからだと明らかにしています。
このへん、「だろう・ではないか」ではなく、たとえば政治家の得票とその地域への補助金とのあいだに因果関係ありというようなことを統計的に分析してます。
つぎの「有権者の反応」では、経済状況の変化などと政党支持率の関係のようなマクロ分析のあと、個人がどういう理由でどのような投票行動をとるかのミクロ分析もしてます。
そこでは、内閣不信が政治家全体に対する不信につながり、ひいては政治システムに対する不信にまでなること、支持政党なし層が増えることや投票率が下がることについても分析されてます。
で、当然のことながら、最後には、いくつかの提言があります。現実の改善に役立つ提言ができなければ学問の意味はない。
選挙公約登録制の提唱、理想的な選挙制度の提唱(定数自動決定式比例代表制)、直接民主制による補完機能の提唱(国民・住民投票の実施など)、公共セクターにおける政治的ノイズ排除の提唱、政治腐敗排除の提唱(政治家背番号制など)があげられている。
すべては、自分たちで決めたことを自分たちで守る、民主主義を現実に機能させるためって目的です。
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両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)

2010-06-24 19:41:45 | マンガ
岡野玲子 1990年~1991年 小学館ビッグコミックス全4巻
きのう野球賭博の話だったんで、なんとなく、相撲マンガへ
「ファンシイダンス」のあとになるかな、岡野玲子が“スピリッツ”に連載を始めたんで、読んでた。
基本的には、典型的なアンコ型の力士・雪乃童(ゆきのわらべ)と、太りたくない筋肉質のナルシストっぽい昇龍(しょうりゅう)のライバル対決なんだけど。
いろんなキャラが出てくるんで、なにが主人公かわかんなくなる。
たとえば、デブが嫌いで家出しちゃった、相撲部屋の跡取り娘。なにかに“岡野玲子の次回作は相撲部屋に生まれたオリーブ少女の話”って紹介されてたんで、最初はこれが主人公だと思われた。
あと、いままで自分の周囲にいなかった男のタイプとして相撲取りに興味をもつ、芸能プロダクション・アイドル製造事務所「パピーズ」の2代目女社長とか。
プロ野球の取材がしたくて出版社に入ったら、相撲雑誌の編集部に配属されちゃった新卒女性記者とか。
で、やっぱ面白いのは、出てくる若い幕下力士たちの、
「オレさー やっぱ相撲取りんなってー ヨカッタって思うのはさー ムダ毛が少なくなったってことだよナ」とか、
「オレも早く化粧マワシつけてプリッとしたいナー」とか、
「やっぱ国技をやろうってんだからヨ、身だしなみは気をつけなっきゃ」とか、
ってセリフだったりします。タイトルに“おしゃれ”つけただけのことはあります。
僧侶のつぎは力士、閉ざされた世界に踏み込んでくマンガ家は貴重な存在です。
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危ないお仕事!

2010-06-23 22:17:59 | 読んだ本
北尾トロ 平成18年 新潮文庫
前にとりあげた「怪しいお仕事!」の続編ということになろうか。
普通なかなかそこまではしないようなことを、仕事にして稼いでいる仕事人たちを取材して、具体的な中身を聞きまくったもの。
「万引きバスター」とか、浮気調査の私立探偵、超能力開発セミナー講師、メルマガ・ライター、フーゾク専門不動産屋などなど。

きのうのつながりで、この本を思い出して引っ張り出したのは、最近話題の「野球賭博」について書いてあったかなと思ったからなんだが、それは『怪しいお仕事!』のほうでした。
で、そっちで書いてる「野球賭博師」の章には、どのくらい買うかとか、どういう仕組みかとかが、インタビューに答える形で詳しく出てる。
月曜始まりの日曜〆で、勝っても負けても月曜に決済。自分の口座をふたつ作って、一方を先方に渡しておくから、自分で金のやりとりをしていることになるからバレないとか。
勝つための鉄則としては、パリーグ重視。先発予告があるし、指名打者制だから点が離れやすくて買いやすいとか。
得点と賭けの関係でいうと、ハンデもらってる先攻チームから買うのがいいらしい。9回表の攻撃ができるから得点のチャンスが増える。後攻で勝ってると9回裏の攻撃がないし、サヨナラ勝ちしても1点差勝ちだからウマ味がないとか。
当日のスケジュールは、胴元のハンデ師がハンデを切り、中継っていう各グループのまとめ役が客に伝えるのがナイターなら午後1時、買いの締切が午後5時。
胴元のシステムはいろいろだけど、勝った人間から10%のテラ銭抜くほか、すべての客から年間の買いの1%を受け取るとか(客は不利)。
ハンデが重要で、西武対ロッテで西武から0.8点のハンデとなると、1対0で西武が勝ったら1.0対0.8で、西武に賭けた客は賭け金の2割からテラ銭1割が引かれたぶんが儲け(1万円張ったら、2千円の1割引き1800円の収入)。2点差以上つくと、小数点以下が切り捨てられ、丸々1万円(テラ銭抜きだと9千円)の儲け。ロッテに張ったら、1点差なら2千円負け、2点差以上なら賭け金すべて失う。
などなど。

ちなみに、前にとりあげた麻雀マンガ「3/4よんぶんのさん」では、野球賭博にのめり込んで裏社会の組織とトラブルになった社長が、最後の手段として一発勝負のばくちとして、25億を賭けて麻雀(半荘四回!)を打つというストーリーなんだけど。
そこで出てくる野球賭博について、作中で解説されている内容は以下のとおり。
たとえば、高校野球のA対Bで、Bに5.2のハンデがつけられている。仮にAが5対0で勝っても、5対5.2でBの0.2勝ち。
Bに10万張っていれば、張った金の10万に2万を加算し、5%のテラをとられて11万4千円。(電話連絡だけのカラ張りだから、手に入るのは1万4千円)
ハンデの5.2ってすごいハンデなんだけど、実力差が大きくてAが確実に6点前後の差をつけて勝つはずだから、残りの0.2が勝負の分かれ目と客は読む。
「Bが取っても1点か良くて2点、Aは8点は取るだろうから、最悪でも8対7.2でAの0.8勝ち。10万張って18万、5%テラ取りの手取り7万1千円。うまくいって完封でもすれば、8対5.2の手取り16万6千円。」ってのが予想例。
マンガの登場人物は、こんな話をきいて、これに酒の席の勢いで、Bに30万張る。
大番狂わせで、Bが4対1で金星をあげると、30万張って9.2対1、246万から5%のテラとカラ張りの30万を引いて203万7千円の現金がその日のうちに入った。
で、その200万を、失っても元々なかったカネだからって、惜しげもなくプロ野球に賭けるんだが、当時の巨人大洋戦で江川対欠端で大洋に2.6のハンデがついている。で、大洋(しかし古いね)から張ってみたところ、両投手乱調で…
という話。
ということで、強引に、きのうの江川投手に結びついてしまいました。すいません。
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たかが江川されど江川

2010-06-22 22:34:46 | 好きな本
江川卓+玉置肇・西村欣也・永瀬郷太郎 1988年 新潮社
きのうのつづき。引退の翌年に出た江川の半生記。
基本的に自伝なんだけど、共著としてクレジットされてるのは、あちこちフォローで試合経過などの事実関係を入れている、スポーツ新聞の記者のひと。

阪神ファンだった私が、宿敵ジャイアンツのピッチャー、しかも入るときにすったもんだしてダーティ・イメージいっぱいだった江川のことを、最初から好きだったわけではないのは当然のこと。っていうか、大っきらいだったんだけど。
それが何でファンになったかっていうと、その実力を見せつけられたからで。
プロ入り3年目の、昭和56年の江川、20勝したときの江川は、それはすごかった。
なんといっても、先発完投してきて、最終9回になると突如その日一番速い球を投げて、三振をとるという芸当をやってのけていたのは、カッコよかった。
それで試合は、3時間なんてかからず、夜9時前に終わるんだけど、ヒーローインタビューで「自分が子どものころ、テレビの野球中継が試合の途中で終わるのは面白くなかったから」とかシレっと言ってた。
このころから言動も、素の面白いとこが出るようになってきてたんで、そのへんも他の選手とは違って魅力的だったんだけど。
応援するチームだからとか、負けたらいやな相手だからとかぢゃなくて、それぞれの選手の実力をみて、評価するところは評価するというように、私が、野球を冷静に見るようになった最初は、やっぱ江川だったんぢゃないかと思う。
後年の「100球肩」とか弱いイメージが残っちゃってますが、若いときはすごかった。完投もするし、年間260イニング投げてたりする。いまのピッチャーは中6日で週一度しか先発しないで、しかもそれも5回くらいでマウンド降りちゃう(だから規定投球回数に達するピッチャーが少ない)んだけど、それに比べたら全然すごい、よく投げている。
ただ、「いきなり20勝するより、毎年10勝ずつしてったほうが、給料あがる」みたいな考え方を披露しちゃって、野球選手のサラリーマン化を招いた点はいただけないけど。

で、本の中身なんだけど。
「空白の一日」については、もちろん多くのページが割かれていて、幼少のころからのそれだけで一章=全体の三分の一になってます。
このなかで、江川が語ってる一番大事なことは、「自分のことはすべて自分できめなくてはならない」って考え方だと思います。
自分自身で判断して、その決断について自分で責任をとるという生き方、それこそが大事ってのには、はげしく同意します。

あとは、印象に残る勝負についていくつか触れられているけど、私が好きなのはヤクルト大杉との勝負。昭和57年のこと。
9回最後の打者で、三振に打ち取ったと思ったカーブを、ボールととられて、そのあと何球か粘られたあげく、逆転されてしまったんだが。
ボールをとられたときに抗議したのは演技(まあ、あとから何とでもいえる)、勝負に行ったのはその何球かあとの速球だったんだが、それをファウルされて投げる球が無くなってしまったという話。これには、ふーん、そうだったんだと思うとともに、いたく野球って深いなと思わされました。
あと引退後の話もいくつかあるんだけど、缶詰を開ける、釘を打つ、子どもの自転車のチェーンを直すといったことは、指を傷つける可能性があるから、引退するまでやったことがなかったなんて話。
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