興亡の世界史シリーズで一番楽しみにしていた石澤さんの本が出た。石澤さんの本は、結構読んだから、読んだことのある内容とダブルのではないかとちょっと心配していたのだが、杞憂だった。
カンボジア大好きの私には、とってもすばらしい本だった。東南アジア全体の話から、カンボジアの新しい発見まで、楽しめる内容だ。たぶん、カンボジアを全く知らない人にも面白いと思う。それも、石澤さんの、50年近くに渡る、カンボジア研究の成果だと思う。カンボジアにおける、石澤さんへの尊敬も、驚くべきものがある。
カンボジアの歴史は、まだまだ解明されていないことも多い。解明が始まったのがわずか150年前だ。当時の記憶媒体であった貝葉の記録が全く残っておらず、石碑に残った記録のみを手探りで、かき集めてここまで解明された。当初は、この地を支配していたフランスの研究家によるものが多かったが、最近は、石澤さん率いる日本チームの貢献が大きい。博物館までできた。博物館はまだ行けてないが。
あの四面仏で有名なバイヨン寺院でさえ、その制作年代は、当初9世紀と言われていたという。だんだんずれて、今は、13世紀初め(鎌倉時代)と言われている。
アンコールに東南アジアのすべての道が通じていたという話も面白い。アンドレマルローが小説で描いたのだが、事実であったことが解明されてきた。ローマや、鎌倉みたいだ。仏教とヒンドゥ教の関係に関するところやら、アンコールワットに落書きした森本さんについての発見など、推理小説そのものである。
この本を読んだ日本人は、カンボジアまたは東南アジアファンになることは間違いないだろう。