本書は、先日出たばかり。放送を見た時の話は、前にしたと思うが、驚いた。
本書は、その裏話も含めて、きれいにまとめてくれていてうれしい。
もともとこの大英博物館シリーズで、エジプト、ギリシャまでは当然として、次に日本が来る意外性があった。本書によると、3回シリーズが決まっていて、3回目は南米を予定していたのだが、何と担当者が経費節減で1人しかいなく断念。日本になったという。
取材中も、職員のストがあったということで、どこもかしこも財政難だ。
大英博物館の場合、入場無料を貫いているので、ちょっと料金をとれば、すぐ解決するとは思うのだが。
大英博物館に日本のものがあることさえ知らなかったのだが、800万点の収蔵品の内、3万点が日本のもので、日本コーナーの展示もあるのだという。
ただ、このガウランドの収集品は、まだ研究が進んでおらず、今回のプロジェクトは、画期的なものだったようだ。
このガウランド氏。明治初期に、近代日本へ貨幣鋳造技術を伝えるため来日し、当初3年の予定が、20年近くとどまり、日本各地の古墳を研究した。発掘したものは、少ないが、多くの古墳を訪れ、貴重な記録に残した。今は、宅地になってしまった古墳もある。
何故、当時まだ注目されていなかった古墳の研究としたのか。当時、シュリーマンがトロイを発掘する等、古代史ブームだったkとが背景にあるらしい。母国イギリスに、巨石文化があったことも一因かもしれない。
彼は、帰国後、日本での研究成果をまとめ発表すると同時に、ストーンヘンジの復元にも貢献したのだという。
当時の彼の研究が、イギリスでも、日本でも、極めて貴重なものになっている訳だ。
巨大古墳が突如消えた謎に、本プロジェクトは取り組んでいるが、巨大古墳末期の丸山古墳の発掘結果から推論している。
丸山古墳の石室は、横穴式だが、円墳部分の中心より、ずいぶん手前に石室がある。本来、円墳の中央部の下にあるはずなのだが。
この事実は、丸山古墳が、たまたま大雨で、石室が開いたことにより、再確認された。
石室は、元々円墳部分の中央部の地下に作られていたが(竪穴式)、大陸より、より大きな石室が作れる横穴式が伝わった。ところが、巨大化した日本の古墳には、その横穴式を作るのが困難であり、巨大古墳が作られなくなったという推論である。
その後の、古墳を見ると、説得力のある仮説のように思える。
当時の発掘資料、発掘物、古墳写真、研究資料など、イギリスできれいに保管されていたことに感謝したい。
最近、このようなお宝の返還請求が盛んだが、逆に感謝すべきと思う。特に、ガウランドさんは、考古学の基本をも、日本に伝えたのだから。