本書は、東京駅近辺の大きな本屋で、TOKYO STATION VISION の日に、見つけた。
興味を持っていたテーマずばりの本だったので、驚いた。
著者は、元外交官で、ネパール大使を務め、現在も、日本ネパール教会会長を勤められている。小嶋さん。
昨年の3月に出たばかりの本。
ブッダが出家するまで住んでいたカピラヴァストゥがどこにあるかを解明しようと試みている。
昨年行った時、私も両方の候補地(ネパールのティラウラコットと、インドのピプラワ)に行ったが、著者は、その周辺地区も含め、何度も訪れている。
そして、その謎を解く秘密が隠されている仏典の記述と、当地を遠い昔に旅した法顕と、玄奘の記述に検討を加え、結論的には、カピラヴァストゥは、ネパール側ではないかと推理している。
ティラウラコット近くには、アショカピラーが残る遺跡があるほか、釈迦族が滅ぼされた地と推察される場所があるという。
法顕と玄奘のカピラヴァストゥについての記述は、かなり隔たりがあるが、法顕は、ティラウラコットを、玄奘は、ピプラワの方を訪問したのではないかと推理する。
ピプラワに向かう途中にあったガンワリアの遺跡についての説明があるのも嬉しい。今まで、この遺跡についての記述がある本に出会うことができていなかったからだ。
私は、各々の遺跡に1時間ぐらい滞在しただけなので、偉そうなことは言えないのだが、遺跡の大きさや、構造や(ブッダが街に出たと考えられる門の跡が発掘されているのが大きい)や、遺跡の周りの光景からは、ティラウラコットの方かなという印象を持っていた。
ピプラワの仏塔からは、舎利容器が発掘されているが、だから、ここがカピラヴァストゥだと断定できる証拠にはならない。領土問題ほどの話ではないが、印度側も、もうちょっと追加証拠を出して欲しいところだ。
なかなか決定的な証拠は出てこないだろうが、著者のように状況証拠を積み上げていくことにより、推論に厚みを増していくことはできる。
白黒だが、写真も豊富で、本トピックに興味をお持ちの方には、お勧めできる。
それにしても、ほとんど自費出版のようなものだろうが、本書をまとめられた小嶋氏に拍手である。