本書は、”ビートルズから始まる・・・”の続編。70年代のロックの名盤50枚について、中山さんらしい主観的な解説が加えられる。もちろんトリビアも満載。
70年代と言えば、私が、小学校高学年から、大学の前半までの時期で、一番ロックに興味があったころ。だから、本書の方が、”ビートルズから始まる・・・”より、よりINGなものとして読むことができる。
といっても、LPが2200円だった時代。本当に厳選してしかGETできず、あとは、友人と貸したり、借りたりして、聴いた。だから、50枚について全て精通している訳ではもちろんない。
本書を読んで、懐かしく思い出したことをちょっと。
S&Gでは、明日に架ける橋を取り上げているが、私が、最初に買ったLPは、日本独自の 2枚組LPだった。今では、ありえない編集版だが、今聴いてもベストアルバムになっている。彼らの名曲は、70年頃までには全て完成していた。
カーリーサイモンのうつろな愛は、大ヒットしたが、ミックジャガーやハリーニルソンの大きなサポートで生まれ変わり、完成したのだそうだ。あのベースは、クラウスフォアマン。彼女は今どうしているんだっけ?
リンゴスターのリンゴは、中古でGETしたが、ビートルズの他の4人が協力したということで、大きな話題になった。1973年のことだ。あの頃は、すぐにでも、再結成されるのではないかと、ワクワクしてたっけ?今から、考えると、まだ解散直後。いや、法律的には、まだ解散していなかった。
エルビスでは、アロハフロムハワイが取り上げられているが、これは、73年1月14日の、ハワイのコンサートのライブ盤だ。なぜ印象深いかというと、たぶんその日は、(仙台の)大崎八幡のどんと祭の日で、そこからあわてて帰って見たような記憶があるのだ。時間的に合わない気もするが、とっても寒い日だったのも覚えている。時間があったら、いつか調べてみよう。
デビッドボウイのアルバムは、2枚取り上げられているが、その内ヤングアメリカンズには、JLの2曲が取り上げられている。NYで二人は出会い、既にほぼ完成していたアルバムの最後にこの2曲が加えられたのだという。二人の交流は続き、最後に会ったのが、77年の香港。JLの悲劇の数日前にも、電話で話をしたという。
本書の最後は、80年代に入ってはいるが、ダブルファンタジー。ジョンの魂に始まり、ダブルファンタジーに終わる。本書も、コンセプト本になっている。
レコーディングに参加したミュージシャンの話によると、JLは、コンサートツアーに出ることを楽しみにしていたという。そして、ストロベリーフィールズフォーエバーをリメイクしたがっていたという。サイケ調から、シンプルで、パワフルなバージョンにリメイクしたかったのだという。聴いてみたかった。
最後に、中山さんらしいフレーズを。
”ロックの歴史は、70年代後半になって、振出しに戻ったような印象がある。とくにイギリスの状況は、ビートルズ上陸以前のアメリカに近いものがあったように思う。つまり、新しい世代には、「聴くべきロック」がなかった。60年代においては、多くの新人ミュージッシャンやグループが出現したが、70年代は、彼らミュージッシャンが高齢になり、(それでもまだ30代の「若さ」だったが)、加えてロックやポップスは完全に商業化され、きわめて消極的な意味で、音楽のジャンルは形骸化しつつあった。ロックは、内実ではなく商標のようなものになっていた。ローリング・ストーンズやボブ・ディランでさえ、新しい世代にとっては、”オールディーズ”として映っていたことだろう。”
高校入試の国語のテストに出てきそうな文章だが、結構私の感覚と重なる。世代がそう離れていないから当然か。
おいしい話が満載なので、79年代にロックと共に生きていた人に是非お勧めしたい本。