16期田代です。本日は、坂本光司著「日本でいちばん大切にしたい会社」を読んでの感想を述べさせていただきます。
本書では、会社経営とは「五人に対する使命と責任」を果たすための活動であり、そのような経営を行っている会社を「いい会社」と定義しています。
その「五人」とは誰かということと、その「使命と責任」を果たす順番が大切です。
1番、社員とその家族を幸せにする
2番、外注先・下請企業の社員を幸せにする
3番、顧客を幸せにする
4番、地域社会を幸せにし、活性化させる
5番、自然に生まれる株主の幸せ
一般的な経営論からすれば、顧客が1番大切と考えるところですが、本書では、お客様が感動するサービスや製品を生み出す社員の満足が1番大切と考えています。そして、外注先や下請企業は「社外社員」という考え方です。彼ら社員が会社に不平不満を持っていると、顧客に対する使命と責任を果たせないということです。そして顧客がいなければ、社員が新たな顧客を創造すればよいのです。
地域社会を幸せにし、活性化させるというのは、雇用や生産を通じて社会的貢献をするということに限らず、地域住民が誇りに思うような企業となることです。
これら1番から4番の満足度を高めることが、必然的に5番目の株主の満足度を高めることになります。
こうした業績や成長を後回しにするような考え方は、理想論であり現実的ではないという見方もできます。しかし、実際に本書の中で具体的な活動内容が紹介されている、上述の五人への使命と責任を果たしている企業は、会社を継続させるための業績や成長を手に入れています。
詳しい事例は省略させていただきますが、戦わない経営を貫いて48年間増収増益を果たした伊那食品工業や、3年間入院した社員に給料とボーナスを払い続けた樹研工業は、ともに社員の幸せを最優先に考えている企業であり、経営者の考え方に共感し、会社を信頼する社員によって支えられている会社です。
こうした考え方や活動は、社員の心を操る経営のテクニックのようにも思えるかもしれませんが、もし経営者が社員の心を操ろうと思っていたとしたら、いずれ見透かされて心が離れていくでしょうし、長く続けることはできないでしょう。経営者の信念を理解した社員がその考えを伝播して、会社全体がその理念を共有し、会社の文化として根付くことが重要です。一生懸命に働く社員が成長し、企業にとって欠かすことのできない人財に成長することが会社の長期的な成長の原動力となるのだと思います。
社員を幸せにしたいという信念と、どんなに業績が悪化しようとも、安易にリストラをせず、最後まで社員の雇用にこだわり、突破口を切り開く粘り強さと覚悟を、経営者がしっかりと持つことが、大企業であろうと中小企業であろうと、長く継続的に業績を上げ続けられる企業の条件なのだろうと思いました。そして、自分自身が経営者になったと仮定して、どのような経営理念を掲げるだろうかと、考えされられました。