在留期間更新不許可処分取消と法務大臣の裁量についての重要判例です。
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http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=53255&hanreiKbn=02
事件番号
昭和50(行ツ)120
事件名
在留期間更新不許可処分取消
裁判年月日
昭和53年10月04日
法廷名
最高裁判所大法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第32巻7号1223頁
原審裁判所名
東京高等裁判所
原審事件番号
昭和48(行コ)25
原審裁判年月日
昭和50年09月25日
判示事項
一 外国人のわが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利と憲法の保障の有無
二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断と法務大臣の裁量権
三 出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無についての判断と裁判所の審査の限界
四 わが国に在留する外国人と政治活動の自由に関する憲法の保障
五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障と在留の許否を決する国の裁量に対する拘束の有無
六 外国人の在留期間中の憲法の保障が及ばないとはいえない政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとした法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできないとされた事例
裁判要旨
一 外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。
二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は「法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすることが許されないものではない。
三 裁判所は、出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができる。
四 政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。
五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない。
六 上告人の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。
参照法条
憲法第3章,憲法19条,憲法21条,憲法22条1項,出入国管理令21条3項,行政事件訴訟法30条
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http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121437378050.pdf
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
第一 上告代理人秋山幹男、同弘中惇一郎の上告理由第一点ないし第四点、第六
点ないし第一一点について
一 本件の経過
(一) 本件につき原審が確定した事実関係の要旨は、次のとおりである。
(1) 上告人は、アメリカ合衆国国籍を有する外国人であるが、昭和四四年四月
二一日その所持する旅券に在韓国日本大使館発行の査証を受けたうえで本邦に入国
し、同年五月一〇日下関入国管理事務所入国審査官から出入国管理令四条一項一六
号、特定の在留資格及びその在留期間を定める省令一項三号に該当する者としての
在留資格をもつて在留期間を一年とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸した。
(2) 上告人は、昭和四五年五月一日一年間の在留期間の更新を申請したところ、
被上告人は、同年八月一〇日「出国準備期間として同年五月一〇日から同年九月七
日まで一二〇日間の在留期間更新を許可する。」との処分をした。そこで、上告人
は、更に、同年八月二七日被上告人に対し、同年九月八日から一年間の在留期間の
更新を申請したところ、被上告人は、同年九月五日付で、上告人に対し、右更新を
適当と認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとして右更新を許可しな
いとの処分(以下「本件処分」という。)をした。
(3) 被上告人が在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるもの
とはいえないとしたのは、次のような上告人の在留期間中の無届転職と政治活動の
ゆえであつた。
(ア) 上告人は、D語学学校に英語教師として雇用されるため在留資格を認め
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られたのに、入国後わずか一七日間で同校を退職し、財団法人E協議会に英語教師
として就職し、入国を認められた学校における英語教育に従事しなかつた。
(イ) 上告人は、外国人ベ平連(昭和四四年六月在日外国人数人によつてアメ
リカのベトナム戦争介入反対、日米安保条約によるアメリカの極東政策への加担反
対、在日外国人の政治活動を抑圧する出入国管理法案反対の三つの目的のために結
成された団体であるが、いわゆるベ平連からは独立しており、また、会員制度をと
つていない。)に所属し、昭和四四年六月から一二月までの間九回にわたりその定
例集会に参加し、七月一〇日左派華僑青年等が同月二日より一三日まで国鉄新宿駅
西口付近において行つた出入国管理法案粉砕ハンガーストライキを支援するため、
その目的等を印刷したビラを通行人に配布し、九月六日と一〇月四日ベ平連定例集
会に参加し、同月一五、一六日ベトナム反戦モラトリアムデー運動に参加して米国
大使館にベトナム戦争に反対する目的で抗議に赴き、一二月七日横浜入国者収容所
に対する抗議を目的とする示威行進に参加し、翌四五年二月一五日朝霞市における
反戦放送集会に参加し、三月一日同市の米軍基地キヤンプドレイク付近における反
戦示威行進に参加し、同月一五日ベ平連とともに同市における「大泉市民の集い」
という集会に参加して反戦ビラを配布し、五月一五日米軍のカンボジア侵入に反対
する目的で米国大使館に抗議のため赴き、同月一六日五・一六ベトナムモラトリア
ムデー連帯日米人民集会に参加してカンボジア介入反対米国反戦示威行進に参加し、
六月一四日代々木公園で行われた安保粉砕労学市民大統一行動集会に参加し、七月
四日清水谷公園で行われた東京動員委員会主催の米日人民連帯、米日反戦兵士支援
のための集会に参加し、同月七日には羽田空港においてロジヤース国務長官来日反
対運動を行うなどの政治的活動を行つた。なお、上告人が参加した集会、集団示威
行進等は、いずれも、平和的かつ合法的行動の域を出ていないものであり、上告人
の参加の態様は、指導的又は積極的なものではなかつた。
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(二) 原審は、自国内に外国人を受け入れるかどうかは基本的にはその国の自由
であり、在留期間の更新の申請に対し更新を適当と認めるに足りる相当の理由があ
るかどうかは、法務大臣の自由な裁量による判断に任されているものであるとし、
前記の上告人の一連の政治活動は、在留期間内は外国人にも許される表現の自由の
範囲内にあるものとして格別不利益を強制されるものではないが、法務大臣が、在
留期間の更新の許否を決するについてこれを日本国及び日本国民にとつて望ましい
ものではないとし、更新を適当と認めるに足りる相当な理由がないと判断したとし
ても、それが何ぴとの目からみても妥当でないことが明らかであるとすべき事情の
ない本件にあつては、法務大臣に任された裁量の範囲内におけるものというべきで
あり、これをもつて本件処分を違法であるとすることはできない、と判断した。
(三) 論旨は、要するに、(1) 自国内に外国人を受け入れるかどうかはその国
の自由であり、在留期間の更新の申請に対し更新を適当と認めるに足りる相当な理
由があるかどうかは法務大臣の自由な裁量による判断に任されているものであると
した原判決は、憲法二二条一項、出入国管理令二一条の解釈適用を誤り、理由不備
の違法がある、(2) 本件処分のような裁量処分に対する原審の審査の態度、方法
には、判例違反、審理不尽、理由不備の違法があり、行政事件訴訟法三〇条の解釈
の誤りがある、(3) 被上告人の本件処分は、裁量権の範囲を逸脱したものであり、
憲法の保障を受ける上告人のいわゆる政治活動を理由として外国人に不利益を課す
るものであつて、本件処分を違法でないとした原判決は、経験則に違背する認定を
し、理由不備の違法を犯し、出入国管理令二一条の解釈適用を誤り、憲法一四条、
一六条、一九条、二一条に違反するものである、と主張することに帰するものと解
される。
二 当裁判所の判断
(一) 憲法二二条一項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規
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定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していな
いものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負う
ものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、ま
た、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定す
ることができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される(
最高裁昭和二九年(あ)第三五九四号同三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻
六号一六六三頁参照)。したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を
保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続
き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。
そして、上述の憲法の趣旨を前提として、法律としての効力を有する出入国管理令
は、外国人に対し、一定の期間を限り(四条一項一号、二号、一四号の場合を除く。)
特定の資格によりわが国への上陸を許すこととしているものであるから、上陸を許
された外国人は、その在留期間が経過した場合には当然わが国から退去しなければ
ならない。もつとも、出入国管理令は、当該外国人が在留期間の延長を希望すると
きには在留期間の更新を申請することができることとしているが(二一条一項、二
項)、その申請に対しては法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相
当の理由があるときに限り」これを許可することができるものと定めている(同条
三項)のであるから、出入国管理令上も在留外国人の在留期間の更新が権利として
保障されているものでないことは、明らかである。
右のように出入国管理令が原則として一定の期間を限つて外国人のわが国への上
陸及び在留を許しその期間の更新は法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の
理由があると判断した場合に限り許可することとしているのは、法務大臣に一定の
期間ごとに当該外国人の在留中の状況、在留の必要性・相当性等を審査して在留の
許否を決定させようとする趣旨に出たものであり、そして、在留期間の更新事由が
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概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判
断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からである
と解される。すなわち、法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたつては、
外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗
の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立つて、申
請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・
経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしや
くし、時宜に応じた的確な判断をしなければならないのであるが、このような判断
は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなけ
ればとうてい適切な結果を期待することができないものと考えられる。このような
点にかんがみると、出入国管理令二一条三項所定の「在留期間の更新を適当と認め
るに足りる相当の理由」があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が
広汎なものとされているのは当然のことであつて、所論のように上陸拒否事由又は
退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許され
ないと解すべきものではない。
(二) ところで、行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を
定めることがあつても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保す
るためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則と
して当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。処分が違
法となるのは、それが法の認める裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に
限られるのであり、また、その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができ
るものであつて、行政事件訴訟法三〇条の規定はこの理を明らかにしたものにほか
ならない。もつとも、法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨、目的、範囲は各種の
処分によつて一様ではなく、これに応じて裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつ
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たものとして違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり、各種の処分ごとにこ
れを検討しなければならないが、これを出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣
の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断の
場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、
その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らか
である場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法とな
るものというべきである。したがつて、裁判所は、法務大臣の右判断についてそれ
が違法となるかどうかを審理、判断するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権
の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な
事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実
に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく
妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合
に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法である
とすることができるものと解するのが、相当である。なお、所論引用の当裁判所昭
和三七年(オ)第七五二号同四四年七月一一日第二小法廷判決(民集二三巻八号一
四七〇頁)は、事案を異にし本件に適切なものではなく、その余の判例は、右判示
するところとその趣旨を異にするものではない。
(三) 以上の見地に立つて被上告人の本件処分の適否について検討する。
前記の事実によれば、上告人の在留期間更新申請に対し被上告人が更新を適当と
認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとしてこれを許可しなかつたの
は、上告人の在留期間中の無届転職と政治活動のゆえであつたというのであり、原
判決の趣旨に徴すると、なかでも政治活動が重視されたものと解される。
思うに、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民
のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対し
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ても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治
的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認め
ることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相
当である。しかしながら、前述のように、外国人の在留の許否は国の裁量にゆだね
られ、わが国に在留する外国人は、憲法上わが国に在留する権利ないし引き続き在
留することを要求することができる権利を保障されているものではなく、ただ、出
入国管理令上法務大臣がその裁量により更新を適当と認めるに足りる相当の理由が
あると判断する場合に限り在留期間の更新を受けることができる地位を与えられて
いるにすぎないものであり、したがつて、外国人に対する憲法の基本的人権の保障
は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解する
のが相当であつて、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、
在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的
な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解するこ
とはできない。在留中の外国人の行為が合憲合法な場合でも、法務大臣がその行為
を当不当の面から日本国にとつて好ましいものとはいえないと評価し、また、右行
為から将来当該外国人が日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者であると
推認することは、右行為が上記のような意味において憲法の保障を受けるものであ
るからといつてなんら妨げられるものではない。
前述の上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて
直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。しかしながら、上告人
の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリ
カ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保
障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好
関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、
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当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとつて好ましいものでは
ないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を
行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由
があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠
き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他
に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたことをうかがわ
せるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分
を違法であると判断することはできないものといわなければならない。また、被上
告人が前述の上告人の政治活動をしんしやくして在留期間の更新を適当と認めるに
足りる相当の理由があるものとはいえないとし本件処分をしたことによつて、なん
ら所論の違憲の問題は生じないというべきである。
(四) 以上述べたところと同旨に帰する原審の判断は、正当であつて、所論引用
の各判例にもなんら違反するものではなく、原判決に所論の違憲、違法はない。論
旨は、上述したところと異なる見解に基づいて原判決を非難するものであつて、採
用することができない。
第二 同第五点について
原審が当事者双方の陳述を記載するにつき所論の方法をとつたからといつて、判
決の事実摘示として欠けるところはないものというべきであり、原判決に所論の違
法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 岡 原 昌 男
裁判官 江 里 口 清 雄
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裁判官 大 塚 喜 一 郎
裁判官 高 辻 正 己
裁判官 吉 田 豊
裁判官 団 藤 重 光
裁判官 本 林 讓
裁判官 服 部 高 顯
裁判官 環 昌 一
裁判官 栗 本 一 夫
裁判官 藤 崎 萬 里
裁判官 本 山 亨
裁判官岸盛一、同天野武一、同岸上康夫は、退官のため署名押印することができ
ない。
裁判長裁判官 岡 原 昌 男
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