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情報公開条例をたてに情報を出さない行政から、いかに公開を勝ち取るか(事例研究第2部問題1を例に)

2014-09-29 23:00:00 | 行政法学
(事例研究行政法「第二部第1問土地買収価格の公開をめぐる紛争」を題材に)
  
第1 設問1 

1、本件取消訴訟における原告Xの違法性の主張について

(1)条例8条1項4号該当性について
 Xがなした道路拡幅工事用地として買収した土地に関して作成された文書P(以下、「同文書」という。)の公開をもとめたところ、Yは、「各土地の買収価格と単価」(以下、「本件非公開部分」という。)が、条例8条1項4号に該当するとして、非公開とした。
 同号には、「当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」と規定があるものの、①当該事務は、すでに土地を買収し目的を達成した結果としての情報であるし、また、②同種の事務として、道路拡張工事の他の地域の買収を考えたとしても、その地域の土地の価格はその地域の周辺地域の類似の土地の地価によって定まる損失補償基準が用いられているものであって、非公開とした土地の買収価格が公開されたからと言っても、目的が達成できなくなることや、著しい支障が及ぼされるとまでは言えない。
 従って、同号に該当せず、本件非公開処分は、取り消されるべきである。


(2)条例11条1項該当性について
 また、たとえ条例8条1項4号に該当する情報であったとしても、条例11条1項では、「公益上特に必要があると認めるとき」は、公開することを定める。
 本件非公開部分の情報は、道路拡幅工事において適正な価格で土地が買収されたかを示すもので、適正な公金支出がなされていることを知るために、公益上特に必要があると言える。
 従って、同項に該当し、本件非公開処分は、取り消されるべきである。


(3)手続法上の違法性について
 非公開処分においては、理由付記義務が定められている(条例13条3項)。すなわち、非公開決定には理由を付さなければならない。
 本件では、単に該当する条文を指摘するだけであり、具体的に非公開事由に該当することの説明がなく、十分な理由の付記がない。
 従って、非公開処分は、適切な手続きに則らずになされており、説明責任を果たすことで県民の県政への参加を推進し、県民の県政への信頼を深めるという情報公開条例の趣旨(条例1条参照)に大きく反し、条例13条3項1号違反であるが故に、本件非公開処分は、取り消されるべきである。



2、本件取消訴訟における被告行政Yの非公開処分の適法性の主張について

(1)条例8条1項4号該当性について
 公共事業用地の買収は、土地を手放したくない土地所有者に対して公共事業への理解を求め、何度も足を運んで納得してもらって買収に至るという説得に時間を要する事務であり、買収価格が明らかになると、今後同種の公共事業について買収交渉をする際にも困難が予想される。特に、道路Qの拡幅工事において、買収はほとんど終わっていたが、一部にまだ交渉中の土地も残っており、さらに、今後同種の道路工事を近くでも予定している状況であった。
 ①公共事業用地の買収という事務の特性を鑑みると、本件非公開部分の公開により、土地所有者は、同じ道路Qの拡幅工事であるというだけで、公開された土地価格と自らの土地の価格を土地の特性など考慮に入れることなく単純に比較することとなり、両者の差が大きい場合において、買収の説得作業が難航する可能性があるのであって、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなるか、又は著しく支障が来されることになるおそれがある。
 また、②今後、同種の道路事業が計画されており、買収価格が公開されると、それら事業における土地買収の交渉にも同様に支障を来すことが考えられる。
 従って、同号に該当し、非公開処分は、適法である。

(2)条例11条1項該当性について
 条例11条の公益上の判断には、行政に裁量が与えられている。
 本件非公開部分の情報は、個別の土地の値段であって、公益上特に重要なものとはいえないと判断することは、裁量権の逸脱濫用とまでは言えない。
 道路Qの拡幅工事への公金支出の適正をみるのであれば、別途、決算資料で把握すればよいわけであって、その点からも公益上特に重要なものとは言えない。
 従って、同行に該当せず、非公開処分は、適法である。

(3)手続法上の違法性について
 本件の場合は、該当条項から買収事務への支障という非公開理由は十分に理解できるのであり、手続法上の違法性はない。


3. 証明責任について
 条例は、6条で、何人も、行政文書の公開を請求することができるとしており、不開示情報に該当しない限り、原則公開であるという考え方となっている。非公開情報であることの証明責任を果たさねば公開になることからすると、その証明責任は、被告行政側にあることとなる。
 また、対象公文書を現実に所持するのは、行政であり、その内容を判断できるのも行政であるから、証明責任は行政側にある。


第2 設問2

1, 本件取消訴訟の段階における理由の追加・差し替えを否定する考え方について
 条例は、非公開処分において、理由付記を義務づけている。もし、訴訟の段階で処分時には主張されなかった理由を持ち出すことを許せば、条例が理由付記を定めた趣旨に反する結果となる。
 従って、許されない。

2, 本件取消訴訟の段階における理由の追加・差し替えを肯定する考え方について
 本件訴訟の訴訟物は、処分の違法性一般であり、処分の違法性を支える理由は、口頭弁論終結時まで自由に主張できるというのが、民事訴訟法上の原則であるからである。
 また、あらたな理由に基づいて再度非公開処分がなされるとすると、再度その処分の取消し訴訟が提起されることがありえ、訴訟経済において大いに不利益である。紛争の一回的解決の要請から、理由の追加・差し替えは許すべきである。


3, 非公開処分の取消し訴訟に加えて、公開処分の申請型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)が併合提起された場合に、理由の追加・差し替えの判断はどうなるかについて
 取消訴訟では、裁判所は非公開処分の理由として上げられた不開示情報該当性の有無についてだけ判断することが求められている。
 一方、義務付け訴訟の場合には、裁判所は、文書を公開すべきか否かを判断すべき要素をすべて考慮した上で判断すべきことが求められている(行訴法37条の3第5項本案勝訴要件)。行政庁が、新たな非公開理由を主張してきた場合は、それを審理判断することが当然に求められることとなる。
 取消訴訟では、前述の第2,1及び第2,2のよう理由の追加・差し替えは当然には認められない。


4, 本件取消訴訟で、新たな理由の追加が認められる状況で、「条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」という当初の非公開理由が認められず、取消訴訟が認容されることになった場合に、新たな理由に基づいて、再度非公開決定を出すことはできるかについて、

 非公開処分の取消判決が出た場合、行訴法33条2項は、「改めて申請に対する処分」をしなければならないこととなる。
 その場合、訴訟で争われなかった新たな理由に基づいて非公開処分をすることは、民事訴訟法上の既判力は、判決の理由中の判断には及ばないことから、可能である。
 ただし、原告の手続的権利保障から、処分段階において容易に主張できた理由については、主張できないと考えるべきである。すでに行われた取消訴訟において主張できた理由を、その時に主張せず、再度の非公開処分で主張することは、信義則に反し許されないからである。


第3、関連問題1 非公開から公開にYの姿勢が変わる場合に、土地所有者が非公開を維持してほしいと考えた場合。

1、 本件取消訴訟において、Aの主張を反映する法的手段について
 A自身も、本件取消訴訟に参加することが可能になれば、自らの主張を反映することができる。
 訴訟参加として、独立当事者参加(民訴法47条1項)または、共同訴訟参加(民訴法52条1項)が、考えられる。
 行訴法上は、22条に規定がある。

2、 Aがとりうる法的手段について
(1)差止め訴訟について
 非公開処分が取り消されることは、処分性があり、よって、非公開処分の取消処分の差し止め訴訟を提起することができると考える(行訴法3条2項7号、37条の4)。
 しかし、公開決定の処分後2週間の期間をおくことが定められており(条例17条2項3号)、「重大な損害を生じるおそれ」の要件を満たさず、差止め訴訟は却下される可能性がある。

(2)反対意見書を提出してからの手続きに従う(17条)

 
以上

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