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民法534条肝に銘じる。契約で両当事者無責で履行不能の場合、リスクは買主(債権者)が負う。

2012-05-22 09:38:12 | シチズンシップ教育
 民法は、たいへんよくできていると思うところもある反面、気をつけて臨まねばならない条文もございます。
 民法534条は、たいへん気をつけて臨まねばならない条文のひとつなのではないでしょうか。


******民法*******
(債権者の危険負担)
第五百三十四条  特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2  不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
***************

 特定物とは、取引の当事者が、その物の個性に着目して取引の対象としたもの。例えば、不動産、特定の絵画など。

 不特定物とは、その物の種類に着目して取引の対象とした物。例えば、ある銘柄のビール1本など。


 534条1項をそのまま、読むと、

 不動産(特定物に関する物権)の設定又は移転を売買契約(双務契約)の目的とした場合において、その不動産(物)が売主(債務者)の責めに帰することができない事由(=大震災)によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、買主(債権者)の負担に帰する。


 もう一度、書くと、

 「不動産の設定又は移転を売買契約の目的とした場合において、その不動産が大震災によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、買主の負担に帰する。」


 具体的に、例を挙げて書くと、

 6/1に、不動産の売買契約が成立し、7/1に引き渡すことになっていた。そしたら、6/2に大地震で、その土地、建物が土砂崩れで、壊れてしまった。その場合でも、買主がそのことの負担(リスク負担)を一切負うことになります。
 すなわち、代金は、買主が、何もなかったのと同じように満額払うことになります。

 ちなみに、5/31に火事で、その建物が焼失していた場合は、契約成立時点で、土地建物の引き渡しが実現不可能であり不成立です。その場合は、対価的関係に立つ他方の代金支払いも不成立と考え、契約自体が無効となります。よって、当然のことながら、買主は、購入代金を払わなくて済みます。



 契約成立後は、買主にとっては、一見、たまらないという内容が、民法に含まれていることになります。

 何を根拠に妥当とするのか。

 「利益の存するところに危険あり」が根拠の考え方になっています。

 
 よって、買主にとっては、不動産売買でいえば、引き渡し、登記、代金支払いのいずれかか、支配可能性が買主に認められる段階で、そのリスク負担は買主にうつるということを肝に銘じなければなりません。

 民法では、履行不能により当事者の一方の債務が消滅した場合のリスクを、消滅した債務(土地建物を引き渡す債務)の債務者(売主)が負う(対価関係の債務も消滅する)のか(「債務者主義」)、債権者(買主)が負う(対価関係の債務は消滅しない)のか(「債権者主義」)が問題になりますが、上述したように、結局、債権者(買主)がリスクを負うことが、534条で規定されていることになります。
 私たちは、「債権者主義」に立たされているわけです。

 民法「取引法」で、大事な争点、「危険負担」の話題より。
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