今回の「国葬」に関し、歴史社会学者小熊英二氏が分析されています。
大平氏以降は、『内閣・自民党合同葬』が慣例としてなされてきた。国費半額負担にしているのは、佐藤氏の前例踏襲という以外の理由がよくわからず、実質的には、『自民党葬』に国費から半額補助しているのと変わらない。『政権党による国費の私物化』がなし崩しに慣例化されてきた。
それを今回、安倍氏では、国葬という形で、いわば『私物化』を、理由や法的根拠がないまま一段階引き上げた。
その決定においては、安倍派への配慮という自民党の党内政治で決まったことが『私物化』の極みであるし、内閣法制局はじめ官僚が止めなかったことが懸念される(同様なことが国の政策全般でおきないか)と分析されています。
私も、官僚のチェック機能は、働かせるべきところはきちんと働かせることがとても大事であると考えます。
朝日新聞2022.9.17:https://digital.asahi.com/articles/ASQ9H4DS6Q9GUCVL01W.html
*****要点抜粋****
●吉田茂氏の国葬:1967年、死去後11日で実施。
*全額国費。
*戦前の国葬令は1947年に失効、最大野党の社会党は吉田氏の国葬を前例としないよう申し入れ。
*1965年に英国のチャーチル元首相、1967年に西独のアデナウアー元首相の国葬
●佐藤栄作氏(在任期間が戦後最長、ノーベル平和賞受賞)の国民葬:1975年、死去後13日で実施。
*国が半額負担、国庫と自民党で折半。1922年に大隈重信が民間有志による『国民葬』になったという先例をもとに、国民の葬儀に国費で半額を補助する『準国葬』という形式をとった。
●大平正芳氏の合同葬(『内閣・自民党合同葬』):1980年、死去後約1カ月後(衆参ダブル選挙期間中の急死)。
*佐藤氏のときに前例になった半額補助方式が引き継がれた。
*前例へ:1987年に岸信介氏が死去した時も、死去後1カ月半あけて合同葬。この後は自民党の首相経験者が死去すると、1カ月から2カ月後に国費で半額負担して、内閣と自民党の合同葬を行うことがほぼ慣例。
●安倍晋三氏の国葬:2022年、死去後2カ月
*岸田首相は、政府単独の国の儀式としてなら閣議決定で国葬は可能だとする内閣法制局の報告に基づいて決めたと報じられています。しかし吉田氏の国葬実施が難航し、佐藤氏を国葬にできなかった経緯を考えれば、閣議決定だけで『国葬』という名称を冠した国の儀式を実施するのはリスクが大きい。
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