「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方 ―医療現場の混乱を回避し、重症例を救命するためにー

2020-04-17 17:35:13 | 各論:新型インフルエンザに備える

 PCR実施における専門家の皆様の考え方。

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http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_rinsho_200402.pdf

新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方
―医療現場の混乱を回避し、重症例を救命するためにー

 新型コロナウイルス感染症の爆発的増加と蔓延が世界中で進行する中で、日本おいては 4 月 1 日
現在、何とか持ちこたえているという状況が続いています。行政・専門家委員会によるリーダーシップに
加え、医療現場の先生方のご尽力、一般市民の方々の行動変容によるご協力の成果と理解しています。
しかし一方で、ここ 1-2 週間で複数の地域での感染爆発のリスク上昇が報じられる状況になってきまし
た。日本感染症学会、日本環境感染学会としては、重症者の命を守ることを第一に、医療機関の混乱
を減らすための軽症者の自宅待機の促進、感染者への差別が起きないよう、また医療従事者の心のケ
アに配慮した対応を進めていきたいと考えています。国内における新型コロナウイルス感染症者が
2,000 人を超えようとする状況となり、感染症病棟のベッドの占拠率が高まっていく中で、感染症診療の
在り方を柔軟かつ適正に変えていくことが必要になります。

 以下の方針はこれからの診療体制の変化の方向性を示しています。すでに実行されている項目に加
え、今後対応が求められる項目も記載させていただきました。行政に対して医療現場の声をしっかりと
届けていけるように、何よりも感染患者の命を守る医療が継続できるように、引き続きご理解とご協力を
宜しくお願いいたします。

1.新型コロナウイルス感染症に対する検査
ž
 PCR 法等による遺伝子検出法(鼻咽頭ぬぐい液、あるいは喀痰)に加えイムノクロマト法による抗体検
出法(血液、血清)の利用が検討されている。
 イムノクロマト法による抗体検査は発症から 2 週間以上経過し、上気道でのウイルス量が低下し PCR
法による検査の感度が不十分であることが想定される症例に対する補助的な検査として用いることが
望ましい。
ž 地域の流行状況によるが、PCR 検査の原則適応は、「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺
炎を強く疑う症例」とする。軽症例には基本的に PCR 検査を推奨しない。時間の経過とともに重症化
傾向がみられた場合には PCR 法の実施も考慮する。
 指定医療機関だけでなく、全ての医療機関において医師の判断において検査が行える体制を整える。
ž  抗体測定法を用いて、地域の感染率(既感染)に関するサーベイランスを実施する。


2.軽症例を受け入れる施設の認定および自宅安静の判断
ž 感染症指定医療機関のベッドが重症例で満床になるような場合には、軽症例を受け入れる指定医療
機関以外の施設を用意する必要がある。特に、新型インフルエンザ等特別措置法に規定されている、
 指定公共機関や指定地方公共機関に該当する医療機関は、事前に作成した BCP に基づき、診療
体制の変更を行い、地域全体での診療体制を調整する必要がある。それでもベッドが不足する事態
が想定される場合には自宅安静の選択肢も考慮する
ž 全身状態が良好で、胸部画像、血液検査からも軽症と考えられる臨床診断例(イムノクロマト法陽性例)
で、基礎疾患の有無などからも入院は必要ないと判断される症例は自宅安静で対応することも考える。
ž ただし、高齢、基礎疾患の存在、独居などの要因から重症化が予測される場合には入院とする
ž 自宅安静となった患者に対して、1 日 1 回電話連絡による健康状態の確認ができるような体制を確立
する(体温測定、食欲、だるさなどを 2 週間)。症状の悪化がみられた場合には、医療機関と連絡を取
りながら、飛沫・接触感染防止策を徹底した上で公共交通機関を使わない方法での受診をお願いす
る。
 自宅安静となった場合、家族内での感染が広がらないよう、こまめな換気に加え飛沫・接触感染対策
の徹底を指導する。家族に感染症状がみられた場合には速やかに医療機関に連絡するように説明す
る。
ž 外来(開業医などの)オンライン診療と処方、保険診療の認可について検討する

3.重症例を見逃さない、救命のための対応
  肺炎画像の広がりの程度、低酸素血症の存在、血液検査異常(リンパ球減少、血小板減少、CRP 高
値など)などを指標に重症化を察知し対応する。
ž 長引く倦怠感、食欲不振、高熱の持続なども参考に重症例を見逃さないように対応する。
  低酸素血症が強く、酸素化が維持できないような症例に対しては人工呼吸器装着、膜型人工肺
(ECMO)などの適応も考慮する。ECMO は限られた施設で行われる対処法であり、その導入に関し
ては日本感染症学会ホームページの情報を参考に専門機関と相談する。

4.治療法の選択
ž 現時点での特異的な治療薬はないことから対症療法が中心となる。
ž アビガン、クロロキン、オルベスコ、カレトラなどの薬剤の有効性が報告されているが、確立した治療法
ではない。現在、日本感染症学会も関与して臨床試験が進行中である(アビガン、オルベスコについ
ては学会ホームページ参照、問合先:covid-19@fujita-hu.ac.jp)。これら薬剤は適応外となるが、そ
の早期使用の必要性も含めて議論されている。
ž 日本感染症学会ホームページで公開されている症例報告の治療経験を参考にする。
ž 挿管期間が長くなる場合には2次性の細菌性肺炎の合併率が上昇することにも留意する。

5.退院基準と退院後のフォローアップ
ž 全身状態および呼吸器症状が改善し、血液検査および画像所見の改善をもって退院を考慮する。
ž 症状の軽快後も PCR 検査の陽性が持続する症例を考慮し、症状の改善を指標とする退院基準を考
える必要がある。
ž 退院後も 2 週間は電話連絡などによる健康チェックを行う。この間はできるだけ外出を控えるように指
導する。

6.海外からの帰国者への対応
ž 海外からの帰国者に関連した症例の急激な増加が認められている。
ž 海外からの帰国者は、無症状であっても基本的に 2 週間は自宅待機とする。発熱、呼吸器症状など
がみられた場合には帰国者・接触者相談センターに連絡する。
ž 帰国時に症状がある場合には帰国者・接触者外来への受診へ誘導する。その後の対応は上記に従う。


7 感染者および医療従事者に対する精神的ケアの必要性
ž 感染者が退院したのち、あるいは 2 週間の観察期間の中で、地域の中で差別が生じていないかどう
か、電話連絡などで確認する体制が必要となる。
ž 医療従事者は、診療・感染対策にあたって細心の注意を払っていることもあり、強い精神的ストレスを
受けていることが多い。新型コロナウイルス感染症の診療・感染対策に従事している者に対しては、精
神科医・産業医などによる定期的なこころのケアを受けられるシステムを構築しておく必要がある。

2020 年 4 月 2 日
一般社団法人日本感染症学会
理事長 舘田 一博
一般社団法人日本環境感染学会
理事長 吉田 正樹


*************上記提言を理解するために***********************
その1:https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14225

【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:指定感染症であることによる混乱の可能性」浅香正博

No.5004 (2020年03月21日発行) P.59

浅香正博 (北海道医療大学学長)

登録日: 2020-03-10

最終更新日: 2020-03-10

 


中国の武漢で始まった新型コロナウイルス感染症は中国本土を越えてわが国や韓国にまで波及し、さらに全世界に広がりを見せている。医療従事者の一人として私もわが国での新型コロナウイルス感染の広がりを憂えている。この感染症は無症候性キャリアの存在が明らかになった時点できわめて予防しにくい感染症となった。さらに1月28日、政府が本感染症を「指定感染症」に指定したことにより、医療現場では季節性インフルエンザの診療よりはるかに煩雑なものとなっている。

この感染症の診断はPCR検査によって行われている。PCR検査は感度については良好であるが、鼻咽頭粘膜などの検体採取部にウイルスが存在しない場合、感度をいくら上げても陰性と出る可能性が大きい。そのため検査陽性の場合は感染ありと断定できるが、陰性の場合は信用ができない可能性がある。PCR検査を希望者全員に行うことは感染者の数を著しく増やすことにつながると考えられる。この場合、無症状や軽度の症状の人もまとめて新型コロナウイルス感染症と診断されるので、指定感染症である以上、原則的には入院隔離措置が執られることになる。そうすると、感染症指定医療機関ではない一般の医療施設でも入院させざるを得ない状況になり、逆に院内感染を拡大させる可能性が増してくる。いつの日か、本感染症を指定感染症から解除する時がやってくると思われるが、そうなってくれると通常のインフルエンザと同様に軽症の場合は自宅待機を勧めることが可能になり、医療における混乱が生じる可能性は減少する。

個人的な意見になるが、これからの1カ月間の感染の動向により新型コロナウイルス感染症への基本方針が大きく変わる可能性が高いと考えている。新規感染者より回復者の方が多くなれば指定感染症の枠から外し、季節性インフルエンザと同じ診療方針で行えばよい。新規感染者がなお回復者を大きく上回っているのであれば、感染ルート探索のために全力を挙げ、個別の調査により感染源を完璧に絶たなければいけない。結果が前者であってほしいと強く望んでいる。

浅香正博(北海道医療大学学長)[新型コロナウイルス感染症]

 

 

その2:
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200417-00010000-jij-sctch&p=1

PCR検査、軽症者に推奨せず―新型コロナ  感染2学会「考え方」まとめる

4/17(金) 11:43配信

診断に使われるPCR検査の様子=AFP時事

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、政府は7都府県だった緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大した。日本感染症学会と日本感染環境学会は、感染症診療のあり方を変えていく必要があるとして、診療に携わる臨床現場などに向けて「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方」を発表した。ポイントの一つが、軽症の患者に対してはPCR検査を勧めていないことだ。さらに、医療崩壊を防ぐために重症患者の治療に特化することを提言している。

 ◇治療のあり方柔軟に

 「考え方」では現状を踏まえ、感染者が感染症病棟のベッドを占拠する率が高まっていく中で感染症診療の在り方を柔軟かつ適正に変えていくことが必要だとしている。

 感染の有無の判定に欠かせない一方で、「検査を受けさせてもらえない」といった批判が続くPCR検査を最初に取り上げた。

 検査対象を改めて「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例」と規定。同時に「軽症患者」に対しては、現状の帰国者・接触者相談センターを介した検査体制の中では「基本的にPCR検査を推奨しない」と明記した。

舘田一博・日本感染症学会理事長

 ◇危惧された医療資源の逼迫

 「考え方」をまとめた感染症学会理事長の舘田一博東邦大学教授(感染症)は「流行がまん延期を迎えた現在、限られた資源は生命の危機に陥る可能性が高い重症者に集中的に投入すべきだ」と指摘する。ただし、診断に携わった医師が必要と判断する症例に対しては、帰国者・接触者相談センターを介さずに検査を依頼できる仕組みを構築する必要があると考えている。疑いが生じた患者に対しては、安全に検体を採取し一般の検査センターで検査できる体制にシフトしていくことが望ましいとしている。

 その上で「院内感染の疑いがある場合などはPCR検査を実施して感染拡大防止に努めてほしい」と話している。

 感染拡大初期から「風邪の症状だが、新型コロナではないか」といって検査を求める声が殺到したという事情がある。舘田理事長は「不安な気持ちは分かるが、治療法もなく、軽症でも入院が必要になるなど、医療資源を逼迫(ひっぱく)させてしまう可能性が学会では危惧されていた」と言う。

 患者が急増した東京都などでは、病床の確保が難しくなったため、軽症や無症状患者は自宅や自治体が借り上げたホテルなどで療養してもらう対策を講じた。

 舘田理事長は「専門医療機関が重症患者を受け入れる能力を維持するには欠かせない措置」と評価した上で、「今後の問題は、医療機関はもちろんだが、これらの借り上げたホテルや在宅で療養している患者の診療に使う検査器具や医療用マスクなどの資材と感染症にある程度慣れた人材を確保して、必要に応じて配分していくこだ」と指摘する。

 入院以外の場合でも2週間にわたって1日1回は電話で体温の変動、食欲や倦怠感の有無、健康状態を確認し、症状が悪化した場合は医療機関と連絡を取りながら感染防止策を徹底し、受診できる態勢が必要、としている。

 

◇最優先は重症患者の救命

 同時に「考え方」で強調されているのが、肺炎などを発症した重症患者の早期発見と医療的な対応のあり方だ。重症化の指標としてはCT検査による肺炎を疑われる画像の広がりの程度、血液中の酸素量の減少、血液検査でのリンパ球や血小板の減少、炎症を示す検査数値の上昇などを挙げている。

 舘田理事長は「この病気は急速に症状が悪化することもある。長引く倦怠感や食欲不振といった自覚症状、高熱の持続なども合わせて、診療に携わる側は経過観察中でもこれらの項目の変化を注意深く見守ってほしい」と話す。

 舘田理事長は「感染者の8割が軽症ですむことを考えれば、重要なのは重症化した患者を救命することに尽きる。現在亡くなられた方の数は欧米に比べてかなり少ない数字に抑えられている。感染経路の解明とともに、重症者を発見して対処し治療することを最優先すべきだ」と訴えている。(喜多宗太郎・鈴木豊)

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