在留期間更新不許可処分取消と法務大臣の裁量についての重要判例です。
*********************************
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=53255&hanreiKbn=02
事件番号
昭和50(行ツ)120
事件名
在留期間更新不許可処分取消
裁判年月日
昭和53年10月04日
法廷名
最高裁判所大法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第32巻7号1223頁
原審裁判所名
東京高等裁判所
原審事件番号
昭和48(行コ)25
原審裁判年月日
昭和50年09月25日
判示事項
一 外国人のわが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利と憲法の保障の有無
二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断と法務大臣の裁量権
三 出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無についての判断と裁判所の審査の限界
四 わが国に在留する外国人と政治活動の自由に関する憲法の保障
五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障と在留の許否を決する国の裁量に対する拘束の有無
六 外国人の在留期間中の憲法の保障が及ばないとはいえない政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとした法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできないとされた事例
裁判要旨
一 外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。
二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は「法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすることが許されないものではない。
三 裁判所は、出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができる。
四 政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。
五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない。
六 上告人の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。
参照法条
憲法第3章,憲法19条,憲法21条,憲法22条1項,出入国管理令21条3項,行政事件訴訟法30条
****************************
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121437378050.pdf
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
第一 上告代理人秋山幹男、同弘中惇一郎の上告理由第一点ないし第四点、第六
点ないし第一一点について
一 本件の経過
(一) 本件につき原審が確定した事実関係の要旨は、次のとおりである。
(1) 上告人は、アメリカ合衆国国籍を有する外国人であるが、昭和四四年四月
二一日その所持する旅券に在韓国日本大使館発行の査証を受けたうえで本邦に入国
し、同年五月一〇日下関入国管理事務所入国審査官から出入国管理令四条一項一六
号、特定の在留資格及びその在留期間を定める省令一項三号に該当する者としての
在留資格をもつて在留期間を一年とする上陸許可の証印を受けて本邦に上陸した。
(2) 上告人は、昭和四五年五月一日一年間の在留期間の更新を申請したところ、
被上告人は、同年八月一〇日「出国準備期間として同年五月一〇日から同年九月七
日まで一二〇日間の在留期間更新を許可する。」との処分をした。そこで、上告人
は、更に、同年八月二七日被上告人に対し、同年九月八日から一年間の在留期間の
更新を申請したところ、被上告人は、同年九月五日付で、上告人に対し、右更新を
適当と認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとして右更新を許可しな
いとの処分(以下「本件処分」という。)をした。
(3) 被上告人が在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるもの
とはいえないとしたのは、次のような上告人の在留期間中の無届転職と政治活動の
ゆえであつた。
(ア) 上告人は、D語学学校に英語教師として雇用されるため在留資格を認め
- 1 -
られたのに、入国後わずか一七日間で同校を退職し、財団法人E協議会に英語教師
として就職し、入国を認められた学校における英語教育に従事しなかつた。
(イ) 上告人は、外国人ベ平連(昭和四四年六月在日外国人数人によつてアメ
リカのベトナム戦争介入反対、日米安保条約によるアメリカの極東政策への加担反
対、在日外国人の政治活動を抑圧する出入国管理法案反対の三つの目的のために結
成された団体であるが、いわゆるベ平連からは独立しており、また、会員制度をと
つていない。)に所属し、昭和四四年六月から一二月までの間九回にわたりその定
例集会に参加し、七月一〇日左派華僑青年等が同月二日より一三日まで国鉄新宿駅
西口付近において行つた出入国管理法案粉砕ハンガーストライキを支援するため、
その目的等を印刷したビラを通行人に配布し、九月六日と一〇月四日ベ平連定例集
会に参加し、同月一五、一六日ベトナム反戦モラトリアムデー運動に参加して米国
大使館にベトナム戦争に反対する目的で抗議に赴き、一二月七日横浜入国者収容所
に対する抗議を目的とする示威行進に参加し、翌四五年二月一五日朝霞市における
反戦放送集会に参加し、三月一日同市の米軍基地キヤンプドレイク付近における反
戦示威行進に参加し、同月一五日ベ平連とともに同市における「大泉市民の集い」
という集会に参加して反戦ビラを配布し、五月一五日米軍のカンボジア侵入に反対
する目的で米国大使館に抗議のため赴き、同月一六日五・一六ベトナムモラトリア
ムデー連帯日米人民集会に参加してカンボジア介入反対米国反戦示威行進に参加し、
六月一四日代々木公園で行われた安保粉砕労学市民大統一行動集会に参加し、七月
四日清水谷公園で行われた東京動員委員会主催の米日人民連帯、米日反戦兵士支援
のための集会に参加し、同月七日には羽田空港においてロジヤース国務長官来日反
対運動を行うなどの政治的活動を行つた。なお、上告人が参加した集会、集団示威
行進等は、いずれも、平和的かつ合法的行動の域を出ていないものであり、上告人
の参加の態様は、指導的又は積極的なものではなかつた。
- 2 -
(二) 原審は、自国内に外国人を受け入れるかどうかは基本的にはその国の自由
であり、在留期間の更新の申請に対し更新を適当と認めるに足りる相当の理由があ
るかどうかは、法務大臣の自由な裁量による判断に任されているものであるとし、
前記の上告人の一連の政治活動は、在留期間内は外国人にも許される表現の自由の
範囲内にあるものとして格別不利益を強制されるものではないが、法務大臣が、在
留期間の更新の許否を決するについてこれを日本国及び日本国民にとつて望ましい
ものではないとし、更新を適当と認めるに足りる相当な理由がないと判断したとし
ても、それが何ぴとの目からみても妥当でないことが明らかであるとすべき事情の
ない本件にあつては、法務大臣に任された裁量の範囲内におけるものというべきで
あり、これをもつて本件処分を違法であるとすることはできない、と判断した。
(三) 論旨は、要するに、(1) 自国内に外国人を受け入れるかどうかはその国
の自由であり、在留期間の更新の申請に対し更新を適当と認めるに足りる相当な理
由があるかどうかは法務大臣の自由な裁量による判断に任されているものであると
した原判決は、憲法二二条一項、出入国管理令二一条の解釈適用を誤り、理由不備
の違法がある、(2) 本件処分のような裁量処分に対する原審の審査の態度、方法
には、判例違反、審理不尽、理由不備の違法があり、行政事件訴訟法三〇条の解釈
の誤りがある、(3) 被上告人の本件処分は、裁量権の範囲を逸脱したものであり、
憲法の保障を受ける上告人のいわゆる政治活動を理由として外国人に不利益を課す
るものであつて、本件処分を違法でないとした原判決は、経験則に違背する認定を
し、理由不備の違法を犯し、出入国管理令二一条の解釈適用を誤り、憲法一四条、
一六条、一九条、二一条に違反するものである、と主張することに帰するものと解
される。
二 当裁判所の判断
(一) 憲法二二条一項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規
- 3 -
定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していな
いものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負う
ものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、ま
た、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定す
ることができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される(
最高裁昭和二九年(あ)第三五九四号同三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻
六号一六六三頁参照)。したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を
保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続
き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。
そして、上述の憲法の趣旨を前提として、法律としての効力を有する出入国管理令
は、外国人に対し、一定の期間を限り(四条一項一号、二号、一四号の場合を除く。)
特定の資格によりわが国への上陸を許すこととしているものであるから、上陸を許
された外国人は、その在留期間が経過した場合には当然わが国から退去しなければ
ならない。もつとも、出入国管理令は、当該外国人が在留期間の延長を希望すると
きには在留期間の更新を申請することができることとしているが(二一条一項、二
項)、その申請に対しては法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相
当の理由があるときに限り」これを許可することができるものと定めている(同条
三項)のであるから、出入国管理令上も在留外国人の在留期間の更新が権利として
保障されているものでないことは、明らかである。
右のように出入国管理令が原則として一定の期間を限つて外国人のわが国への上
陸及び在留を許しその期間の更新は法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の
理由があると判断した場合に限り許可することとしているのは、法務大臣に一定の
期間ごとに当該外国人の在留中の状況、在留の必要性・相当性等を審査して在留の
許否を決定させようとする趣旨に出たものであり、そして、在留期間の更新事由が
- 4 -
概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判
断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からである
と解される。すなわち、法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたつては、
外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗
の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立つて、申
請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・
経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしや
くし、時宜に応じた的確な判断をしなければならないのであるが、このような判断
は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなけ
ればとうてい適切な結果を期待することができないものと考えられる。このような
点にかんがみると、出入国管理令二一条三項所定の「在留期間の更新を適当と認め
るに足りる相当の理由」があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が
広汎なものとされているのは当然のことであつて、所論のように上陸拒否事由又は
退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許され
ないと解すべきものではない。
(二) ところで、行政庁がその裁量に任された事項について裁量権行使の準則を
定めることがあつても、このような準則は、本来、行政庁の処分の妥当性を確保す
るためのものなのであるから、処分が右準則に違背して行われたとしても、原則と
して当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。処分が違
法となるのは、それが法の認める裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に
限られるのであり、また、その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができ
るものであつて、行政事件訴訟法三〇条の規定はこの理を明らかにしたものにほか
ならない。もつとも、法が処分を行政庁の裁量に任せる趣旨、目的、範囲は各種の
処分によつて一様ではなく、これに応じて裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつ
- 5 -
たものとして違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり、各種の処分ごとにこ
れを検討しなければならないが、これを出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣
の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断の
場合についてみれば、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、
その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らか
である場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法とな
るものというべきである。したがつて、裁判所は、法務大臣の右判断についてそれ
が違法となるかどうかを審理、判断するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権
の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な
事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実
に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく
妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合
に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法である
とすることができるものと解するのが、相当である。なお、所論引用の当裁判所昭
和三七年(オ)第七五二号同四四年七月一一日第二小法廷判決(民集二三巻八号一
四七〇頁)は、事案を異にし本件に適切なものではなく、その余の判例は、右判示
するところとその趣旨を異にするものではない。
(三) 以上の見地に立つて被上告人の本件処分の適否について検討する。
前記の事実によれば、上告人の在留期間更新申請に対し被上告人が更新を適当と
認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとしてこれを許可しなかつたの
は、上告人の在留期間中の無届転職と政治活動のゆえであつたというのであり、原
判決の趣旨に徴すると、なかでも政治活動が重視されたものと解される。
思うに、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民
のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対し
- 6 -
ても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治
的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認め
ることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相
当である。しかしながら、前述のように、外国人の在留の許否は国の裁量にゆだね
られ、わが国に在留する外国人は、憲法上わが国に在留する権利ないし引き続き在
留することを要求することができる権利を保障されているものではなく、ただ、出
入国管理令上法務大臣がその裁量により更新を適当と認めるに足りる相当の理由が
あると判断する場合に限り在留期間の更新を受けることができる地位を与えられて
いるにすぎないものであり、したがつて、外国人に対する憲法の基本的人権の保障
は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解する
のが相当であつて、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、
在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的
な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解するこ
とはできない。在留中の外国人の行為が合憲合法な場合でも、法務大臣がその行為
を当不当の面から日本国にとつて好ましいものとはいえないと評価し、また、右行
為から将来当該外国人が日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者であると
推認することは、右行為が上記のような意味において憲法の保障を受けるものであ
るからといつてなんら妨げられるものではない。
前述の上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて
直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。しかしながら、上告人
の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリ
カ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保
障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好
関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、
- 7 -
当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとつて好ましいものでは
ないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を
行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由
があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠
き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他
に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたことをうかがわ
せるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分
を違法であると判断することはできないものといわなければならない。また、被上
告人が前述の上告人の政治活動をしんしやくして在留期間の更新を適当と認めるに
足りる相当の理由があるものとはいえないとし本件処分をしたことによつて、なん
ら所論の違憲の問題は生じないというべきである。
(四) 以上述べたところと同旨に帰する原審の判断は、正当であつて、所論引用
の各判例にもなんら違反するものではなく、原判決に所論の違憲、違法はない。論
旨は、上述したところと異なる見解に基づいて原判決を非難するものであつて、採
用することができない。
第二 同第五点について
原審が当事者双方の陳述を記載するにつき所論の方法をとつたからといつて、判
決の事実摘示として欠けるところはないものというべきであり、原判決に所論の違
法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官 岡 原 昌 男
裁判官 江 里 口 清 雄
- 8 -
裁判官 大 塚 喜 一 郎
裁判官 高 辻 正 己
裁判官 吉 田 豊
裁判官 団 藤 重 光
裁判官 本 林 讓
裁判官 服 部 高 顯
裁判官 環 昌 一
裁判官 栗 本 一 夫
裁判官 藤 崎 萬 里
裁判官 本 山 亨
裁判官岸盛一、同天野武一、同岸上康夫は、退官のため署名押印することができ
ない。
裁判長裁判官 岡 原 昌 男
- 9 -
あり得る話だと思います。
十分に注意してください!!!
法テラス(広報) @houterasu_4_10
【ご注意!DV被害にあわれて避難している方へ】夫名義の健康保険証を使って病院を受診すると、後に社会保険事務所等から夫の元へ通知が行き、どこの医療機関を受診したか知られ、居場所を探し出される危険があります。夫の健康保険から脱退し、新たに健康保険に加入する等の手続を検討しましょう。
ひとつの重要判例ゆえ、掲載します。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52388&hanreiKbn=02
事件番号 平成15(受)281
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成17年11月10日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 その他
判例集等巻・号・頁 民集 第59巻9号2428頁
原審裁判所名 大阪高等裁判所
原審事件番号 平成14(ネ)1010
原審裁判年月日 平成14年11月21日
判示事項
1 人の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影する行為と不法行為の成否
2 写真週刊誌のカメラマンが刑事事件の法廷において被疑者の容ぼう,姿態を撮影した行為が不法行為法上違法とされた事例
3 人の容ぼう,姿態を描写したイラスト画を公表する行為と不法行為の成否
4 刑事事件の法廷における被告人の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為法上違法とはいえないとされた事例
5 刑事事件の法廷において身体の拘束を受けている状態の被告人の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為法上違法とされた事例
裁判要旨
1 人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。
2 写真週刊誌のカメラマンが,刑事事件の被疑者の動静を報道する目的で,勾留理由開示手続が行われた法廷において同人の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影した行為は,手錠をされ,腰縄を付けられた状態の同人の容ぼう,姿態を,裁判所の許可を受けることなく隠し撮りしたものであることなど判示の事情の下においては,不法行為法上違法である。
3 人は自己の容ぼう,姿態を描写したイラスト画についてみだりに公表されない人格的利益を有するが,上記イラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては,イラスト画はその描写に作者の主観や技術を反映するものであり,公表された場合も,これを前提とした受け取り方をされるという特質が参酌されなければならない。
4 刑事事件の被告人について,法廷において訴訟関係人から資料を見せられている状態及び手振りを交えて話しているような状態の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為は,不法行為法上違法であるとはいえない。
5 刑事事件の被告人について,法廷において手錠,腰縄により身体の拘束を受けている状態の容ぼう,姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して公表した行為は,不法行為法上違法である。
参照法条 民法709条,民法710条,憲法13条,刑訴規則215条
**************************
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120750524272.pdf
主 文
1 原判決主文第1項(1)を破棄する。
2 前項の部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。 3 上告人株式会社A1及び同A2のその余の上告を棄却する。 4 前項に関する上告費用は上告人株式会社A1及び同A2の負担とする。
理 由
上告代理人鳥飼重和ほかの上告受理申立て理由第3の2について 1 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,平成10年7月に和歌山市内で発生したカレーライスへの毒 物混入事件等につき,殺人罪等により逮捕,勾留され,起訴された被告人である( 以下,被上告人を被疑者,被告人とする上記事件等を「本件刑事事件」という。)。 本件刑事事件は,極めて重大な事案として,国民の多くの注目を集めていた。
上告人株式会社A1(以下「上告会社」という。)は,書籍及び雑誌の出版等を 目的とする株式会社であり,昭和56年から平成13年8月まで,「E」と題する 写真週刊誌(以下「本件写真週刊誌」という。)を発行していた。上告人A2(以 下「上告人A2」という。)は,平成10年1月から平成13年8月まで,本件写 真週刊誌の編集長及び発行人の地位にあった。上告人A3(以下「上告人A3」と いう。)は,平成11年当時,上告会社の代表取締役であった。
(2) 平成10年11月25日,和歌山地方裁判所の法廷において,被上告人の 被疑者段階における勾留理由開示手続が行われた。本件写真週刊誌のカメラマンは ,小型カメラを上記法廷に隠して持ち込み,本件刑事事件の手続における被上告人 の動静を報道する目的で,閉廷直後の時間帯に,裁判所の許可を得ることなく,か つ,被上告人に無断で,裁判所職員及び訴訟関係人に気付かれないようにして,傍 聴席から被上告人の容ぼう,姿態(以下,併せて「容ぼう等」という。)を写真撮
-1 -
影した(以下,この写真を「本件写真」という。)。本件写真は,手錠をされ,腰 縄を付けられた状態にある被上告人をとらえたものである。
(3) 上告会社は,平成11年5月19日,本件写真週刊誌の同月26日号に, 「法廷を嘲笑う『X』の毒カレー初公判-この『怪物』を裁けるのか」との表題の 下に,本件写真を主体とした記事(第1審判決添付の別紙1のとおりのもの。以下 「本件第1記事」という。)を掲載し,そのころ,これを発行した。本件第1記事 には,被上告人が手錠をされ,腰縄を付けられた状態であることを殊更指摘する記 載がある。
(4) 被上告人は,平成11年8月11日,上告会社及び上告人A2に対し,本 件写真の撮影及び本件第1記事の本件写真週刊誌への掲載により被上告人の肖像権 が侵害されたと主張して,上告人A2については民法709条に基づき,上告会社 については同法715条に基づき,慰謝料の支払等を求める訴えを提起した(以下 ,この訴訟事件を「第1事件」という。)。
(5) 上告会社は,平成11年8月18日,本件写真週刊誌の同月25日号に, 「『肖像権』で本誌を訴えた『X』殿へ-絵ならどうなる?」との表題の下に,被 上告人の本件刑事事件の法廷内における容ぼう等を描いた3点のイラスト画と文章 から成る記事(第1審判決添付の別紙2のとおりのもの。以下「本件第2記事」と いう。)を掲載し,そのころ,これを発行した。上記イラスト画(見開き2頁の本 件第2記事の上段に1点,下段に2点が描かれている。以下,併せて「本件イラス ト画」という。)のうち上段のものは,被上告人が手錠,腰縄により身体の拘束を 受けている状態が描かれたものであり,下段の2点は,被上告人が訴訟関係人から 資料を見せられている状態が描かれたもの及び被上告人が手振りを交えて話してい るような状態が描かれたものである。本件第2記事の文章には,刑事事件の被告人 である被上告人が第1事件の訴えを提起したことについて,被上告人を侮辱し,又
-2 -
はその名誉を毀損する表現がある。
(6) 上告人A3は,本件第2記事の掲載当時,上告会社の内部において,本件 写真週刊誌の取材,報道に関し違法行為の発生を防止する管理体制を整えていなか ったものであり,本件第2記事による被上告人に対する名誉毀損等の不法行為に関 し,上告人A3には,その職務の執行につき重過失があった。
(7) 被上告人は,平成11年12月6日,上告人らに対し,本件第2記事の本 件写真週刊誌への掲載は,被上告人の肖像権を侵害し,被上告人の名誉を毀損し, 被上告人を侮辱するものであるなどと主張し,上告人A2については民法709条 に基づき,上告会社については同法715条に基づき,上告人A3については商法 266条ノ3に基づき,慰謝料の支払等を求める訴えを提起した(以下,この訴訟 事件を「第2事件」という。)。本件は,第1事件と第2事件が併合されたもので ある。
2 原審は,次のとおり判断して,第1事件については,慰謝料及び弁護士費用2 20万円並びにこれに対する遅延損害金の請求を認容した第1審判決を是認し,第 2事件については,慰謝料及び弁護士費用220万円並びにこれに対する遅延損害 金の支払を求める限度において,被上告人の請求を認容した。
(1) みだりに自己の容ぼう等を撮影され,これを公表されない人格的利益は,被 撮影者が刑事事件の被疑者や被告人であっても法的に保護され,本件写真の撮影及 び本件第1記事の本件写真週刊誌への掲載は,被上告人の上記法的に保護された利 益である肖像権を侵害する。ある取材,報道行為が他者の肖像権を侵害する結果と なる場合であっても,当該取材,報道行為が公共の利害に関する事項にかかわり, 専ら公益を図る目的でされ,当該取材,報道の手段方法がその目的に照らして相当
-3 -
であるという要件を満たすときには,その行為の違法性が阻却される。これらの要 件については,個別にその有無を判断するだけでなく,その程度を勘案して総合的 に判断すべきである。本件写真の撮影及び本件第1記事の掲載は,公共の利害に関 する事項にかかわり,専ら公益を図る目的でされたと認められる。しかし,本件写 真の撮影方法は相当性を欠き,また,本件第1記事には,被上告人が手錠をされ, 腰縄を付けられた状態であることを殊更指摘する記載があるなど,本件第1記事の 説明文も相当性を欠くから,本件写真の撮影及び本件第1記事の掲載の違法性が阻 却されるものではない。よって,上告会社及び上告人A2は,被上告人に対し,本 件写真の撮影及び本件写真を含む本件第1記事の本件写真週刊誌への掲載につき損 害賠償責任を負う。
(2) 個人の容ぼう等を描写する手段が写真であるかイラスト画であるかは肖像 権侵害の有無を決定する本質的問題とはいえず,イラスト画に描かれた容ぼう等が ある特定の人物のものであると容易に判断することができるときには,当該イラス ト画は,その個人の肖像権を侵害する。本件イラスト画は,被上告人の容ぼう等を とらえたものと容易に判断することができるから,被上告人の肖像権を侵害するも のである。本件第2記事は,公共の利害に関する事項にかかわるものではあるが, これを全体として見た場合,被上告人が第1事件の訴えを提起した事実をやゆする 意図に出たものであって,本件第2記事の本件写真週刊誌への掲載が専ら公益を図 る目的でされたとは認められず,本件イラスト画による肖像権侵害の違法性が阻却 されるものではない。本件イラスト画は被上告人の肖像権を侵害するものであり, 本件第2記事の文章は,被上告人を侮辱し,又はその名誉を毀損するものであるか ら,上告人らは,被上告人に対し,本件イラスト画を含む本件第2記事の本件写真 週刊誌への掲載につき損害賠償責任を負う。 3 しかしながら,原審の上記判断(1)は結論において是認することができるが
-4 -
,同(2)は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 【要旨1】人は,みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということにつ いて法律上保護されるべき人格的利益を有する(最高裁昭和40年(あ)第118 7号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁参照)。もっ とも,人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるので あって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となる かどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所 ,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格 的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決 すべきである。 また,人は,自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利 益も有すると解するのが相当であり,人の容ぼう等の撮影が違法と評価される場合 には,その容ぼう等が撮影された写真を公表する行為は,被撮影者の上記人格的利 益を侵害するものとして,違法性を有するものというべきである。
これを本件についてみると,【要旨2】前記のとおり,被上告人は,本件写真の 撮影当時,社会の耳目を集めた本件刑事事件の被疑者として拘束中の者であり,本 件写真は,本件刑事事件の手続での被上告人の動静を報道する目的で撮影されたも のである。しかしながら,本件写真週刊誌のカメラマンは,刑訴規則215条所定 の裁判所の許可を受けることなく,小型カメラを法廷に持ち込み,被上告人の動静 を隠し撮りしたというのであり,その撮影の態様は相当なものとはいえない。また ,被上告人は,手錠をされ,腰縄を付けられた状態の容ぼう等を撮影されたもので あり,このような被上告人の様子をあえて撮影することの必要性も認め難い。本件 写真が撮影された法廷は傍聴人に公開された場所であったとはいえ,被上告人は, 被疑者として出頭し在廷していたのであり,写真撮影が予想される状況の下に任意
-5 -
に公衆の前に姿を現したものではない。以上の事情を総合考慮すると,本件写真の 撮影行為は,社会生活上受忍すべき限度を超えて,被上告人の人格的利益を侵害す るものであり,不法行為法上違法であるとの評価を免れない。そして,このように 違法に撮影された本件写真を,本件第1記事に組み込み,本件写真週刊誌に掲載し て公表する行為も,被上告人の人格的利益を侵害するものとして,違法性を有する ものというべきである。
(2) 【要旨3】人は,自己の容ぼう等を描写したイラスト画についても,これ をみだりに公表されない人格的利益を有すると解するのが相当である。しかしなが ら,人の容ぼう等を撮影した写真は,カメラのレンズがとらえた被撮影者の容ぼう 等を化学的方法等により再現したものであり,それが公表された場合は,被撮影者 の容ぼう等をありのままに示したものであることを前提とした受け取り方をされる ものである。これに対し,人の容ぼう等を描写したイラスト画は,その描写に作者 の主観や技術が反映するものであり,それが公表された場合も,作者の主観や技術 を反映したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。したがっ て,人の容ぼう等を描写したイラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を 超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては,写真とは異なる イラスト画の上記特質が参酌されなければならない。
これを本件についてみると,【要旨4】前記のとおり,本件イラスト画のうち下 段のイラスト画2点は,法廷において,被上告人が訴訟関係人から資料を見せられ ている状態及び手振りを交えて話しているような状態が描かれたものである。現在 の我が国において,一般に,法廷内における被告人の動静を報道するためにその容 ぼう等をイラスト画により描写し,これを新聞,雑誌等に掲載することは社会的に 是認された行為であると解するのが相当であり,上記のような表現内容のイラスト 画を公表する行為は,社会生活上受忍すべき限度を超えて被上告人の人格的利益を
-6 -
侵害するものとはいえないというべきである。したがって,上記イラスト画2点を 本件第2記事に組み込み,本件写真週刊誌に掲載して公表した行為については,不 法行為法上違法であると評価することはできない。しかしながら,【要旨5】本件 イラスト画のうち上段のものは,前記のとおり,被上告人が手錠,腰縄により身体 の拘束を受けている状態が描かれたものであり,そのような表現内容のイラスト画 を公表する行為は,被上告人を侮辱し,被上告人の名誉感情を侵害するものという べきであり,同イラスト画を,本件第2記事に組み込み,本件写真週刊誌に掲載し て公表した行為は,社会生活上受忍すべき限度を超えて,被上告人の人格的利益を 侵害するものであり,不法行為法上違法と評価すべきである。 これと異なり,下段のイラスト画2点を公表したことをも違法であるとして,こ れを前提に上告人らの損害賠償責任を認めた原審の前記判断には,判決に影響を及 ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由が ある。
4 以上によれば,原判決主文第1項(1)は破棄を免れず,被上告人の被った損 害について更に審理を尽くさせるため,同部分につき,本件を原審に差し戻すこと とし,上告会社及び上告人A2のその余の上告は,理由がないので,これを棄却す ることとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 島田仁郎 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 徳治 裁判官 才口千晴)
-7 -
ひとつの重要判例であるため、掲載します。
事案:
上告人:本邦に在留する外国人で,在留期間の更新又は変更を受けないで在留期 間を経過して本邦に残留する者(以下「不法残留者」という。)
1
1)上告人が交通事故に遭遇して傷害を負い,
2)生活保護法による保護の開始を申請
2被上 告人により却下処分を受けたので,
3その取消しを請求する事案
請求:生活保護申請却下処分取消請求
(行政事件訴訟法 3条2項)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62831&hanreiKbn=02
事件番号 平成9(行ツ)176
事件名 生活保護申請却下処分取消請求事件
裁判年月日 平成13年09月25日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁 集民 第203号1頁
原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成8(行コ)66
原審裁判年月日 平成9年04月24日
判示事項 生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことと憲法25条,14条1項
裁判要旨 生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
参照法条 憲法14条1項,憲法25条, 生活保護法1条,生活保護法2条
*******判決文全文*******
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130828900524.pdf
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人村田敏,同伊藤重勝,同山田正記,同田中裕之,同近藤義徳,同芹澤 眞澄の上告理由のうち違憲及び生活保護法違反をいう部分について 本件は,本邦に在留する外国人で,在留期間の更新又は変更を受けないで在留期 間を経過して本邦に残留する者(以下「不法残留者」という。)である上告人が, 交通事故に遭遇して傷害を負い,生活保護法による保護の開始を申請したが,被上 告人により却下処分を受けたので,その取消しを請求する事案である。
論旨は,憲法25条が,不法残留者を含む在留外国人に対しても緊急医療を受け る権利を直接保障しており,生活保護法は少なくともその限度で在留外国人を保護 の対象としていると解すべきであるのに,原判決がこれを否定したのは,憲法25 条,14条1項及び生活保護法の解釈適用を誤ったものである,というにある。
しかしながら,生活保護法が不法残留者を保護の対象とするものではないことは ,その規定及び趣旨に照らし明らかというべきである。そして,憲法25条につい ては,同条1項は国が個々の国民に対して具体的,現実的に義務を有することを規 定したものではなく,同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及 び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的,現実的な生活権が設定充実さ れていくものであって,同条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ず るかの選択決定は立法府の広い裁量にゆだねられていると解すべきところ,不法残 留者を保護の対象に含めるかどうかが立法府の裁量の範囲に属することは明らかと いうべきである。不法残留者が緊急に治療を要する場合についても,この理が当て はまるのであって,立法府は,医師法19条1項の規定があること等を考慮して生
-1 -
活保護法上の保護の対象とするかどうかの判断をすることができるものというべき である。
したがって,【要旨】同法が不法残留者を保護の対象としていないことは ,憲法25条に違反しないと解するのが相当である。また,生活保護法が不法残留 者を保護の対象としないことは何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いには当た らないから,憲法14条1項に違反しないというべきである。
以上は,当裁判所大 法廷判決(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日判決・民集36巻 7号1235頁,最高裁昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日大法廷 判決・民集32巻7号1223頁,最高裁昭和37年(あ)第927号同39年1 1月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁,最高裁昭和37年(オ)第14 72号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁)の趣旨に徴して 明らかである。
以上によれば,所論の点に関する原審の判断は是認するに足り,論旨は採用する ことができない。
その余の上告理由について 所論の経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和54年条約第6号) 並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約(同年条約第7号)の各規定並びに 国際連合第3回総会の世界人権宣言が,生活保護法に基づく保護の対象に不法残留 者が含まれると解すべき根拠とならないとした原審の判断は,是認することができ る。
また,前示したところによれば,不法残留者を保護の対象としていない生活保 護法の規定が所論の上記各国際規約の各規定に違反すると解することはできない。 論旨は,採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥田昌道 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田 邦夫)
-2 -
「特定秘密の保護に関する法律」は、国会で、絶対に通してはなりません。
以下、日本弁護士連合会の意見書です。
長いので、いくつかに分けて掲載します。
ここでは、
〇意見募集期間の短さ
〇立法しようとする根拠となる理由に欠いている
点が指摘されています。
*********************************
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2013/130912.html
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書
2013年(平成25年)9月12日
日本弁護士連合会
第1 意見の趣旨
1 意見募集期間を2か月に延長すべきである。
2 当連合会は,日本国憲法の基本原理を尊重する立場から,「特定秘密の保護に
関する法律案」(以下「本件法案」という)に強く反対する。
第2 意見の理由
2011年8月8日,秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議は,
「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(以下,「有識者会議報告書」
という)を公表した。これに対し,当連合会は,2012年12月20日「秘密
保全法案の作成の中止を求める意見書」等により反対の意向を明らかにしてきた。
今般,意見募集に付された本件法案は,当連合会の見解を多少配慮しているこ
とが伺えるが,基本的には,有識者会議報告書の内容をそのまま踏襲しており,
当連合会がこれまで有識者会議報告書に対し行ってきた批判がそのまま当てはま
る。
以下,反対の理由を具体的に述べる。
1 意見募集期間が異常に短いことの問題性
2013年9月3日,内閣官房は,本件法案の内容を国民に明らかにし,意
見提出期限を2013年9月17日とする,本件法案についての意見募集を開
始した。
本件法案は,2012年5月25日,当連合会が公表した「秘密保全法制に
反対する決議」で詳細に指摘したとおり,国民主権その他憲法原理との抵触が
問題になる法案である。このような重要法案が国会に提出されることをこれま
でほとんどの国民は知らなかったのであるから,政府が真に国民の考えに耳を
傾けるつもりがあるのなら,通常の意見募集期間である1か月以上の期間を定
めて意見募集すべきである。ことの重大性を承知していながら,2週間しか意
見募集期間を設けないことは,国民が深く考える時間を与えず,国民の考えを
広く聞くことなく,立法化を進めることを宣言しているのと同じである。これ
は,国民主権原理を真っ向から否定するものである。
ことの重大性に鑑みれば,国民の多くが本件法案の概要を理解するための準
2
備期間と,理解した上で意見書を作成するための期間を合わせて,政府は,意
見募集期間を2か月間に訂正し延長すべきである。
2 立法事実がないこと
本件法案は国民主権原理や国民の憲法上の諸権利などに深刻な悪影響を及ぼ
すおそれがあるものであるから,その立法事実の存否は慎重に検討されなけれ
ばならない。
ところで,2011年1月4日,政府における秘密保全に関する検討委員会
の下に秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下,「有識者会議」
という)が設置された。同会議では,秘密保全法制を制定すべきか否か,どの
ような内容とすべきかが議題とされていた。有識者会議は,同年8月8日,秘
密保全法制を制定すべきとする有識者会議報告書を公表した。本件法案の概要
は,有識者会議報告書において制定すべきとされた秘密保全法制の内容とほぼ
同様であるので,以下では,有識者会議において紹介された過去の情報漏えい
事案が本件法案を必要とする事情(立法事実)となり得るか,主要なものにつ
いて検討を行う。
(1) ボガチョンコフ事件によっても立法事実があるとはいえないこと
有識者会議報告書で秘密漏えいの事例として挙げられている事例のうち,
唯一実刑判決が言い渡されたものである。しかし,以下に述べるとおり,本
件法案の立法事実の存在を裏付けるものではない。
① 事件の経過
同事件は,防衛庁防衛研究所所属のH3等海佐(H3佐)が,在日ロシ
ア大使館駐在武官であったB海軍大佐(B大佐)に,海上自衛隊に関する
資料を漏えいしたというものである。
H3佐は,1999年1月,都内で開催された安全保障国際シンポジウ
ムの会場でB大佐と知り合った。その後,食事などの交際が続いた。その
過程で,H3佐は,難病を患っていたH3佐の長男に対する見舞金等の名
称でB大佐から現金等を受け取った。
こうして接触を続けていく中で,H3佐はB大佐から海上自衛隊に関す
る資料を求められたが,同大佐から種々の名目で現金の提供を受けたこと
への負い目等から,H3佐が過去に不正に複写し保有していた秘密文書の
写しを,翌年6月,B大佐に渡した。
② 刑事処分
同事案については,2001年3月7日,東京地裁において懲役10ケ
3
月(求刑1年)の判決が言い渡された。
③ 「主な原因」とされているもの
防衛省は,以下の4点を同事案の原因としている。
ア「秘密文書の取扱いの不徹底」として,「秘密文書を不正に複写する等
の不適切な行為が行なわれるなど,秘密文書の取扱い要領が不徹底」
イ 「外部からの働き掛けに対する対応の不十分」として,「防衛交流の
活発化により,諜報工作の対象となる機会や職員の範囲も増大している
にもかかわらず,対応が不十分。また,我が国において過去に諜報事件
の摘発実績のある国等に対する職員の警戒心が低下」
ウ 「施設等機関等における保全機能の未整備」として,「H3佐が勤務
していた防衛研究所を始めとする陸・海・空自衛隊の部隊及び機関以外
の組織(施設等機関等)について,各自衛隊が有している調査隊のよう
な組織の健全性を保全する機能が未整備」
エ 「職員の身上把握の不十分」として,「個人的弱点を抱える職員は諜
報工作の対象として狙われやすいところ,上司による職員の身上把握が
不十分」
④ 講じた処置
防衛省は,③で述べた原因に対して次の措置を講じたとしている。
「秘密漏洩防止のための管理態勢等の整備」として,「関係職員の限定,
秘密文書の的確な管理の徹底等 ※2006年4月,私有パソコン等での
業務用データ取扱い禁止,ファイル暗号化ソフトの導入等」がなされてい
る。
「秘密保全に係る罰則の強化」として,「『防衛秘密』制度の新設(自衛
隊法の改正)」がなされている。
「外部からの働き掛けへの対応要領の制度化」として,「各国駐在武官
等との接触要領の策定(各国駐在武官と接触する際の事前了解等)」がな
されている。
「情報保全に関連する部隊の充実・強化」として,「各自衛隊の情報保
全隊を新設(中央と地方の部隊の指揮系統を一元化し,施設等機関等の保
全業務の支援を任務化)※平成21年8月,陸海空情報保全隊を統合し,
自衛隊情報保全隊を新編」がなされている。
「秘密を取り扱う職員の教育・身上把握の充実」として,「保全教育の
拡充及び部隊等の長による十分な身上把握・カウンセリング等の充実(諜
報工作の態様に関する保全教育の実施,諜報工作の対象として狙われやす
4
い個人的弱点を抱える隊員の把握等 ※平成18年4月,秘密保全に係る
重い責任を自覚させるための『誓約書』の提出 ※平成19年5月,個別
面談方式による全隊員に対する指導を実施(以後,年1回以上実施)」が
なされている。
「全庁的な情報保全態勢の整備」として,「委員会を設置し,情報保全
に係る施策のフォローアップを実施(事務次官を長とする防衛庁情報保全
委員会を設置 ※平成19年4月,情報流出事案の再発防止を期すため,
防衛大臣を長とする情報流出対策会議を設置」がなされている。
⑤ 同種事件を防ぐために何らかの対策を新たに講ずる必要がないこと
有識者会議報告書は,ボガチョンコフ事件を秘密保全法制の立法事実と
している。
しかし,事案に即した対策としては,秘匿性の高い文書について複写で
きる者を制限し,複写をした者や日時を記録し,日々,不正な複写の有無
をチェックする運用を実行すればよい。
また,同事件については,④で述べたとおり,事案防止のためにさまざ
まな方策がとられており,その後同様の事件は再発していない。そうであ
れば,既に必要な対策はとられているのであり,新たに秘密保全法制を制
定する必要性はない。
防衛省は,「個人的弱点を抱える職員は諜報工作の対象として狙われや
すいところ,上司による職員の身上把握が不十分」との点が秘密漏えいの
原因だとしている。
しかし,一般的に考えるならば,個人的弱点のない人など存在せず,誰
もが何らかの「弱点」を持っている。「弱点」を探し出して,特定の者に
ついて「弱点がある」と評価しても何の意味もない。「個人的弱点」の有
無を重視する考え方は誤りである。
H3佐の「個人的弱点」とは何だったのか。ボガチョンコフ事件では,
確かに難病の子どもを抱えている親が秘密漏えいを起こしたが,H3佐に
難病の子どもがいなければ情報漏えいはなかったのであろうか。見舞金の
授受は難病の子どもがいなくてもなされうる。金を渡す口実は無数にある。
ボガチョンコフ事件では「個人的弱点」が情報漏えいの1つの原因になっ
ていたかもしれないが,難病の子どもがいるという「個人的弱点」を事前
につかんでいれば情報漏えいを回避できたという展開にはなったとは到
底考えられない。ボガチョンコフ事件を教訓としても,職員の身上把握の
不十分さが漏えいに結びついたとはいえない。
5
⑥ 小括
以上より,ボガチョンコフ事件の原因については,再発防止のための対
策がとられているのであり,それ以上に何らかの対策がとられる必要はな
い。
また,同事件をもってしても職員の身上把握の必要性が裏付けられるこ
とはない。
(2) 内閣情報調査室職員による情報漏洩事件から立法事実があるとはいえない
こと
① 事案の内容
政府資料である「内閣情報調査室職員に対するロシア大使館職員による
情報収集活動事案」によれば事案の概要は以下のとおりである。
「内閣情報調査室職員Aは,業務を通じ,在日ロシア大使館員と知り合
った」
「Aは,その後,歴代の同大使館員と接触を続ける中で,次第に金品の
提供を受けるようになった」
「やがて,Aは,部内情報を自ら取りまとめて提供するに至った」
「平成20年1月,Aは,収賄と国家公務員法違反(守秘義務違反)の
疑いで書類送検された(不起訴処分(起訴猶予),情報漏えい発覚直後に
懲戒免職)」
② 主な反省教訓事項
主な反省教訓事項として,「同種事案は,誰にでも起こり得るもの」「服
務指導や研修により,摘発への現実感を醸成して抑止力とすることも必
要」「職員に対するきめ細やかな教育や研修が不十分」「情報保全一般に対
する組織的な取組が不十分」等が挙げられている。
③ 立法事実とはならないこと
以下のことが具体的対応として行なわれている。
「情報保全に関する教育・研修の充実強化」が必要だとして,「内容の
質的向上,定期的受講の義務付け等」が行われている。
また,「情報保全に関する組織・管理体制の強化」として,「人的管理-
秘密取扱者適格性確認制度(セキュリティクリアランス制度)の的確な実
施」及び「物的管理-特別管理秘密制度の的確な実施,電磁的記録媒体の
管理強化 持ち込み規制物品の見直し」が挙げられている。
よって,当事案についても既に十分な対策が取られていると言え,更に
新たな対策を講じる必要はない。
6
(3) 尖閣沖漁船衝突事件にかかる情報漏えい事案から立法事実があるとはいえ
ないこと
尖閣沖漁船衝突事件にかかる情報漏えいが本件法案への動きのきっかけ
となったとの報道もあるが,同事件は本件法案の立法事実となるようなもの
ではない。
① 事案の概要
政府資料である「中国漁船衝突事件映像情報流出事案の概要について」
によれば事案の概要は以下のとおりである。
「平成22年9月17日,事件捜査のため,第11管区海上保安本部職
員は,行政情報システムの海上保安大学校のパブリックフォルダを用いて,
衝突事件映像を海上保安学校に伝送しようとしたが,この際,第11管区
海上保安本部職員と海上保安大学校職員の間で,衝突事件映像の削除につ
いてきちんと確認しなかったため,同年9月17日から同月22日までの
間,衝突事件映像が海上保安大学校のパブリックフォルダに掲載されたま
まとなり,不特定多数の海上保安庁職員にとって入手が容易な状態になっ
ていた」
「同年9月19日,衝突事件映像を流出させた職員の同僚職員が,たま
たま別の用件で,海上保安大学校のパブリックフォルダにアクセスしたと
ころ,衝突事件映像を発見し,巡視艇の行政情報端末機に保存した」
「同年10月31日,衝突事件映像を流出させた職員は,当該行政情報
端末機から衝突事件映像を私有USBメモリに保存し,部外に持ち出した
もの」
その上で,当該職員は,画像データを動画サイト「Youtube」にアップ
ロードし,インターネット上に流出させた。
② 実質秘の流出事案とはいえないこと
そもそも,当該映像が実質秘といえるか疑問である。
政府は,映像は「訴訟に関する書類」(刑事訴訟法第47条)に該当す
る非公開文書だとして秘密となると説明していた。
しかし,同規定に該当するか否かと実質秘に該当するかは別問題である。
海上保安庁では衝突事件画像を秘密指定していなかったどころか,9月1
7日から9月22日までの間,海上保安大学校のパブリックフォルダに掲
載したままで,不特定多数の海上保安庁職員にとって入手が容易な状態に
なっていた。他方で,9月30日には与野党の国会議員30名余が同画像
の一部を閲覧し,その内容をマスコミ記者に詳細に告知し,マスコミが映
7
像を作るなどして報道しており,これに対して海上保安庁からも政府から
も何ら異論は示されていなかった。このような事情からすれば,衝突事件
画像は到底,実質秘とはいえない。
したがって,報告書が,同事件を秘密保全法制の立法事実としているこ
とこそが問題である。
③ 立法事実があるとはいえないこと
同事件では,海上保安庁の不特定多数の職員にとって画像が入手可能な
状態になったことが,情報が庁外に出た原因となっている。
仮に,国の行政機関等が保有する実質秘に該当するデジタル画像の漏え
いを阻止する必要があるとすれば,その対策は,作成取得時に秘密指定し,
限られた特定の者しかアクセスできないようアクセス制御すればよいだけ
のことである。
よって,同事件から本件法案の必要性を導き出すことはできない。
(4) 国際テロ対策に係るデータのインターネット上の掲出事案から立法事実が
あるとはいえないこと
本件法案では,警察関連情報(「外国の利益を図る目的で行われる安全脅威
活動」,「テロ防止活動」に関する事項)を特定秘密にすることを想定してい
るので,国際テロ情報の流出事案についても検討する。
① 検討の対象となる資料
第1回「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」に「国際
テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案に関する中間的
見解等について(要旨)」として資料が配布されている。
② 事案の概要
国際テロ対策にかかるデータがインターネット上に掲出されたという
ものである。「国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事
案に関する中間的見解等について(要旨)」にもそれ以上の情報は記載さ
れていない。
③ 立法事実があるとはいえないこと
これまで我が国が深刻な国際テロの被害に遭ったことはない。また,昨
今の国際テロの実情は,テロ集団とテロ対象国家は深刻な武力対立関係に
あることが多く,我が国がそのような関係にある国ないしテロ集団はない
と考えられる。したがって,我が国の安全のために国際テロ対策として特
定秘密を認める必要があるかどうかについては,より慎重な議論が必要で
ある。
8
「国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案に関す
る中間的見解等について(要旨)」によっても,誰が,どのようにして,
どのような理由で掲出したのかさえ明らかにされていない。そうであれば,
同事件を本件法案の立法事実とすることはできない。
(5) その他の事案から立法事実があるとはいえないこと
その他,シェルコノゴフ事件,国防協会事件,イージスシステムに係る情
報漏洩事件,中国潜水艦の動向に係る情報漏洩事件が立法事実として挙げら
れているが,有識者会議にも具体的な資料は提供されていない。
ただし,これらの事件はすべて起訴猶予か執行猶予とされている。よって,
これらの事件を根拠に法定刑の引き上げ等の刑罰強化が必要とはいえない。
また,これらの事件が何らかの背景を持った者により起こされたといえる
事情も明らかではない。よって,本件法案の立法事実とすることはできない。
(6) まとめ
(4)及び(5)については不明であるが,その他の事案については,その都度
対策が取られている。それが人権保障の観点から適正なものかどうかは措く
として,少なくとも再発防止のために必要な対策は既に取られている。した
がって,罰則強化や人的管理を内容とする本件法案の立法の必要性を裏付け
る事情は存在しない。
「特定秘密の保護に関する法律」は、国会で、絶対に通してはなりません。
以下、日本弁護士連合会の意見書です。
長いので、二回に分けて掲載します。(前のブログの続きです。)
*********************************
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2013/130912.html
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書
2013年(平成25年)9月12日
日本弁護士連合会
第1 意見の趣旨
1 意見募集期間を2か月に延長すべきである。
2 当連合会は,日本国憲法の基本原理を尊重する立場から,「特定秘密の保護に
関する法律案」(以下「本件法案」という)に強く反対する。
第2 意見の理由
2011年8月8日,秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議は,
「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(以下,「有識者会議報告書」
という)を公表した。これに対し,当連合会は,2012年12月20日「秘密
保全法案の作成の中止を求める意見書」等により反対の意向を明らかにしてきた。
今般,意見募集に付された本件法案は,当連合会の見解を多少配慮しているこ
とが伺えるが,基本的には,有識者会議報告書の内容をそのまま踏襲しており,
当連合会がこれまで有識者会議報告書に対し行ってきた批判がそのまま当てはま
る。
以下,反対の理由を具体的に述べる。
1 意見募集期間が異常に短いことの問題性
(前のブログで記載)
2 立法事実がないこと
(前のブログで記載)
3 「特定秘密」の範囲が広範で定義が不明確であることについて
(1) 「特定秘密」の範囲が広範にすぎること
本件法案では,対象となる「特定秘密」について,①防衛,②外交,③外
国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止,④テロ活動防止の4分
野を別表で示している。
これは,1985年に国会に提出され,国民世論の広範な反対によって廃
案とされた「国家秘密にかかるスパイ行為等の防止に関する法律案」(以下
「国家秘密法案」という。)と比較しても,秘密の対象範囲が著しく拡大さ
れており,明らかに広範に過ぎる。
国家秘密法案では,国家秘密の定義は,「防衛及び外交に関する別表に掲
げる事項並びにこれらの事項にかかる文書,図画,又は物件で,我が国の防
衛上秘匿することを要し,かつ公になっていないものをいう。」とされてい
た。
これに対して,本件法案では,国家秘密の対象事項を,防衛,外交,安全
脅威活動の防止,テロ活動防止にまで拡大している。「その漏えいが我が国
9
の安全保障に著しく支障を与えるおそれがある」という条件を付しているも
のの,これへの該当性は,行政機関の長が判断することになっているから,
限定機能として的確に機能するか否かは甚だ疑問である。
(2) 「防衛」秘密の範囲が広範不明確であることについて
本件法案別表第1号は,自衛隊法別表第4(第96条の2関係)に相当す
るものである。自衛隊に関連する事項を網羅的に挙げている。自衛隊法では
すでに民間事業者も処罰対象として予定しているのみならず,過失犯の処罰
規定,共謀,教唆,煽動に関する処罰規定も設けている(第122条)から,
この分野に関して新たな法制は必要ないはずである。違いは,後に論じる罰
則の上限が懲役5年から懲役10年に重罰化する点である。
現在,日本の国の防衛に関する秘密情報は,実務の情報管理において外部
へ漏えいしないような運用がなされている。また,国家公務員法のほか,ア
メリカ合衆国軍隊の秘密は日米刑事特別法によって保護されるとともに,ア
メリカから日本に提供された装備品等に関する秘密は,MDA秘密保護法(日
米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法)によってそれぞれ保護されている。
政府は,これらの法律によっては十分な秘密保護ができないために秘密保
全法制が必要であるとしている。
しかし,既に見たとおり,防衛情報の漏えいとして問題とされている事案
については十分な事後対策が行われており,再発を防止できているから,十
分な秘密保護ができないというのは,現状を反映していない意見である。
政府の上記意見は,日本の防衛情報の漏えいが現に防止できているか否か
ではなく,日米関係の深化とともに,軍事・防衛面での日米の協力関係が深
まり,軍事秘密の共有化が進んでいることからの政治的要請に基づくもので
ある。日米の軍事的協力関係の深まりの中で,秘密保全法制は重要な位置付
けがなされていると見られる。2012年8月に発表された,米国戦略国際
問題研究所レポート「米日同盟」では,アジア太平洋での日米共同の軍事行
動を強化するための方策として,日本政府に対して,防衛省の秘密保護に関
する法的能力の強化を勧告している。また,同年7月に公表された国家戦略
会議「平和のフロンティア部会報告書」と自民党「国家安全保障基本法案(概
要)」では,いずれも憲法9条の政府解釈を見直して,集団的自衛権行使と
ともに,秘密保全法制の制定を提言している。
すなわち,本件法案は,集団的自衛権行使を含む日米共同の軍事的抑止力
で我が国の平和と安全を守ろうとする政策の不可分の一部となっており,憲
法第9条及び前文が規定する恒久平和主義と相反するものである。
10
このような現状の下で,防衛に関する秘密保全が今以上に拡大・強化され
ることは,軍事力の不保持を禁じた憲法第9条に違反するような政府の行為,
例えば上記のような集団的自衛権の行使や自衛隊の海外での武力行使等を,
主権者国民や国会がチェックできなくなるおそれがある。
現に,航空自衛隊のイラク派遣問題では,自衛隊の活動が憲法第9条に違
反するのではないか問題とされた(名古屋高等裁判所平成20年4月17日
判決は,航空自衛隊のイラク派遣が憲法違反であるとの判断を示している。)
が,防衛省はこの活動内容に関する文書の情報公開請求に対して,当初は国
の安全が害されるおそれがあるとして非開示とした。2009年9月によう
やく開示された文書からは,航空自衛隊が米兵を運輸していた実態,すなわ
ち自衛隊が憲法違反のおそれが極めて大きい活動をしていた実態が明らかに
なった。
本件法案が策定されれば,本来主権者が知っておく必要のある上記のよう
な事実が「特定秘密」に指定され,主権者に永久に知らされないままになる
危険がある。
(3) 「外交」情報が広範不明確であることについて
「安全保障」に関連する事項が広く対象となっている。しかし,「安全保
障」に関する事項は,問題によっては,国家間の深刻な対立や深刻な民族紛
争などに我が国が巻き込まれかねない事項を含むこともあり得るから,主権
者である国民はこれらの問題について高い関心を持つべきであるといえる。
したがって,この分野について行政機関の判断により秘密指定できる範囲を
広範に設定することは問題である。
(4) 「外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止」に関する情報が
広範不明確であることについて
別表第3号で規定されている対象情報は,「外国の利益を図る目的で行わ
れる安全脅威活動の防止に関する事項」というものである。これはスパイ活
動の阻止を意図したものであり,「外国」と明記していることから明らかな
ように,特定の国家との間でスパイ活動が展開されて来たこと,今後される
であろうことを想定したものである。観念的には理解できることではあるが,
「外国の利益」という考え方自体,その具体的内容はだれにも共通する内容
になるわけではないから,政治的な配慮の元での解釈運用がなされるおそれ
が大きい。
例えば,現時点における我が国の政府当局が敵対視している国家であって
も,国民レベルでは経済活動,文化活動,個人的な関わりなど相互に行き来
11
している関係が存在し,そこにはいろいろな情報交流もあるのであって,中
には政府当局が一時的に国内外から非難されたり窮地に立たされるような情
報のやりとりがあったとしても,安易にスパイ活動視するようなことがあっ
てはならない。
(5) 「テロ防止活動」に関する情報が広範不明確であることについて
本件法案では,「テロ活動」を「政治上その他の主義主張に基づき,国家
若しくは他人にこれを強要し,又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で
人を殺傷し,又は重要な施設その他の物を破壊する行為を行う活動をいう。」
と定義している。
このようなテロ活動の主体は国家に限定されない。集団や個人も主体とな
り得る。テロの動機も無限定であり,その行為態様の限定もしておらず,様々
な行為が「テロ活動」に該当し得る。
そのような「テロ活動」の防止のための「措置」「計画」「研究」は無限
に広がる可能性がある。第4号ロの「その他の重要な情報」にはどのような
情報でも含まれてしまうおそれがある。
(6) 特定秘密の「表示」は限定と無関係であること
本件法案では,秘密指定された文書には特定秘密の表示をすることによっ
て,特定秘密情報とそうでない情報を明確に区別できるとしている。
しかし,上記表示の有無は,特定秘密情報を取扱う業務に従事する者にし
か見ることができないから,上記の者以外の者にとっては,上記区別は分か
らない。極めて広範に指定されていたとしても,国民には判別しようがない。
また,本件法案では,秘密指定期間の上限を5年とするものとしているが,
同時に回数制限のない期間更新を可能としているから,実際の制度運用では
無期限に秘密にし続けることが可能になっている。秘密指定の濫用を事前抑
制させることも,事後にチェックすることも極めて困難である。
さらに,我が国では,特に国の行政機関や警察を被告とする行政訴訟にお
いて裁判所が被告の主張に追従する傾向が顕著にあることから,特定秘密性
が争点となる訴訟において裁判所が有効にチェック機能を果たすかどうか甚
だ疑わしい。
(7) まとめ
このように,本件法案の規定する「特定秘密」の概念は極めて広範かつ不
明確であり,行政機関の恣意的運用を止めることができない。
4 人的管理について
12
(1) 適性評価制度についての立法事実の欠如と内容が不明であること
本件法案は適性評価制度の導入・整備を図っている。
しかし,有識者会議報告書に記載された「情報漏えい」事案をみても,本
件法案で収集が予定されている情報に係る属性をもった人物が「情報漏えい」
をしたものではない。つまり,本件法案の適性評価制度において収集すべき
とされている個人情報を収集しても,「情報漏えい」をしそうな者を判別する
ことはできない。適性評価制度にはそもそも実効性がない。
また,適性評価制度に内容が類似する制度として,政府は,2007年8
月9日に策定された「カウンターインテリジェンス機能の評価に関する基本
方針」に基づき,現在,秘密取扱者適格性確認制度を実施している。しかし,
当連合会の2012年4月27日付け「秘密取扱者適格性確認制度に関する
会長声明」のとおり,政府は,不適格と判断された者の人数,調査事項,そ
の方法及び範囲等,その具体的な運用について何ら明らかにしていない。こ
のような政府の態度は,適性評価制度の是非及びその内容の具体的な検討を
不可能とするものである。
その上,適性評価制度は,以下に述べるとおり,プライバシー権や思想・
信条の自由等の侵害,差別的取扱いの危険性のほか,適正手続との関係でも
重大な問題を孕んでいる。
(2) プライバシー権等が侵害されること
① 調査事項の広範・不明確性
ア 広範なプライバシー情報の収集
調査事項は,スパイ活動やテロ活動との関連性のほか,犯罪・懲戒の
経歴,情報の取扱いに係る非違の経歴,薬物の濫用・影響,精神疾患,
飲酒の節度,信用状態など,通常他人に知られたくない個人情報が多く
含まれている。調査事項には,家族及び同居人の氏名,生年月日,国籍
及び住所を含むとされているが,「家族」の範囲が曖昧であるし,それ
らの者の氏名,生年月日,国籍,住所だけを調査することにどれほどの
合理性があるのか,むしろ,今後,調査項目が増えることが危惧される。
これらの調査を通じて,適性評価の調査の名の下に対象者のプライバシ
ーが著しく侵害されるおそれがある。
イ 思想調査の危険
調査事項のうち「我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の
活動」についてみると,「我が国」と「現政権」が異なることは明らか
であるが,現政権は現政権の利害を離れて何が我が国に対する脅威とな
13
るか常に的確に判断できるのか疑問である。現政権は現政権を維持する
ために情報をコントロールしようとするものである。現政権の利害と我
が国の利益が一致することがあるとしても,現政権が現政権の利害を離
れて我が国に対する脅威の有無を常に的確に判断するという保証はな
い。我が国にとっては何ら「脅威」がなくとも,現政権にとっての「脅
威」がある場合に「脅威」があるとされる可能性もある。
また,「我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の活動」は,
その抽象性故に調査実施権者である行政機関の恣意的判断によって,個
人の政治活動や組合活動,さらには思想・信条にまで踏み込んだ調査が
なされる危険性も否定できない。
さらに,情報公開請求や住民訴訟,内部告発などによって警察や検察
庁,外務省等の裏金を追及する活動も,当該行政機関にとっては,その
活動を阻害するものとして「脅威となる・・・その他の活動」であると
評価されるおそれがある。
② 同意は調査の正当化事由にならない
本件法案は,適性評価のための調査がプライバシーに深く関わる調査と
なることから,行政機関職員等の同意を得た上で,第三者に対する照会等
により調査を行うこととしている。
本人の同意は,個人情報収集の基本である。本件法案はこれを意識した
ものである。しかし,以下に述べるとおり,本件法案の性質上,上記行政
機関職員等の同意は調査を正当化する,すなわちプライバシー権や思想・
信条の自由の制約を許容する根拠とはなり得ない。
まず,この同意が真に自由意思によるものと認められるためには,同意
の対象となるプライバシー情報の範囲が明確に特定されていることが必
要であるところ,調査事項は広範に及び,かつ,「我が国及び国民の安全
への脅威となる・・・その他の活動」といった抽象的な事項が含まれてお
り,行政機関職員等にとって自己に関する情報のどこまでが調査されるの
かが不明である。
また,行政機関職員等が上司等から同意を求められた場合に,真に自由
な意思に基づいて同意・不同意の判断を行うことは組織の性質から考えて
不可能であろう。とりわけ,組織の中で秘密情報に関与することは組織の
中枢に関わるようになることを意味し,上司等から同意を求められた職員
が自由な意思に基づいて不同意を選択することはほとんどあり得ない。
また,本件法案では,関係者への質問により調査を行うこととされてお
14
り,他の職員等からの密告を奨励する可能性すらある。
したがって,本件法案が予定している行政機関職員等の同意は,真にプ
ライバシー保護に配慮したものとは認められず,調査の正当化事由にはな
り得ない。
③ 個人情報保護の不十分性
本件法案は,対象者の個人情報保護については,国家公務員法上の懲戒
の事由等に該当する疑いがある場合を除き目的外での利用及び提供を禁
ずるとしている。
個人情報の目的外利用を原則的に禁止するものではあるが,「懲戒の事
由等」と明記していることからすれば,懲戒事由以外にも利用される場合
があることを想定しているということである。しかるに,懲戒の場合以外
のいかなる場合に目的外利用及び提供が認められるのか何ら明らかでは
なく,適性評価を実施した行政機関が収集した行政機関職員等のセンシテ
ィブ情報を含む個人情報が,本人が知らない利用のされ方をされてしまう
危険がある。
④ 調査対象者以外の者の同意がないこと
本件法案は,行政機関職員等のみからの同意しか想定していないため,
行政機関職員等の身近にある者は自己の知らないうちに調査実施権者で
ある行政機関に自己の個人情報が提供されてしまうことになる。氏名,生
年月日,国籍,住所だけであっても提供されたくないと考える者はおり,
それだけであってもプライバシー侵害に該当し得るし,さらに調査項目が
増えるようなことになれば,プライバシー侵害はより深刻である。
(3) 差別的取扱いの危険
本件法案は,適性評価の評価事項として,「外国の利益を図る目的で行われ,
かつ,我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の活動並びにテロ活
動」を挙げている。
しかし,適性評価制度は,特定秘密が漏えいされる一般的リスクがあると
認められる者を予め除外する仕組みであるところ,このようにリスクが一般
的・抽象的なものとして把握されるとすれば,行政機関職員等,家族,同居
人が一定の思想・信条や信仰を有していることや,一定の国籍を有している
こと又は有していたこと,一定の民族に属していること自体をもって,秘密
漏えいのリスクがあるとして,特定秘密の取扱者から除外される可能性があ
る。
また,本件法案では,適性を有しないと評価された場合は,結果を通知す
15
ることが検討されているようであるが,理由の通知は想定されていないよう
である。そうだとすると,上記のような思想差別を事実上許容することにな
りかねない。
政府がこのような思想差別を許容するような制度を導入すれば,それはた
ちまち民間にも波及するであろう。既に民間の電力会社においては特定の政
党の党員であることを理由に差別的な扱いを受けていた例が存するのであり,
適性評価制度の導入はこのような思想・信条による差別を日本中に広げ増長
させることになるであろう。
(4) 適正手続の保障が危ぶまれること
本件法案では,適性評価の評価基準の公開については規定されないようで
ある。また,実施権者が適性評価の理由を通知することも想定されていない
ようである。
適性を有しないとの評価は,特定秘密の取扱者から除外されるという行政
機関職員等の地位に重大な不利益をもたらすものである以上,行政機関職員
等に対して適正な手続が保障されなければならず,また,司法手続でその評
価を争う機会が付与されなければならない。
しかるに,適性評価の結果に不服がある場合の行政上の不服申立や司法救
済の在り方・審理の方法について具体的に規定されないようである。仮にこ
れが規定されたとしても,評価基準が非公開で,理由が付記されていなけれ
ばそもそも主張を組み立てることが困難である。
これでは,恣意的,人権侵害的な調査を排除することはできない。
5 罰則について
(1) はじめに
① 情報漏えい事件の発生状況と立法事実の欠如
本件法案は,保護の対象たる秘密,すなわち「特定秘密」の漏えい行為
等を処罰し,もってその機密保持の徹底を図ろうとしている。
しかし,有識者会議報告書が立法事実として掲げる「情報漏えい」事案
をみても,ほとんどの事案において起訴猶予か執行猶予判決となってい
る。
ボガチョンコフ事件では実刑判決が言い渡されているが,懲役10月に
処する判決であった。また,ボガチョンコフ事件を受けて自衛隊法が改正
され,防衛秘密の漏えいが5年以下の懲役に処せられるようになったが,
その後,この規定により実刑判決を受けた事例は皆無である。かかる状況
16
において重罰化を進める必要性は全くない。
② 「特定秘密」の広範性と罪刑法定主義違反
また,先に詳述したとおり,本法制においては漏えいが禁止される「特
定秘密」の要件が過度に広範でかつ不明確である。本件法案の第2.1オ
によれば,行政機関の長は,秘密指定したときに当該文書に特定秘密の表
示するなど当該事項が特定秘密である旨を明らかにすることになってい
るが,国民には如何なる情報が「特定秘密」として漏えい禁止の対象であ
るかが認識できず,何が処罰されるかについても予測することが困難であ
る。また,指定文書には「特定秘密」の表示があったとしても,文書以外
の「特定秘密」にはその旨の表示がないし,特定秘密の内容を知っている
者がメモしたり記憶したりした情報にも「特定秘密」の表示はない。さら
に,「特定秘密」情報が他の情報と混在しているような場合にも,両者の
区別はつきにくい。したがって,一定の情報を入手しようと考える国民の
側には「特定秘密」か否かの事前予測はできないし,入手した後でさえ,
「特定秘密」であることが分からないということが起こり得る。これは,
国民の自由な言動を過剰に萎縮させることになる。内部告発者について
も,同人が自ら管理者ではために「特定秘密」の表示を認識することなく,
組織内にいることによってたまたま知ってしまった情報が「特定秘密」に
指定されていることに気づかずに,第三者に提供してしまうということは
起こり得る。さらに,「特定秘密」に指定された情報が違法秘密や擬似秘
密であった場合,これを内部告発しようとする者にとっては,秘密保護法
による重罰化は内部告発禁止法ともいうべき重圧である。
ところが,本法制は,故意の漏えい行為のみならず,過失による漏えい
行為のほか,漏えい行為の未遂や共謀,教唆及び煽動,特定秘密の取得行
為とその共謀,教唆,煽動についても処罰しようとしている。いずれも,
ただでさえ過度に広範で不明確な処罰範囲の外延を更に不明瞭にするも
のである。刑罰法規は,犯罪と刑罰を具体的,明確に規定しなければなら
ない。本件法案は,漠然不明確であって,憲法31条の罪刑法定主義の観
点からしても重大な疑問がある。
以下,各別に看過し得ない問題点を指摘することとする。
(2) 過失による漏えい行為処罰の不当性
もともと過失犯は,故意犯に比して違法性の程度が低く,行為者に対する
非難可能性も低い。それゆえ,刑法第38条第1項が「罪を犯す意思がない
行為は,罰しない。ただし法律に特別の規定がある場合は,この限りでない。」
17
と定めるとおり,我が国の刑事法制においては,故意犯処罰が原則で,過失
犯処罰は例外とされている。
国家公務員法では守秘義務違反について過失犯を処罰対象としていない。
日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法や自衛隊法では,故意犯に比べて
軽い法定刑の過失処罰規定を設けている。
本件法案は,過失による漏えい行為の処罰範囲を更に拡大しようとするも
のであるだけでなく,故意犯に比べて法定刑を軽くするかどうかが不明にな
っている。これが,情報漏えいという結果の重大性に着目し,故意過失で区
別しないという考え方に基づいているとすれば,刑法の基本原理を真っ向か
ら否定するものであり,到底容認できない。
前述のごとく,本件法案における「特定秘密」の外延は過度に広範になる
可能性が高く,かつ,不明確であるから,本件法案の想定する「特定秘密」
の全てが国益を揺るがす重大な国家秘密というべきものかも極めて疑わしい
ところであり,ここにおいて過失の漏えい行為をも処罰することの必要性や
相当性が認められるかについては重大な疑問がある。
一般に,「過失」とは注意義務に違反して犯罪を実行する心理状態と理解
されており,その注意義務は結果予見義務と結果回避義務に分析されている。
本件法案において,「特定秘密」の表示がある文書を直接目にしている者
にとっては,その限度で「特定秘密」の対象は明確であるから,その管理に
適正を期そうすることはできる。しかし,過失による漏えいは,過失の具体
的内容を明文で規定できないだけに,過剰に処罰されるおそれがある。
過失による情報漏えいは,情報セキュリティの基準と運用の適正化によっ
て防ぐべきものであって,処罰によって威嚇するという手法は適当でない。
(3) 未遂犯処罰の不当性について
刑法第44条は,「未遂を処罰する場合は,本各条で定める。」と規定し
ている。つまり,既遂犯処罰が原則であり,未遂犯の処罰は例外として位置
付けられている。
これは,我が国の刑法においては,原則として,客観的な法益侵害の結果
が発生した場合に応報的にこれを処罰するという考えを採用しているからで
ある。
かかる観点からすれば,未遂犯処罰は,重大な法益を侵害する危険性が高
く,それゆえに,未遂犯処罰を行うべき必要がある場合があるとしても,結
果発生を待たないで処罰することによって生ずる不利益,すなわち処罰範囲
の曖昧さの拡大や刑法の内心への介入といった不利益を上回る未遂犯処罰の
18
高度の必要性が認められる場合に限って認められるべきである。
国家公務員法や地方公務員法などでは「秘密」の内容を問わず未遂犯処罰
規定がない。これは現行諸法制においても上述の点について考慮しているも
のと考えられる。
この点,前述のごとく,本件法案における「特定秘密」の外延は過度に広
範でかつ不明確であるため,漏えい行為が未遂にとどまり,漏えいの結果が
発生しなかった場合にまで処罰することは行き過ぎである。処罰範囲の曖昧
さの拡大や刑法の内心への介入という不利益を上回る未遂犯処罰の高度の必
要性も認められないというべきであり,未遂犯処罰規定を設けようとしてい
ることは相当ではない。
(4) 共謀行為・教唆及び煽動の不当性について
「共謀」とは,ある犯罪行為の実施・遂行について,具体的計画を複数の
者が謀議することをいい,「教唆」とは判例によれば犯罪実行の意思を持た
ない者に犯罪実行の決意を新たに生じさせるに足りる慫慂行為をすることを
いい,「煽動」とは,同用語を法文において使用している例,例えば破壊活
動防止法上の定義によれば,「特定の行為を実行させる目的をもつて,文書
若しくは図画又は言動により,人に対し,その行為を実行する決意を生ぜし
め又は既に生じている決意を助長させるような勢のある刺激を与えること」
(第4条第2項)をいうとされている。「煽動」は,結果が生じていないど
ころか,実行行為の着手がない極めて早期の段階で処罰しようとするもので
ある。本件法案の条文が示されていないため判然としないが,特定秘密の保
護に関する法律案の概要上は,本件法案の「共謀」,「教唆」についても,
実行行為の着手がない段階で「共謀」,「教唆」を処罰する趣旨に受け取れ
る。
この点,共謀行為については,実行行為がまだ行われていない早期の段階
で処罰するものだとすると,その外延は不明確であり,国民にとっても予測
可能性を欠き,萎縮的効果をもたらすおそれがある。そもそも共謀だけで処
罰することは犯罪実行の着手前に放棄された犯罪の意図は原則として犯罪と
はみなさないという近代刑法の原則にも反する。このような観点から,当連
合会は,従来から,共謀罪を新設することに強く反対する立場をとっている
(2012年4月13日付け「共謀罪の創設に反対する意見書」)。
実行行為の着手がないのに教唆を処罰すること(独立教唆の処罰)は,被
教唆者の実行行為が不要なだけでなく,犯罪行為の決意をも不要とするもの
で,刑法の基本原則である行為責任主義に明らかに反する。そもそも,共犯
19
理論に関する学説の議論状況としては,正犯に実行の着手がなければ,教唆
や幇助といった共犯の処罰は認められないとする共犯従属性の立場が圧倒的
であるが,独立教唆はこれに反して,実行行為以前の極めて早期の段階でこ
れらを処罰しようとするものであり,その結果,内心の意思を処罰すること
になり,上述の近代刑法の原則に真っ向から反するのである。
さらに,煽動行為については,独立教唆行為以上にその成立範囲は不明確
であり,不可罰な表現行為との境界はより曖昧であるから,国民の表現活動
を萎縮させるおそれがある。破壊活動防止法においては,その制定時に,濫
用の危険があるとして,「せん動」概念の限定が議論されており,その結果,
目的要件が付加されたほか,方法についても明示がなされ,その解釈に当た
っては,その対象たる行為を目的・場所・態様において具体的に明らかにせ
ねばならず,かつ,特定の行為を実行させる目的がせん動者の自由かつ真摯
なものでなければならないほか,特定の行為が実行される危険性も必要であ
ると解釈されている。それでもなお,破壊活動防止法の「せん動」規定につ
いては,表現の自由や集会・結社の自由などとの関係で問題があると指摘さ
れていることについては今さら多言を要しないところである。
このように,歴史的に恣意的な濫用の観点から批判され,限定的にのみ導
入・運用されてきた問題の多い「せん動」罪規定を,本件法案に持ち込もう
とすること自体から立法のあり方に重大な疑問を持たざるを得ない。
共謀行為,独立教唆及び煽動を処罰対象とし,実行行為がまだ行われてい
ない早期の段階を処罰範囲に取り込もうとする本件法案の企図するところ
は,政府が秘密にしたいと欲する事項や国民の目には触れさせたくないと欲
する事項に少しでも近付こうとする行為を刑罰により厳しく禁じ,国民の知
る権利をいわば入口よりもずっと手前の段階で塞いでしまおうとする点にあ
ると考えられる。ここにおいては,国民の知る権利,言論・表現の自由,取
材・報道の自由などに対する配慮は皆無といわざるを得ない。
(5) 特定秘密の取得行為の処罰が取材行為等を委縮させることについて
本件法案は,人を欺き,人に暴行を加え,又は人を脅迫する行為,財物の
窃取,施設への侵入,不正アクセス行為その他の特定秘密の保有者の管理を
害する行為による特定秘密の取得行為を処罰するとしている。
「人を欺き」「人に暴行を加え」「人を脅迫する行為」「財物の窃取」「施設
への侵入」「不正アクセス行為」という用語については,いずれの概念もきわ
めて幅広い解釈が可能であり,処罰範囲が著しく広がる危険性が高い。
それがさらに,「その他の特定秘密の保有者の管理を害する行為」となると,
20
具体的にどのような行為を指しているのかが,全く定かではない。一例を挙
げれば,合法的に入室した者がたまたま机上に置いてあった特定秘密が記載
されている書面を見て記憶したといった場合も,これに該当するのか。その
適用範囲が著しく不明確だといわざるを得ない。
そうだとすると,特定秘密の取得行為は,処罰範囲が広範でその外延が不
明確になるおそれがあるといわなければならない。
また,有識者会議報告書が外務省機密漏えい事件の最高裁判決を当然の前
提のように引用していることからすると,本件法案においても,新聞記者を
含む報道関係者が,特定秘密の取得行為の対象となることは,当然に想定さ
れていると解される。
行き過ぎた取材行為が広く特定秘密の取得行為として検挙・処罰されると
したら,報道機関による取材活動は萎縮せざるを得ないのであり,報道関係
者による取材の自由・報道の自由に対する重大な制約になり,ひいては国民
の知る権利,国民の表現の自由・言論の自由に対する重大な制約となる。
オンブズマン活動や反戦平和運動に関わる市民は,その活動の一環として,
秘密情報に迫ろうとするが,これらの活動も特定秘密の取得行為に問われか
ねないリスクがあり,主権者としての当然の活動が特定秘密の保護に関する
法律により萎縮させられるであろう。
(6) 法定刑が重すぎること
本件法案では,法定刑の上限を懲役5年又は10年まで引き上げることと
されており,公務員の情報漏えいについて重罰化が図られようとしている。
しかしながら,重罰化することは,過度な萎縮的効果をもたらすことにな
るおそれがあるし,前述したように,過去の主要な情報漏えい事件を見ても,
懲役10月の実刑の事例と懲役2年6月,4年間執行猶予の事例があるだけ
であり,法定刑の上限を懲役10年に引き上げるべき必要性はない。
法定刑の上限が懲役10年まで引き上げられると,極めて厳しい量刑がな
されることになるが,これは本法制による刑罰の対象となる公務員,報道関
係者,市民活動家などに対する威嚇以外の何物でもないといわなければなら
ず,そのような法定刑には重大な疑問がある。
(7) 曖昧で広範囲な処罰規定の目指すところ
本件法案においては,故意の漏えい行為の処罰においてすら極めて問題が
多いにもかかわらず,過失の漏えい行為のほか,未遂行為や共謀行為,独立
教唆,煽動,特定取得行為及びその共謀,教唆,煽動まで処罰しようとして
いるが,その基礎にあるのは,秘密情報の漏えいという結果は,過失であろ
21
うと故意であろうと,その国益に与える影響という点において何ら差異はな
く,また,実際に漏えいがなされなかったとしても,漏えい行為が行われよ
うと,行為あるいはこれを誘発しようとした行為それ自体を厳しく取り締ま
らなければ,およそ秘密の徹底した保持は図りえないという考え方である。
しかしながら,いかに秘密情報の漏えいという結果の重大性を強調しようと
も,処罰されるべき行為の外延を明確に画することなく,国民に刑罰を課す
ことが許されないのは罪刑法定主義の観点からは当然である。
このような姿勢は,これまで当連合会が,国民主権・民主主義・基本的人
権擁護の理念に基づいてとってきた立場とは真っ向から対立するものであ
り,到底容認できるものではない。
6 国会及び国会議員との関係
本件法案では,第2.1(2)エで国会議員を特定秘密の提供先として想定する
一方で,第2.2(1)イで処罰対象とすることも規定している。すなわち,特定
秘密を知得した議員が特定秘密を故意または過失により漏えいをしたときに5
年以下の自由刑に処するものとしている。国会議員について,第2.2(2)(3)
が適用されないということも明記されていない。
これによると,秘密の委員会や調査会で知った秘密情報を,国会議員が同じ
会派の議員や秘書,専門家として相談に乗ってもらっている弁護士や学者など
に一切知らせることができないことになり,本来の議員活動ができなくなるお
それがある。これでは国会議員は,個人として深く検討することができないだ
けでなく,所属政党として十分な検討をすることもできない。
これは議会制民主主義の否定というもいうべき大問題である。
よって,国会議員を処罰しうるとの規定は設けるべきでない。
さらに,第2.2(1)イでは,裁判官や情報公開・個人情報保護審査会の委員
も処罰対象としているが,これらの者についてはこれまでに深刻な秘密漏えい
事件を起こしたことがあったわけではないし,国家公務員法違反による処罰が
可能であるから,秘密保護法によって改めて重く処罰する必要はない。
7 裁判を受ける権利と秘密保全法制について
裁判を受ける権利は基本的人権(憲法第32条)である。
刑事被告人は,公平な裁判所において迅速,公開の裁判を受ける権利を保障
されており(憲法第37条),その裁判は公開することが憲法上の原則である(憲
法第82条第1項)。とりわけ同条第2項ただし書で,政治犯罪,出版に関する
22
犯罪,憲法第三章で保障する国民の権利が問題となっている場合には,必ず公
開しなければならない。このように憲法は国民の裁判を受ける権利について,
詳細に規定している。
公開の法廷とは,形式的な公開だけではなく,裁判の始まりから終結まで全
ての局面において,実質的に公開されていなければならないことを意味する。
そして,特定秘密の保護に関する法律に違反して起訴された場合,その裁判
は憲法第82条第2項ただし書きに該当するものとなる。このことは,特定秘
密の保護に関する法律に対して解決困難な問題を提起する。国家秘密を漏えい
し,違法に取得し,その教唆せん動,共謀行為を行ったとして起訴された場合,
その国家秘密が公開の法廷で公開されれば,それはたちどころに秘密ではなく
なる。国家秘密が非公開なまま裁判が進行すれば,公開原則に違反し,裁判を
受ける権利を侵害する。
これに対し,かつて国家秘密法が国会に提出されたときに,それを推進した
自由民主党のパンフレット(1982年発行)は,「裁判における秘密の立証は
秘密事項そのものを法廷に提出しなくとも,問題となっている防衛秘密の種類
と性質や,その秘密とされる理由及び未だ多数の人々に知られていない蓋然性
等を立証すれば足りると解せられます」としていた。法廷で問題となった秘密
が実質的に特定秘密の要件を満たすものかどうかを裁判所が判断する際に,そ
の秘密の内容が秘匿されたまま,秘密の種類,性質,秘匿の理由等が示される
だけで実質的な審理,的確な判断ができるか甚だ疑問である。司法には,行政
当局の秘密指定とは独立して「特定秘密」に当たるか否かの判断を公正にする
ことが求められている。そのためにも憲法にいう公開の原則は守られなければ
ならない。
また,国家秘密を秘匿したままの裁判では,被告人がどのような事実で処罰
されるのか分からない状態で裁判を受けることとなり,実質的な防御権・弁護
権を奪われるおそれがある。弁護人は,弁護活動のため秘匿された国家秘密に
できるだけ接近しようとするであろうが,関係者への事情聴取等の調査活動,
資料の収集活動も教唆,共謀等に問われるのだとすれば,弁護活動も著しく制
約されることになる。これは弁護人選任権,公正な裁判の否定である。
基本的人権侵害の最後の救済が裁判を受ける権利であるが,これはあくまで
事後的救済であり,犯罪として捜査,起訴されただけでも回復不可能な重大な
人権侵害となる。その上さらに,特定秘密の保護に関する法律に違反した犯罪
では,裁判を受ける権利が否定されかねず,事後的救済すら不十分なものとな
る。
23
国家の平和と安全については,憲法第9条を巡る国民世論の鋭い対立がある
ように,思想・信条,政治的立場により,意見や行動が左右される。その結果,
国家秘密を巡る刑事裁判は,特定の政治的立場による政治裁判になるおそれが
ある。その上,上記のように公正な裁判すら期待できないことになれば,裁判
を受ける権利は名ばかりとなる。
本件法案は,公開の法廷で裁判を受ける国民の基本的権利については,何ら
言及していない。
8 特定秘密保護に関する法律が憲法の保障する人権を侵害すること
取材の自由及び報道の自由は,憲法上の権利である表現の自由に直結し,ま
た憲法で保障された国民の知る権利に資するものとして,極めて重要な憲法上
の権利である。のみならず,報道による権力監視は,民主主義と個人の自由の
ために極めて重要である。
ところが,特定秘密の要件自体が過度に広範かつ不明確である上,共犯処罰
規定が設けられていることからすれば,処罰対象が無限定に広がりかねない。
そのため,取材者は,自身の取材活動が処罰対象となるかを予測できないまま
取材をすることとなり,処罰を避けるためには,結果的に取材そのものを控え
ざるを得ない。罰則規定による取材の自由に対する萎縮効果は計り知れない。
また,特定秘密の取得行為についても,「管理を害する行為」を処罰対象と
しているが,要件があまりに不明確であり,いかなる取材活動が「管理を害す
る行為」となるか否かの判断はおよそ不可能であり,処罰を避けるためには,
やはり取材そのものを自粛する事態ともなりかねない。
本件法案では,その上,特定秘密の取得行為に対する共謀等も処罰の対象と
していることからすれば,およそ取材活動に対して無限定に処罰対象を広げる
ことになりかねず,取材の自由が著しく脅かされることは必至である。
そして,取材内容が報道された時点で,特定秘密の漏えいとされれば,上記
と同様のことが当てはまるのであって,報道の自由も著しく制限されることは
明らかである。
確かに,本件法案においては,拡張解釈の禁止,国民の基本的人権を不当に
害するようなことがあってはならない旨の規定が置かれることが想定されて
いる。しかし,どこまでが「拡張解釈」なのか,何が「不当」なのかは極めて
判断が困難であり,政府においていくらでも「拡張解釈ではない」,「不当な適
用ではない」との強弁が可能である。現に,同様の規定を有する破壊活動防止
法の運用においても,法が拡大解釈され,破壊活動に関わらない青年法律家協
24
会等の団体まで調査対象とされている実態を想起すべきである。
特定秘密の保護に関する法律は,立憲主義に悖り,国民主権の基礎を危うく
するとともに,国民の基本的人権を侵害するものである。
以下詳述する。
(1) 秘密保全法制が国民主権と矛盾すること
国民の知る権利は,民主主義の根幹である。国民主権を基本的原理の一つ
とする日本国憲法の下にあっては,国政に関する重要情報に接することがそ
の基礎である。したがって,国民主権の原理は,基本的人権の一つである
「国民の知る権利」が保障されることを当然の前提としている。情報公開制
度は,国民の知る権利を実質的に保障する制度である。
そもそも国政の重要情報は,主権者たる国民のものである。その上で,例
え一定程度の保護すべき国家秘密を認めるとしても,その概念は明確にすべ
きであり,可能な限りその範囲は限定されるべきである。なぜなら,国民主
権と国家秘密の保護とは,原理的な緊張関係にあるからである。
国民の知る権利を保障するためには,情報公開制度の充実が不可欠である
が,国民主権と原理的緊張関係にある秘密保護制度との関係では,「国民の
知る権利と情報公開が最も中枢の基本的人権である」ことが優先されなけれ
ばならない。したがって,秘密保護制度を検討する場合,国民の知る権利の
真の保障と国家秘密の保護とのバランスを,どのように調整するのかという,
最も重要な問題を慎重に検討しなければならない。
有識者会議報告書は,秘密保全法制で保護すべき特別秘密は,情報公開法
では非開示情報になるので,国民の知る権利を侵害することにはならないと
述べているが,現行の情報公開法は,国民主権と国民の知る権利を保障する
上で,極めて不十分であるから,報告書の考え方は本末転倒である。外交・
防衛・警察等に関する不開示事由の広範さの限定こそが情報公開法の改正に
おいて重要な課題になっているときに,報告書が上記のような見解を採用す
ることは極めて問題である。
本件法案においては,上記したとおり,保護される「特定秘密」の範囲は
不明確かつ広範に過ぎ,国民の知る権利より国家秘密の保障を優先させるも
のといわなくてはならない。かかる法制は国民主権原理に反し,国民の知る
権利を侵害するものとして到底許されない。
(2) 違法秘密と擬似秘密まで保護されてしまうこと
「特定秘密」は行政機関が指定権限を有するものであることから,違法秘
密や擬似秘密(時の政府当局者の自己保身のための秘密)を「特定秘密」に
25
指定してしまう危険性がある。政局を有利に展開するために利用される危険
が極めて高い。これは重要な国政の課題について国民の判断を誤らせ,国の
政治の流れを誤らせ,国際関係を悪化させる危険性が高いだけに,確実に排
除されなければならない。
しかるに,本件法案にはこの問題の解決につながるような規定はない。こ
れでは,国民主権は空洞化してしまうのであり,到底,本件法案を許容する
ことはできない。
(3) 小括
以上のとおり,本件法案は,憲法の諸原理と根本的に矛盾抵触するもので
あり,是認できない。
9 いま必要なことは情報公開の推進である
我が国ではほとんどの行政事務が国の主導で進められて来たが,情報公開制
度は違っていた。我が国の情報公開制度は,国からではなく,地方自治体から
始まった。
1982年以降,全国の市町村都道府県で情報公開条例の制定が,燎原の火
のごとく急速に広がっていった。それでも国では情報公開法制定の動きは起こ
らなかった。各省庁の反対が極めて強かったからである。
情報公開法の制定は1999年にやっと実現したものの,当初からその不十
分さが指摘されていた。情報公開法は2001年4月から施行されたが,全体
的に各省庁とも極めて消極的・恣意的な運用で,納得できない国民の不服申立
や情報公開訴訟が相次ぎ,国民の請求が認められる答申や判決が続出した。
このような閉塞状況を打開すべく,当連合会は情報公開法の改正を提案し続
け,2011年4月,当連合会の意見を部分的に採用した情報公開法改正案(①
「国民の知る権利」の明記,②不開示事由規定の限定,③手数料の廃止,④裁
判管轄の拡大など)が閣議決定され,国会に提出され,いつ審議入りになって
成立してもよい段階まで進んでいた。それが未だに審議されないままのところ
で登場したのが秘密保全法制の法制化である。なお,情報公開法改正案は,2
012年11月の衆議院解散に伴い,廃案となっている。
いま我が国に必要なのは情報公開の推進である。これこそが,重要な国政に
関する国民の議論を活性化させ,民主主義の発展に寄与するのである。また,
情報公開度の高さは国の政治の透明度の高さを世界に示すものであり,国家間
の相互信頼を築く上で重要な役割を果たす。現在なされるべきは,現状法下に
おける積極的な情報公開と情報公開法の早期改正である。
26
当連合会は,日本国憲法の諸原理を尊重する立場から,本件法案が立法化さ
れることに強く反対し,政府が本件法案を国会に提出しないことを強く求める。
以上
(9月中の日曜日は、すべて急病対応を予定、9/23月祝を除く)
個別にお伝えしているところですが、万が一の場合、併せて急病対応いたしますので、お気軽にご相談下さい。
また、月曜日からの登園登校に備え、「治癒証明」が必要な場合、日曜日に書かせていただきます。月曜日わざわざクリニックによる必要がなくなると思いますので、ご利用下さい。
mission:日本の小児医療救急問題の解決と、地域の子ども達の24時間365日の安全安心。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
*********9月の小坂クリニックのお知らせ******
【1】9月は、日曜日はお休みなしで診療致します。(及び9月16日の祝日)
ただし、
〇9/23祝は、小児救急当番に出動のため休診します。
〇9/22日は、総合訓練消防団訓練に出動のため、対応時間を訓練終了後とさせていただきます。
【2】日曜日の予防接種を実施中です。(同時に急病対応もいたします。)
患者様からの御要望にお応えし、日曜日の予防接種(予約制)を実施することになりました。
ご希望の方は、お電話でお申し込み下さい。
お子様の夏休み期間中に、お忘れの予防接種があれば、実施されることをお勧めします。
日曜日予防接種実施に伴い午前中はクリニックに待機いたしますので、急病対応も可能です。
月曜日朝一番で登園できるよう治癒証明なども日曜日に書きますのでご利用ください。
【3】ご旅行中のお薬は、大丈夫ですか?
時期をずらして、ご旅行されるかたが、まだまだおられるようです。
ご旅行中に、ご病気の際、軽い風邪やおなかのお薬を持参されると安心です。
定期内服薬もきらさないようにお願いいたします。
ご旅行の際の持参薬について、お気軽にご相談下さい。
また、実際にご旅行中の際のご病気でお困りの場合、クリニックにお電話下さい(国内03-5547-1191、海外81-3-5547-1191)。万が一、留守番電話の場合、ご連絡先を入れてください。折り返しの対応をさせていただきます。
*****************
「日曜日の予防接種開始のお知らせ」と、
「大人の風しんワクチンの無料接種のお知らせ」を致します。
<こども元気!!クリニックの日曜日の予防接種実施のお知らせ>
このたび、患者様からの御要望にお応えし
日曜日の予防接種(予約制)を
実施することになりました。
ご希望の方は、受付へ申し込みください。
ご利用お待ちしております。
<大人の風しん予防接種費用の無料化について>
風疹がたいへん流行しています。
先天性風しん症候群緊急対策として、
中央区は、大人のかたへの風疹予防接種費用助成を、
〇妊娠を予定又は希望している女性(接種期限 平成26年3月31日)
〇妊娠している女性の夫(接種期限 平成25年9月30日)
を対象者として行っています。
接種費用は無料となりますが、接種期限もあり、ご注意ください。
当院でも、この事業に伴う予防接種も実施しておりますので、ご利用ください。
なお、対象でない方も、風しんにかかったことがないかたは、接種されることをお勧めします。
ワクチン不足も言われており、お考えの方はお早めにお申込み下さい。
*関連の中央区ホームページ:
http://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/hokenzyo/sessyu/senntennseihusinnkinnkyuutaisaku/index.html
*先天性風しん症候群:妊娠のはじめの時期に風しんに感染すると、高い確率でおなかの中の赤ちゃんが、心奇形・難聴・白内障などを持って生まれてくる病気です。だからこそ、妊娠されるかたを中心に接種事業が積極的に行われています。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
(9月中の日曜日は、すべて急病対応を予定、9/23月祝を除く)
個別にお伝えしているところですが、万が一の場合、併せて急病対応いたしますので、お気軽にご相談下さい。
また、月曜日からの登園登校に備え、「治癒証明」が必要な場合、日曜日に書かせていただきます。月曜日わざわざクリニックによる必要がなくなると思いますので、ご利用下さい。
mission:日本の小児医療救急問題の解決と、地域の子ども達の24時間365日の安全安心。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
*********9月の小坂クリニックのお知らせ******
【1】9月は、日曜日はお休みなしで診療致します。(及び9月16日の祝日)
ただし、
〇9/23祝は、小児救急当番に出動のため休診します。
〇9/22日は、総合訓練消防団訓練に出動のため、対応時間を訓練終了後とさせていただきます。
【2】日曜日の予防接種を実施中です。(同時に急病対応もいたします。)
患者様からの御要望にお応えし、日曜日の予防接種(予約制)を実施することになりました。
ご希望の方は、お電話でお申し込み下さい。
お子様の夏休み期間中に、お忘れの予防接種があれば、実施されることをお勧めします。
日曜日予防接種実施に伴い午前中はクリニックに待機いたしますので、急病対応も可能です。
月曜日朝一番で登園できるよう治癒証明なども日曜日に書きますのでご利用ください。
【3】ご旅行中のお薬は、大丈夫ですか?
時期をずらして、ご旅行されるかたが、まだまだおられるようです。
ご旅行中に、ご病気の際、軽い風邪やおなかのお薬を持参されると安心です。
定期内服薬もきらさないようにお願いいたします。
ご旅行の際の持参薬について、お気軽にご相談下さい。
また、実際にご旅行中の際のご病気でお困りの場合、クリニックにお電話下さい(国内03-5547-1191、海外81-3-5547-1191)。万が一、留守番電話の場合、ご連絡先を入れてください。折り返しの対応をさせていただきます。
*****************
「日曜日の予防接種開始のお知らせ」と、
「大人の風しんワクチンの無料接種のお知らせ」を致します。
<こども元気!!クリニックの日曜日の予防接種実施のお知らせ>
このたび、患者様からの御要望にお応えし
日曜日の予防接種(予約制)を
実施することになりました。
ご希望の方は、受付へ申し込みください。
ご利用お待ちしております。
<大人の風しん予防接種費用の無料化について>
風疹がたいへん流行しています。
先天性風しん症候群緊急対策として、
中央区は、大人のかたへの風疹予防接種費用助成を、
〇妊娠を予定又は希望している女性(接種期限 平成26年3月31日)
〇妊娠している女性の夫(接種期限 平成25年9月30日)
を対象者として行っています。
接種費用は無料となりますが、接種期限もあり、ご注意ください。
当院でも、この事業に伴う予防接種も実施しておりますので、ご利用ください。
なお、対象でない方も、風しんにかかったことがないかたは、接種されることをお勧めします。
ワクチン不足も言われており、お考えの方はお早めにお申込み下さい。
*関連の中央区ホームページ:
http://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/hokenzyo/sessyu/senntennseihusinnkinnkyuutaisaku/index.html
*先天性風しん症候群:妊娠のはじめの時期に風しんに感染すると、高い確率でおなかの中の赤ちゃんが、心奇形・難聴・白内障などを持って生まれてくる病気です。だからこそ、妊娠されるかたを中心に接種事業が積極的に行われています。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
1 債権の相対性という観点から、(1)債権者の意思への依存、(2)物的支配の希薄さという二つの側面が債権にはある。
(1)債権者の意思への依存
債権が人に対する権利であるということは、それが債権者の意思に依存したものであることを意味する。債権が実現するか否か(履行されるかどうか)は債務者の意思次第であり、債権者としては履行を促す、そして、不履行があれば債務者に対して強行手段(強制執行や解除)をとるしかない。
そうすると、XがYに対して有するのと同一の内容の債権をZが取得することによって、Xの権利が事実上害することがあったとしても、それがYの意思によるものである以上、Yが不履行責任を負うことはあっても、Zに何らかの責任が生じることはない。つまり、第三者ZによってXの債権が侵害されるということはありえないはずである。
よって、債権侵害が不法行為とされる場合に問題となる。
(2)物的支配の希薄さ
債権が人に対する権利であるということは、それが物に対する強い支配力を持たないことを意味する。
債権の目的物に対する物的支配が間接的なものにとどまることになる。例えば、賃借権は物の利用に関する権利であるが、それは債務者に貸すことを求める権利であって物に対する直接の権利ではない。そうすると、実際に貸してもらえるか否かは債務者の意思に依存することになる。
よって、侵害行為の差止めを請求(以下、「妨害排除請求」という)する場合に問題となる。
2 この二つの側面より、特に1(1)より、第三者の債権侵害による不法行為について、債権の相対性ゆえに不法行為が成立しないのではないかということが問題となる。
以下、債権侵害を類型に分け、不法行為の成立を検討する。
a債権の帰属を侵害(準占有者として弁済受領)
b債権の目的を侵害で、第三者が単独で目的物を破壊し債権が消滅した場合
b´間接損害(労働者が事故で負傷したために労務の提供ができなくなる場合)
c債権の目的を侵害で、第三者が債務者とともに目的物を破壊したが、債権は不消滅である場合
c´引き抜き(雇用されている労務者をさらに雇用する場合)
このうち、abb´は、債権が消滅するので、当然に不法行為が成立する。
しかしcc´の場合には債権は損害賠償請求権として存続するので、abと同じに考えることはできない。cに関しては、通謀がある場合に限って不法行為の成立を認めるべきである。
よって、aないしc(b´、c´含め)の場合、債権者が、第三者に対して不法行為責任を追及することが出来る場合もあるといえる。
3 債権の相対性から、特に1(2)より、債権侵害に対して、妨害排除請求権も認めることは考えられないのではないかということが問題となる。
第一に、引渡債務については、目的物の所有権に基づく妨害排除請求権(物権的請求権)が認められれば足りることが多い。例えば、購入した不動産に不法占拠者がいるという場合は、物権的請求権で処理できる。行為債務でも給付が一回限りのものについては、妨害排除を求めても意味がない。
継続的な給付を対象とする行為債務、例えば、対抗力としての登記を有する土地賃借権者は、相手方が二重賃借人であれ不法占拠者であれ、妨害排除請求を行うことができると判例上考えられる。
第二に、妨害排除請求のためには他の制度や法理を援用することがある。
一つは占有訴権であり、もう一つは、債権者代位権の転用という法理である。XがYから不動産を賃借していたが、その使用をZが妨害しているという場合、YがZに対して有する所有権に基づく妨害排除請求権をXがYに代わって(代位して)行使できると判例上考えられる。
上記考え方は、第一の考え方については、対抗力の有無を基準とすることの当否で問題があり、第二の考え方は、占有訴権や代位権を用いることが出来ない場合(占有移転前の場合、相手方が二重賃借人であり賃貸人に対しては利用権限を主張できる場合)の処理の仕方で問題である。
そこで、第一の考え方につき、現行法では、賃借権は債権として構成されているが、特別法により不動産賃借権は物権に近い性質を持つに至っている(賃借権の物権化)。不動産賃借権に妨害排除請求権が認められるのはこのような事情から正当であり、保護の対象を対抗要件ある賃借権に限定する必然性はないといえる。
第二の考え方につき、占有や対抗要件がなくても不法占拠者に対して妨害排除請求を認めるというのはよいが、二重賃借人に対しても妨害排除請求を認めるというのは行き過ぎであり、この場合は対抗要件の登記を備えてはじめて妨害排除ができると解すべきである。
従って、賃借権は、妨害排除請求出来る場合もあるといえる。
以上
考えさせられる記事です。
******読売新聞(2013/09/13)**************
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130913-OYT1T00403.htm
議長続投でもめる市議会再開、飛び交う懲罰動議
松山市議会が寺井克之議長(松山維新の会)の続投を巡って空転している問題で、本会議が12日夜、議会初日以来6日ぶりに再開し、12議案が提出された。
この日も議事日程について話し合う議会運営委員会が断続的に開かれ、夕方まで結論が出なかったが、寺井議長、清水宣郎副議長(自民党)の両者に懲罰の動議を提出することで、各会派が再開に合意した。
本会議はこの日午後6時50分から約30分間、再開された。冒頭で寺井議長が「市民に迷惑をかけて申し訳ない。議会の円滑な運営に努めていきたい」と陳謝。懲罰動議が提出され、特別委員会で審査することが決まった。
その後、市が12議案を提案し、野志克仁市長が議案について説明して、休憩に入った。
懲罰動議は、自民など5会派が寺井議長に、松山維新が清水副議長に対し、出したもの。それぞれ続投に反対、賛成の勢力同士が〈応酬〉しあう格好となった。動議を審議する特別委員会で、寺井議長への懲罰は継続審議に、清水副議長への懲罰は否決となった。
議事日程を巡っては午前9時半~午後6時の間、議会運営委員会が3度の長い休憩を挟みながら開かれたが、結論が出なかった。午後6時半に再開した委員会で「議会を混乱させた責任」などとして正副議長に対する懲罰動議を出すことで、本会議の再開が決まった。
本会議閉会後、野志市長は「提案説明ができてほっとしている。粛々と議会を進めてほしい。動議については推移を見守るだけだ」と述べた。
本会議の休憩は午後10時現在も続いているが、同日中に議会運営委員会を開くことで各会派は合意しており、今後の議事日程が話し合われるという。
問題は、6月定例会で寺井議長が3年目となる議長職の続投を表明したことが発端。地方自治法には議長の任期について規定はないが、松山市議会では毎年6月に交代するのが慣例だった。公明(8人)、自民(6人)、新風・民主(4人)、共産(3人)、ネットワーク市民の窓(3人)の5会派が「慣例破りは議会の秩序を乱す」と辞職を求め、寺井議長の所属する最大会派の松山維新の会(12人)が「1年で交代すると思い切った議会改革ができない。あしき慣習だ」と続投を支持。9月定例会では開会初日の6日に寺井議長の議長辞職勧告決議が可決され、その後も空転が続いていた。(梅本寛之)
(2013年9月13日11時55分 読売新聞)
以下、おかしな法案の提出が、現実のものとなりつつあります。
どうか、皆さんの声を国に届けてください。パブリックコメントは、9月17日までです。
真の情報が、国民に伝わらなくさせる法律です。
例えば、福島原発の内容を「特定秘密」とすることにより、福島原発で何が起こっているか、伝えることができなくさせることが可能になります。
簡単な解説(わずか12分で核心をついています。是非、ご視聴下さい。)→ http://www.dailymotion.com/video/xz363d_
J‐WAVE JAM THE WORLD堤未果さんx 梓澤和幸弁護士「秘密保全法について」2013.04.17
日本国憲法21条自民党改憲案において、表現の自由を国民から奪おうとするところの布石だと思われます。
21条について関連記載→http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/0141629bea9a196f4bb7a8a3c9206a7b
********************
日本国憲法
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
自民党改憲案
(表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。〔新設〕
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
********************
*****内閣官房******************
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060130903&Mode=0
平成25年9月3日
内閣官房
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集について
政府においては、これまで、国民の知る権利や取材の自由等を十分に尊重しつつ、
様々な論点についての検討を進めながら、秘密保全に関する法制の整備のための法
案化作業に取り組んできましたが、この度、その検討結果を概要として取りまとめま
した。
その内容は別紙のとおりですので、これについて御意見のある方は、下記の要領に
従って御意見を提出してください。
1 意見募集対象
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」
2 意見提出期限
平成25年9月17日(火)必着(郵送の場合は同日消印有効)
3 意見提出方法
御意見については、次のいずれかの方法により、日本語にて提出してください。
(1) 電子メールの場合
以下のメールアドレスに送信してください。
tokuteihimitu@cas.go.jp
※ 文字化け等を防ぐため、半角カナ、丸数字、特殊文字は使用しないでください。
(2) 郵送の場合
以下の宛先に送付してください。
〒100-8968 東京都千代田区1-6-1
内閣官房内閣情報調査室「意見募集」係宛
(3) FAXの場合
以下のFAX番号・宛先に送信してください。
03‐3592‐2307
内閣官房内閣情報調査室「意見募集」係宛
4 注意事項
・御意見を正確に把握する必要があるため、電話による御意見の受付は対応いたし
かねますのであらかじめご了承ください。
・お寄せいただいた御意見に対する個別の回答はいたしかねますので、あらかじめ
御了承ください。
・住所、電話番号及びメールアドレスについては、御意見の内容確認等の連絡目的
に限って利用させていただきます。
【お問い合わせ先】
内閣官房内閣情報調査室
電話:03-5253-2111(代表)
********特定秘密の保護に関する法律案の概要************************
特定秘密の保護に関する法律案の概要
第1 趣旨
我が国の安全保障に関する事項のうち特に秘匿することが必要であるものについ
て、これを適確に保護する体制を確立した上で収集し、整理し、及び活用することが
重要であることに鑑み、当該事項の保護に関し、特定秘密の指定及び取扱者の制限そ
の他の必要な事項を定めることにより、その漏えいの防止を図り、もって国及び国民
の安全の確保に資する。
第2 概要
1 特定秘密の管理に関する措置
(1) 行政機関における特定秘密の指定等
ア行政機関(※)の長は、別表に該当する事項(公になっていないものに限る。)
であって、その漏えいが我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるた
め、特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定するものとする。
※ 行政機関の範囲及び単位を情報公開法、行政機関個人情報保護法及び公文
書管理法と同様に定義。
イ行政機関の長は、指定の際には有効期間(上限5年で更新可能)を定めるもの
とする。有効期間満了前においても、アの要件を欠くに至ったときは速やかに指
定を解除するものとする。
ウ行政機関の長は、指定の際には、政令で定めるところにより、当該行政機関に
おいて当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲を定めるものとする。
エ特定秘密の取扱いの業務を行うことができる者は、(3)の適性評価により特定
秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認められた行政
機関の職員若しくは契約業者の役職員又は都道府県警察の職員(3(2)において
「取扱業務適性職員等」という。)に限るものとする。ただし、行政機関の長、
国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官その他職
務の特性等を勘案して政令で定める者については、(3)の適性評価を要しないも
のとする。
オ行政機関の長は、指定をしたときは、指定に係る事項が記載された文書に特定
秘密の表示をすることその他の当該事項が特定秘密である旨を明らかにし、及び
これを保護するために必要なものとして政令で定める措置を講ずるものとする。
- 2 -
(2) 特定秘密の提供
ア行政機関の長は、安全保障上の必要により他の行政機関に特定秘密を提供する
ときは、当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他当該他の行政
機関による特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、
当該他の行政機関の長と協議するものとする。この場合において、当該他の行政
機関の長は、(1)ウ及びオの措置を講ずるほか、当該協議の結果に従い、その職
員に特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。
イ警察庁長官は、安全保障上の必要により都道府県警察に特定秘密を提供すると
きは、当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる職員の範囲その他当該都道府県警
察による特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、当
該都道府県警察に指示するものとする。この場合において、当該都道府県警察の
警視総監又は道府県警察本部長(以下「警察本部長」と総称する。)は、(1)ウ及
びオの措置を講ずるほか、当該指示に従い、その職員に特定秘密の取扱いの業務
を行わせるものとする。
ウ行政機関の長は、安全保障上の特段の必要により契約業者に特定秘密を提供す
るときは、当該特定秘密の取扱いの業務を行わせる役職員の範囲その他当該契約
業者による特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める事項について、
当該契約業者との契約に定めるものとする。この場合において、当該契約業者は、
当該契約に従い、その役職員に特定秘密の取扱いの業務を行わせるものとする。
エアからウまでによる場合のほか、行政機関の長は、特定秘密の提供を受ける者
が当該特定秘密を各議院若しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が行う
審査若しくは調査で公開されないもの、刑事事件の捜査(刑事訴訟法第316条の27
第1項の規定により提示する場合のほか、捜査機関以外の者に当該特定秘密を提
供することがないと認められるものに限る。)その他公益上特に必要があると認
められる業務若しくは手続において使用する場合であって、当該特定秘密を使用
し、若しくは知る者の範囲を制限すること、当該業務若しくは手続以外に当該特
定秘密が使用されないようにすることその他当該特定秘密を使用し、若しくは知
る者がこれを保護するために必要なものとして政令で定める措置を講じ、かつ、
我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき又は民事訴訟
法第223条第6項若しくは情報公開・個人情報保護審査会設置法第9条第1項の
規定により提示する場合に限り、特定秘密を提供することができるものとする。
(3) 適性評価の実施
- 3 -
ア適性評価は、特定秘密の取扱いの業務を行うことが見込まれる行政機関の職員
若しくは契約業者の役職員又は都道府県警察の職員(以下「行政機関職員等」と
いう。)の同意を得て、次に掲げる事項について、当該行政機関職員等が特定秘
密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがあるかどうかという観点
から、行政機関の長又は警察本部長が行うものとする。
① 外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全への脅威とな
る諜報その他の活動並びにテロ活動(政治上その他の主義主張に基づき、国家
若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人
を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為を行う活動をいう。以下
同じ。)との関係に関する事項(当該行政機関職員等の家族及び同居人の氏名、
生年月日、国籍及び住所を含む。)
② 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
③ 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
④ 薬物の濫用及び影響に関する事項
⑤ 精神疾患に関する事項
⑥ 飲酒についての節度に関する事項
⑦ 信用状態その他の経済的な状況に関する事項
イ行政機関の長又は警察本部長は、調査を実施するため必要な範囲内において、
当該行政機関職員等若しくはその関係者に質問し、当該行政機関職員等に資料の
提出を求め、又は公務所若しくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求め
ることができるものとする。
ウ行政機関の長又は警察本部長は、適性評価を実施したときは、特定秘密の取扱
いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認めるかどうかの結果を当
該行政機関職員等に対し通知するものとする。
エ行政機関の長又は警察本部長は、適性評価に関する苦情に適切に対応するもの
とする。
オ①適性評価の実施について同意をしなかったこと、②特定秘密の取扱いの業務
を行った場合にこれを漏らすおそれがないと認めるかどうかの結果及び③適性評
価の実施に当たって取得する個人情報については、国家公務員法上の懲戒の事由
等に該当する疑いがある場合を除き、目的外での利用及び提供を禁止する。
2 特定秘密の漏えい等に対する罰則
- 4 -
(1) 次に掲げる者による故意又は過失による漏えいを処罰する。
ア特定秘密を取り扱うことを業務とする者(自由刑の上限は懲役10年)
イ1(2)エにより特定秘密を知得した者(自由刑の上限は懲役5年)
(2) 人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為、財物の窃取、施設への侵入、
不正アクセス行為その他の特定秘密の保有者の管理を害する行為による特定秘密の
取得行為を処罰する(自由刑の上限は懲役10年)。
(3) (1)(故意に限る。)又は(2)の行為の未遂、共謀、教唆又は煽動を処罰する。
3 その他
(1) 拡張解釈の禁止に関する規定
本法の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に
侵害するようなことがあってはならない旨を定める。
(2) 施行期日に関する規定
公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日とする。ただし、特
定秘密の取扱いの業務を行うことができる者を取扱業務適性職員等に限定する旨の
規定は、公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日とする。
(3) 自衛隊法の一部改正及びそれに伴う経過措置に関する規定
自衛隊法の防衛秘密に関する規定を削除するとともに、本法の施行日の前日にお
いて防衛秘密として指定されている事項を施行日に防衛大臣が特定秘密として指定
した事項とみなす等の経過措置を定める。
- 5 -
別表
【第1号(防衛に関する事項)】(自衛隊法別表第4に相当)
イ自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究
ロ防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報
ハロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ防衛力の整備に関する見積り若しくは計画又は研究
ホ武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物(船舶を含む。チ及びリにお
いて同じ。)の種類又は数量
ヘ防衛の用に供する通信網の構成又は通信の方法
ト防衛の用に供する暗号
チ武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段
階のものの仕様、性能又は使用方法
リ武器、弾薬、航空機その他の防衛の用に供する物又はこれらの物の研究開発段
階のものの製作、検査、修理又は試験の方法
ヌ防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途(ヘに掲げるものを除く。)
【第2号(外交に関する事項)】
イ安全保障に関する外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容
ロ安全保障のために我が国が実施する貨物の輸出若しくは輸入の禁止その他の措
置又はその方針(第1号イ若しくはニ、第3号イ又は第4号イに掲げるものを除
く。)
ハ安全保障に関し収集した条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な
情報その他の重要な情報(第1号ロ、第3号ロ又は第4号ロに掲げるものを除く。)
ニハに掲げる情報の収集整理又はその能力
ホ外務省本省と在外公館との間の通信その他の外交の用に供する暗号
- 6 -
【第3号(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項)】
イ外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全への脅威となる
諜報その他の活動による被害の発生・拡大の防止(以下「外国の利益を図る目的
で行われる安全脅威活動の防止」という。)のための措置又はこれに関する計画
若しくは研究
ロ外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関し収集した国際機関
又は外国の行政機関からの情報その他の重要な情報
ハロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニ外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止の用に供する暗号
【第4号(テロ活動防止に関する事項)】
イテロ活動による被害の発生・拡大の防止(以下「テロ活動防止」という。)の
ための措置又はこれに関する計画若しくは研究
ロテロ活動防止に関し収集した国際機関又は外国の行政機関からの情報その他の
重要な情報
ハロに掲げる情報の収集整理又はその能力
ニテロ活動防止の用に供する暗号
特段の事情を認めない一様な対応に疑問をいだきます。
**********毎日新聞(2013/09/12)*********************
http://mainichi.jp/select/news/20130912k0000e040235000c.html
温泉施設:入れ墨で先住民マオリ女性の入浴断る 北海道
毎日新聞 2013年09月12日 15時13分
北海道恵庭市内の温泉施設が、顔に入れ墨のあるニュージーランドの先住民マオリの女性(60)の入浴を断っていたことが12日、温泉施設などへの取材で分かった。8日午後、従業員が入浴を断ったという。
女性はマオリ語講師で、伝統文化の入れ墨を唇とあごに入れている。北海道平取町で開かれていた先住民族の言語を学ぶ会合に招かれていた。関係者が「差別ではないか」と抗議したが、温泉施設側は「利用者に安心して入浴していただくため、一様に断っている」と受け入れなかった。
温泉施設は取材に対し「伝統文化であっても、一般の方からすれば入れ墨の背景は判断できない」と説明している。(共同)
地域医療研修を受けられる先生がたへ、
昨年度は、聖路加国際病院の五名の先生方に、本年度は、三名の先生方に、当院を地域臨床研修の場に選んでいただきました。
何人でも、お受けいたしますので、お待ちいたしております。
「医療法人小坂成育会 こども元気クリニック・病児保育室」の地域医療研修内容をご紹介いたします。
1. どんなクリニック?
1994年(平成6年)広島大学医学部卒業後、聖路加国際病院小児科レジデントを2年間し、その後、東京女子医科大学循環器小児科で研修、同大で医学博士号取得。日本小児科学会認定小児科専門医。
2001年(平成13年)月島の地に開業した小児科クリニックです。中央区の地で初めて病児保育を開設し、現在中央区には聖路加病院を含め3地域に展開している病児・病後児保育の原型を中央区行政とともに築きました。
2005年(平成17年)子育て支援をするサークルやNPOの活動の拠点として子育て広場「あすなろの木」を開設、現在、病児保育とともに自主運営しています。
2007年(平成19年)地元中央区の区議会議員(無所属)となり、議員として子育て支援や保健医療福祉の充実を議会の場で推進。2011年(平成23年)、震災直後の統一地方選において、築地市場の土壌汚染地への移転を止め現在地で再整備を実現することその他の理由により中央区長選挙に立つも現職に大敗(次点)しました。
2012年(平成24年)法科大学院入学、診療終了後の夜間に大学院に通い、法律学を学んでいます。つい先日、都内弁護士事務所で法実務研修をさせていただきました。
みんなの子育て広場「あすなろの木」を支援し、そして、病児保育併設する小児科クリニックです。
2. 地域研修の目標:「一般小児科外来が、できるようになること」 「地域に根ざした町医者の役割を、考えること」「法的思考を医学に生かすこと」
(1)「一般小児科外来が、できるようになること」
一般小児科外来とは、すなわち、感染症が大半の外来診察と治療・処方箋作成、予防接種(いかに痛くなく打つか)、乳幼児健診、園医活動、子どもの心の相談(含、発達障害)など。
一週間の研修なら週の後半に、二週間の研修なら二週間目に、研修の先生に診察の主体になっていただき、私は陪席し、随時コメント補助します。
(2)「地域に根ざした町医者の役割を、考えること」
砂川恵伸先生は、「医師として最も重要な事は「主治医観を常に持つ事」である。それが他科患者であり、併科・兼科して主たる責任がなくても「あの患者さん、その後どうなっただろう」と気に掛け、定期的にcheckする事。自分が1%でも関わっているのでれば、その責任は全うする事。」といいます。
では、町医者の小児科医は、かかりつけ医としてどうあるべきか。一緒に考えたいと思います。
(3)「法的思考を医学に生かすこと」
法科大学院に通い、法律学を学んでいます。
7.であげるように、医療と法の狭間には、多種多様の諸問題があります。
一緒に、考えたいと思います。
3. 地域研修のオプション(参加は強制ではございません!でも参加は大歓迎)
もし、ご希望があれば、研修期間中に私が行っているすべての活動のうち、関心のあるものにご一緒いただいて構いません。
* 病児保育スタッフとして:病気の子の一日のケアに保育師といっしょに入る。
* 保育スタッフとして:園医をしている保育園に依頼して、保育スタッフとして、一日保育師体験プログラムを準備します。
* 子育て支援活動:子育て広場あすなろの木の活動に加わって、親御さん・子どもといっしょに遊ぶ。
* 親御さん向けや病児デイケアスタッフ向けの勉強会:病児への対処法や事故予防等の講習会を適宜開催しています。
* 医政、区政に関連した活動:議会や委員会傍聴。医政としては、「日本の子ども達へのワクチン接種を世界標準に!」「麻しん接種率の向上キャンペーン」、区政としては、「築地市場の現在地再整備」や「まちづくり」に関連した活動を行っています。ご要望があれば、早朝の築地市場で、マグロの競りを一緒にみましょう。
*大学院で学んだ「医療過誤訴訟」に関連して、医師と患者の信頼関係の構築にはどうあるべきか、一緒に考えたいと思います。
*最高裁判所や東京高等裁判所・地方裁判所の傍聴にご一緒いただいて構いません。
4. もっと、詳しく知るには
* 昨年度は、小児科の松井先生、内科の宇仁先生、吉田先生、外科の藤川先生、岡本先生、一昨年度は、内科の駒井先生と小児科の石田先生が来られました。様子を聞いてみてください。
*本年度は、石井先生、近藤先生(9月予定)、前田先生(11月予定)。
* 月に一回程度の割合で小児平日準夜間救急診療に聖路加小児センターに来ています。その時にでも、聞いてください。近いところで、9月19日木曜日。
*毎日、http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki から日々思う事がらを情報発信しています。
5. 研修される先生へ
遅くとも、研修開始一週間前までに、一度ご連絡を(03-5547-1191または、kazuki.kosaka@e-kosaka.jp)いただければ幸いです。
どのような研修をご希望されているか、調整させていただきます。
できることなら、研修に来られる先生が得意とされている分野について、親御さんへのプレゼンの機会が研修期間中に作れればなおよいと感じます。
6. 最後にひとこと
小児科医師が区政に関わることは、さまざまな考え方があるところと存じます。ある種、異色な小児科医師であると思います。
私は、「まちが健康でなければ、そこで生活する人は健康になれない」と信じています。医療周辺のシステム、法が少しよくなることで、医療や子育て環境が飛躍的によくなることがございますし、その逆もまた真で、いくら医師ががんばっても成果が出ないこともあります。診察室から飛び出して、システムや法を少しでもよい方向へと導けないかと奮闘しているところです。
研修に来られた先生には、クリニックの研修体験を通じて、医療を別の角度からみる機会を提供することができれば幸いであると考えています。
研修に来られた先生方と意見交換することで、私自身が新たな発見をすることが今までも多々ございました。
ぜひとも皆様とご一緒できることを心待ちにしています。
実は、この地域医療研修を一番楽しみにしているのは、自分のほうではないかと思っています。
7. 医療と法の狭間にある諸問題で、具体的に問題意識をもつことがら
<新生児、乳幼児期>
○ 小児虐待を防ぐとりくみ。とくに、親にさえ気づかれずに妊娠し、出産し、そして、怖くなり、生んだ子を捨ててしまうケース(虐待死で一番多い)をどうすれば防ぐことができるかの解決策を探す。
○ 親の離婚が、子どもに与える影響は、多大である。「子の福祉」「子の利益」が真に第一にされるような紛争解決策を探す。その子を代弁する小児科医や児童精神科医の介入する仕組み作り。
<学童期>
○ 発達障害の家庭への支援。
○ いじめ対策。いじめで自殺に追い込まれるようなことがないようにする対策。
<思春期>
○ 思春期の子に与える家庭・家族の問題の影響を最小限にする支援。
○ 適切な対応がなされるなゆえに犯罪に走ってしまうことを防止、及び、更正できる環境の整備。
<成人期>
○ うつ等で自殺にいたらぬようにする仕組みづくり。
○ アルコール中毒、アルコールから肝臓を壊している等、犯罪者が、アルコール関連疾患をもつことが多い。アルコール中毒対策。
<老年期>
○ 認知症になったとしても、最後まで個人の尊厳を保ちつつ、死を全う出来る仕組みづくり。
<医療分野>
○ 医師と患者が不幸な医療訴訟に至らぬようにするため、適切な医療を受けることができるための患者知識の向上。
○ 訴訟において、当事者の関係者が医師の場合に、カルテ改ざんなど医療倫理に反する医師の行動を正すこと。
○ 医療倫理が守られる中での、最先端医療技術が開発されることの見守り、提言。
<リスクマネジメント>
○ セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントなどの問題が生じることのない予防。働きざかりの時期は、子どもも幼く、職場のトラブルが、家庭に波及しないでほしいという願いがある。
○ 相続問題が生じぬように、基礎知識の普及。相続問題により、骨肉の争いになることは、お金よりももっと大切なものを失う不幸な結果になっている。
等
8. ある地域医療研修のオプション活動例(注、もちろん、メインは一般小児科外来で、そのうえでのオプションです。)
<宇仁先生2012年7/2-7/6>
7/5木 日本のワクチンを世界標準に!デモ参加
7/6金 保育園健診
当院病児保育室 保育実習
<松井先生2012年7/30-8/10>
7/31火 築地市場移転問題関連で弁護士事務所で会議
8/6月 住吉神社大祭 お神輿 昼休憩時間一緒に担ぐ
8/7火 自然とふれあおうわんぱくkids 医療班協力で静岡県伊東市宇佐美へ
8/8水 宇仁先生とともに懇親会
8/9木 築地市場移転問題関連で国会議員会館へ
8/10金 大学院 集中講義 「医療と法」 三コマ受講
8/8-8/10 外来の合間をみて、当院病児保育室 保育実習
<吉田先生2012年9/10-9/14>
9/10月 中央区議会保健福祉委員会傍聴
9/11火 中央区議会環境建設委員会傍聴
9/12水 一人一票裁判、最高裁判所傍聴へ(実は、抽選落ちで傍聴できず。)
築地市場移転問題関連で国会議員会館へ
9/13木 子育て広場 見学
9/14金 築地市場で早朝マグロ競り見学+寿司
聖路加病院小児科細谷先生回診
当院病児保育室 保育実習
などなど・・・
「法はひとを守るために存在する」
そして、「政治が科学的真理をゆがめてはならない」これらを人生の命題として持っています。
以下、読売新聞の社説は、三つ目の命題に、引っかかります。
政治が、無理やり年間1ミリ・シーベルト以上でも大丈夫と言わしめようとしています。
ひとの健康が犠牲にされようとしておりたいへん危惧いたします。
*******読売新聞*********************
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130911-OYT1T01412.htm
福島の除染計画 「1ミリ・シーベルト」への拘りを捨てたい(9月12日付・読売社説)
避難生活が続く住民の帰還を見据え、効率的な除染を迅速に進めてもらいたい。
東京電力福島第一原子力発電所周辺の除染が思うように進まず、環境省が計画の見直しを発表した。
環境省直轄で除染を実施している11市町村のうち、7市町村で当初予定の来年3月末までに作業を終えるめどが立たないためだ。年内にも市町村ごとに新たな計画を策定するという。
除染対象の土地所有者が各地に避難し、同意の取り付けが難航している。はぎ取った表土などを保管する仮置き場の設置に対し、住民の理解が得られない。仮置き場の汚染土を集約して保管する中間貯蔵施設の建設も見通せない。
こうした現状を考えれば、計画見直しはやむを得ない面がある。環境省は住民に粘り強く説明し、協力を得ていかねばならない。
除染の効率化も欠かせない。表土の削り取りや路面洗浄などの作業に最新機材を投入し、スピードアップを図る必要がある。
今回の計画見直しで、環境省は森林除染の対象を広げた。除染拡大を求める住民の声を受けたものだ。だが、早期帰還のためには、森林の除染は極力、住民の生活圏周辺に限定すべきだ。
大規模に森林除染を行えば、終了時期が見通せず、除染費用は際限なく膨らむ。大量の汚染土の置き場を確保するのも困難だ。草木を広範囲に取り除けば、土砂災害を引き起こす危険もある。
一方、11市町村のうち、田村市では、除染が完了した。楢葉町、大熊町、川内村では今年度内に作業を終える見通しだ。今後は、住民の生活再建を視野に入れたインフラ整備なども進めていくことが求められる。
政府は、住民帰還の目安となる年間被曝ひばく線量を「20ミリ・シーベルト以下」としている。国際放射線防護委員会の提言に沿った数値だ。
その上で、長期的には「年間1ミリ・シーベルト以下」に下げる方針だ。
しかし、住民の中には、直ちに1ミリ・シーベルト以下にするよう拘こだわる声が依然、少なくない。
人間は宇宙や大地から放射線を浴びて生活している。病院のCT検査では、1回の被曝線量が約8ミリ・シーベルトになることがある。
専門家は、広島と長崎の被爆者に対する追跡調査の結果、積算線量が100ミリ・シーベルト以下の被曝では、がんとの因果関係は認められていないと指摘する。
政府は、放射能の正しい情報を周知していくことが大切だ。
(2013年9月12日01時31分 読売新聞)
ご都合のつく方は、ぜひ、傍聴願います。
裁判のあと、報告会があり、その後記者会見も開催されます。
以下、原告団のひとり一級建築士であられる水谷和子さんからの裁判のご案内です。
****以下、水谷さんによるご案内文******
東京都による「豊洲土壌汚染条件ねつ造」の仕組みを明らかにし、汚染地購入の責任を問う裁判。大量の汚染隠しと、今も続く汚染調査不足もこの東京都の「虚偽」から始まった・・・
「築地市場移転問題」汚染地購入裁判のご案内
築地市場廃止と汚染地豊洲新市場問題に関連して、9月中に2回の公判があります。
1)★豊洲移転公金支出金返還訴訟(2006年購入分)中間判決!
2013年9月11日(水) 15時半~ 東京地方裁判所 522号法廷
★報告会 (公判後)弁護士会館5階 (弁護士会館は地裁の隣にあります。)
★記者会見 17時~ 東京地裁ビル内 司法記者クラブ
2)豊洲移転公金支出金返還訴訟(2011年購入分)
2013年9月19日(木) 10時半~ 東京地方裁判所 703号法廷
この「公金支出金返還請求裁判」は豊洲新市場用地購入問題で、前都知事の賠償責任を問う裁判です。
9月11日の裁判は、都が、東京ガスとの間で同社の汚染対策が汚染の多くを残すことを認める約束を交わしておきながら、一方で汚染対策の責任は汚染原因者の東京ガスにあり、後で汚染が見つかったら同社が処理する、若しくは同社の対策工事により汚染は既に無いとする虚偽の条件の下に、汚染を考慮しない価格で土地を購入したことに関するものです。
不動産の評価過程で都は三度も虚偽の汚染条件を提示し、不動産鑑定士及び財産価格審議会を騙しました。
同時に都は、築地の関係者や都議会に対しても汚染処理の工事が終わっているとして、安全宣言を繰り返しました。
9月11日には、この2006年購入分の裁判の中間判決があります。監査請求の期限を巡る判決ですが、勝訴の場合いよいよ本論に入り、本格的に都の不正行為(汚染条件のねつ造と汚染地購入)を追及することになります。敗訴なら地裁での裁判の継続が出来なくなります。争われているのは、朝日新聞の記事(2010年1月5日) が出るまで監査請求ができなかったか、またその記事から住民監査請(4月1日)至る87日間が請求の期限を超えているかどうかです。
本論に入れば(証拠が揃っているだけに)都が不利になることは確実と思われますが、裁判所が都の主張通り門前払いにしてしまうかどうか、是非、ご注目と監視をよろしくお願いします。
尚、9月19日の2011年購入分の裁判は、専門家会議で東京ガスによる大量の残置汚染が発覚した後の問題ですが、財産価格審議会は汚染について審議を放棄し、都と東京ガスの協議に委ねるという、こちらも不当な価格評価をしました。この裁判は公設市場の移転問題を通して都の不正を正し、私たちに地方自治を取り戻すための裁判です。
傍聴がなによりの支えです。数多くの皆様のご参加をお待ちします。
―――――――――――――――――――――――――――― 以上原告メンバー 水谷(記)
中央区月島3―30-4 イイジマビル1F 築地市場移転問題裁判原告団 事務局
☆原告団メンバー 水谷 和子 (みずのや)宛てのお問い合わせは下記にお願いします。
携帯090-7016-0915 FAX020-4663-7242
メール mizunoyak@jcom.home.ne.jp
携帯メール mizunoyaka@ezweb.ne.jp