北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

木造密集を考える~世田谷・三軒茶屋界隈を歩く

2007-05-16 23:32:42 | Weblog
 今日は午後に、木造密集地域についてお勉強。

 今や木造密集地域の居住環境の改善は、国策ともなっていて、予想される関東地方の大地震に対する防災性を高めておくことは、もはや一自治体の問題を超えていると言えるのです。

 もっとも、火災に対する弱さや耐震性、救急活動の難しさなど、何を規準にエリアを考えるかで、微妙に国や都などの考え方に差があって、密集地区という指定のエリアは同じというわけでもありません。

 ただ大筋ではそうした地区が指定をされていて、様々な施策を使ってその環境改善に向けて努力がされています。

 しかしながら、この密集地区の改善というやつは実に難しい事業で、簡単に進んではいません。

 それには幾つかの理由がありますが、大きなものは、都市計画事業や道路整備事業のように法定事業として公が権力を発揮して進めるという性格のものではない、ということでしょう。

 あくまでも地域からの発案や、役所などからの提案に乗る、という形でしかも全員合意でなければ進められない、任意の事業なのです。

 おまけにこうした密集地区では、地主、アパートの所有・経営者、居住者という三種類の関係者がいて、この人達の全員合意が必要と言うことで、非常に手間のかかることなのです。

 さらには、区画整理や再開発事業のように、土地を有効に活用して自分の権利のある部分が価値を増す、というような経済的に大きなメリットのある事業でもありません。

 ですから、特に居住者にとっては「放っておいてくれ」という気分になるのも当然と言えば当然。今までと環境が変わるということには抵抗があるものです。

 もっとも、アパートの所有者などは、もう立て替えが必要な建物が現在の法律には既存不適格なため、そのままでは立て替えられないという事情もあって、補助金などが入って、持ち出しが少なくなるのならこの際やりたい、という人がいることも事実。

 こうした事情をくみ取りながら、関係者や地域の合意をとりつけるという、実に地道なまちづくりが木造密集対策事業なのです。

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 そんなわけで、そうした基礎知識を頭に入れながら、午後に世田谷から三軒茶屋のあたりの密集地区を歩き、この辺りで行われている事業について現地を視察してきました。

 世田谷というと高級住宅街をイメージしますが、聖徳太子の像があることで知られる円泉寺のあたりはそのいわれから「太子堂」と言われる密集地域。

 このあたりでも病院の移転などに伴う高層マンションの建築が進められ、併せて細い道路を思い切って道路事業として拡幅するという事業が進められようとしています。

 現地を徒歩で歩きながら見ていると、確かにとっても車が入るのが無理な道路がたくさんあって、地震などで多発的に火災が発生したりすると大変な様子が想像されます。

 災害さえ発生しなければ実に平和な地区でもありますが、こうしたところでは土地の境界などもはっきりとは確定していないところが多く、焼け野原などになろうものなら、まず土地の所有関係をはっきりさせてからでなければ復興事業も始められないという事情もあるようです。

 こうしたところでの事業は事が起こる前の「事前復興」とも呼んでいます。事が起こってからのことを想像する想像力が必要です。

    ※    ※    ※    ※

 三軒茶屋からの帰りは、世田谷線という電車に乗って豪徳寺まで揺られて帰ってきました。

 家並みの中を縫うように走る世田谷線もなかなか味わいがありますね。東京って不思議な景色がたくさん残っているところなのです。
コメント (2)
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