大震災から一か月が経過し、新年度の人事異動もひと段落。
防災担当の方から、各課に対して今回の震災対応での最前線で感じたトラブルや困りごと、改善提案などを集約した認識共有会議を開催しました。
実に多くの意見が寄せられて、なかなか解決できない問題から気が付けばすぐにでもできそうな事柄まで実に幅の広い問題意識が改めてわかりました。
まだ記憶に新しいうちにこうした課題を整理しておくことは極めて意義が深く、次の災害時に向けた格好の資料になる。
問題点を大別すると、①市民が避難した避難所における問題点、②情報の収集・発信・受信体制の不備、③橋梁の通行止め問題、④要援護者に対する対策、⑤地域防災計画等の見直し問題、などに分けられるようです。以下少しおさらいをしてみます。
【1.避難所における問題】
避難所ではテレビやラジオのないところも多かったようで、市内の被災状況などがほとんどわからないことが不安を増したようでした。
現場に詰めた職員たちも、被災状況や情報を訊かれても職員自身に情報が入っていませんでした。これは大いに改善の必要があります。
また、一晩で避難民1600人分のお弁当を用意することになりましたが、大手のショッピングセンターなど販売を中心とするところでは「店にあるもの以外は調達できません」と言われたとのこと。つまり、おにぎりのように調理するようなものは販売系のショッピングセンターでは手に入らないわけで、コンビニなどもあっという間に売り切れてしまって役に立ちません。
それに代わって弁当調達に力を発揮してくれたのはまちの食堂やお弁当屋さんたち。お弁当と言ってもおにぎりが二個の簡単なものでしたが、それでも大量のご飯を炊いて調理して運ぶとなるとそれなりに時間がかかります。
やはり調理をするという点で時間のロスが出ますし、おまけに市内の枢要な橋が通行止めでは運ぶのにも時間のロスが発生。現地に何時に食料が届くのかを正確に伝えることも難しくなり、現地ではやきもきしたとのこと。
これらなどは、橋が落ちてしまったらどうする、というところまでのシミュレーションが必要だったということでしょう。
※ ※ ※ ※ ※
また、乾パン、ボトル水、毛布などの備蓄もいざ使って見ると足りなかったり、紙おむつや赤ちゃん用の粉ミルク、マスクなど、あればいいなと思う品々にも気が付いたよう。これらもノウハウを集約しておく必要があるでしょう。
【2.情報の収集・集約・発信体制の不備】
実際には大津波警報が発令されると職員自身も危険個所へは赴けないので、詳細な被害状況を収集することが難しくなります。
しかし消防本部によるライブカメラや現実には道路封鎖のために現地へ赴いた職員など、現場を見ている目もあったわけなので、そうした情報をとにかく集約する体制を整えるべきでした。
またホームページの担当は、情報は入ってくるもののそれの信ぴょう性を確認して何を発信すべきかの判断に混乱があったと言います。
特にラジオでは地元FM局の「FM釧路」の方が市役所に詰めてくれて道路交通情報など与えられた情報をひたすら放送し続けてくれていました。
しかしそこへも流すべき情報が定期的に的確にそろわなかったことや、FM釧路ではそうした情報を流しているということが周知されていなかったこと、またラジオのない避難所も多かったうえに、テレビのあるところではテレビとラジオの両方から音を流すのは現実的ではないなど、課題も多く見つかりました。
これらについてはネットや衛星電話など避難所や職員への情報手段の確保、職員が携帯でもアクセスしやすい情報提供サイトの共有や、ツイッターやフェイスブック、ブログなど新しい情報発信ツールの利用可能性などについて議論と対応が必要になるでしょう。
【3.橋梁の通行止め問題】
今回の大津波警報では、海に近いところから幣舞橋(国道)、久寿里橋(市道)、旭橋(道道)という管理者の異なる三つの橋がすべて通行止めになりました。
【中央の三つの橋が通子止めになると交通はマヒ状態です】
橋が落ちていなくても通行できないのですから人とモノの流れは大きく阻害されました。
おまけに、「警報」が出ている間は機械的に通行止めになるというマニュアルのために、大津波警報(6m想定)が津波警報(2m想定)に下がってもなお道路は通行止めが続きました。
市道の久寿里橋だけは市長が管理者と言うことで津波警報に格下げになった段階で通行止めを解除したのですが、この間の不便さは大変なものでした。
今後は道路管理者に警察を加えたテーブルで、もっと現実的な通行止め解除の条件に付いて話し合いをしようと考えています。
しかし同時に、もしも橋が落ちてしまったらどうする、ということも考えておかなくてはならないので、それもまた想定が必要です。
【4.要援護者の問題】
釧路には現在要援護者登録者の名簿が780名を数えています。
津波による避難となった今回は、その名簿にしたがって担当者が一人一人連絡を試みましたが、すでに非難して連絡がつかない場合や、「うちは大丈夫だから要りません」というところなどがあって、非効率だったという反省がありました。
また職員も対応しますが、地域住民同士で対応している要援護者も多く、また市役所内部でも福祉班、総務班、市民環境班、消防班など対応する部所が複数ありそれらに統一が図られるか検討が必要です。
さらに、上記で述べたように橋が通行できないという想定のもとで避難支援に迎えるのかというところをもっと入念に想定しておかなくてはなりません。
車いすによる避難者もいましたが、大変だったのはストレッチャーでなくては動けない方もいたということ。これらは一度消防本部まで取りに行ってから現地に向かったのだそうで、津波到達までの時間勝負の中では対応に一考が必要です。
※ ※ ※ ※ ※
こうした数多くの反省と意見を集約して今後は地域防災計画の見直しに反映させる必要があるでしょう。
これまでの災害想定はどれも一緒で、近くの避難所へ避難するというだけのものだったのですが、これからは津波による被害想定だけを別途おこして対応するような事前計画が必要です。
さらに、被害を受けてもなお業務の継続と復旧を図るための「業務継続計画(BCP)」と呼ばれるものも策定することが必要です。
そしてなにより、今回の地震と津波を改めてきっかけとして、市民に対する防災・避難意識の向上を図りたいところです。
ワークショップや対話集会など、きめ細かな対応をモデル的に行うことで関心を寄せる工夫をしたいものです。
防災は典型的な生涯学習の一項目。被災時には自助が七割で共助は二割、公助は一割と割り切って、自分自身の命の助かり方について関心を寄せていただきたいものです。
防災担当の方から、各課に対して今回の震災対応での最前線で感じたトラブルや困りごと、改善提案などを集約した認識共有会議を開催しました。
実に多くの意見が寄せられて、なかなか解決できない問題から気が付けばすぐにでもできそうな事柄まで実に幅の広い問題意識が改めてわかりました。
まだ記憶に新しいうちにこうした課題を整理しておくことは極めて意義が深く、次の災害時に向けた格好の資料になる。
問題点を大別すると、①市民が避難した避難所における問題点、②情報の収集・発信・受信体制の不備、③橋梁の通行止め問題、④要援護者に対する対策、⑤地域防災計画等の見直し問題、などに分けられるようです。以下少しおさらいをしてみます。
【1.避難所における問題】
避難所ではテレビやラジオのないところも多かったようで、市内の被災状況などがほとんどわからないことが不安を増したようでした。
現場に詰めた職員たちも、被災状況や情報を訊かれても職員自身に情報が入っていませんでした。これは大いに改善の必要があります。
また、一晩で避難民1600人分のお弁当を用意することになりましたが、大手のショッピングセンターなど販売を中心とするところでは「店にあるもの以外は調達できません」と言われたとのこと。つまり、おにぎりのように調理するようなものは販売系のショッピングセンターでは手に入らないわけで、コンビニなどもあっという間に売り切れてしまって役に立ちません。
それに代わって弁当調達に力を発揮してくれたのはまちの食堂やお弁当屋さんたち。お弁当と言ってもおにぎりが二個の簡単なものでしたが、それでも大量のご飯を炊いて調理して運ぶとなるとそれなりに時間がかかります。
やはり調理をするという点で時間のロスが出ますし、おまけに市内の枢要な橋が通行止めでは運ぶのにも時間のロスが発生。現地に何時に食料が届くのかを正確に伝えることも難しくなり、現地ではやきもきしたとのこと。
これらなどは、橋が落ちてしまったらどうする、というところまでのシミュレーションが必要だったということでしょう。
※ ※ ※ ※ ※
また、乾パン、ボトル水、毛布などの備蓄もいざ使って見ると足りなかったり、紙おむつや赤ちゃん用の粉ミルク、マスクなど、あればいいなと思う品々にも気が付いたよう。これらもノウハウを集約しておく必要があるでしょう。
【2.情報の収集・集約・発信体制の不備】
実際には大津波警報が発令されると職員自身も危険個所へは赴けないので、詳細な被害状況を収集することが難しくなります。
しかし消防本部によるライブカメラや現実には道路封鎖のために現地へ赴いた職員など、現場を見ている目もあったわけなので、そうした情報をとにかく集約する体制を整えるべきでした。
またホームページの担当は、情報は入ってくるもののそれの信ぴょう性を確認して何を発信すべきかの判断に混乱があったと言います。
特にラジオでは地元FM局の「FM釧路」の方が市役所に詰めてくれて道路交通情報など与えられた情報をひたすら放送し続けてくれていました。
しかしそこへも流すべき情報が定期的に的確にそろわなかったことや、FM釧路ではそうした情報を流しているということが周知されていなかったこと、またラジオのない避難所も多かったうえに、テレビのあるところではテレビとラジオの両方から音を流すのは現実的ではないなど、課題も多く見つかりました。
これらについてはネットや衛星電話など避難所や職員への情報手段の確保、職員が携帯でもアクセスしやすい情報提供サイトの共有や、ツイッターやフェイスブック、ブログなど新しい情報発信ツールの利用可能性などについて議論と対応が必要になるでしょう。
【3.橋梁の通行止め問題】
今回の大津波警報では、海に近いところから幣舞橋(国道)、久寿里橋(市道)、旭橋(道道)という管理者の異なる三つの橋がすべて通行止めになりました。
【中央の三つの橋が通子止めになると交通はマヒ状態です】
橋が落ちていなくても通行できないのですから人とモノの流れは大きく阻害されました。
おまけに、「警報」が出ている間は機械的に通行止めになるというマニュアルのために、大津波警報(6m想定)が津波警報(2m想定)に下がってもなお道路は通行止めが続きました。
市道の久寿里橋だけは市長が管理者と言うことで津波警報に格下げになった段階で通行止めを解除したのですが、この間の不便さは大変なものでした。
今後は道路管理者に警察を加えたテーブルで、もっと現実的な通行止め解除の条件に付いて話し合いをしようと考えています。
しかし同時に、もしも橋が落ちてしまったらどうする、ということも考えておかなくてはならないので、それもまた想定が必要です。
【4.要援護者の問題】
釧路には現在要援護者登録者の名簿が780名を数えています。
津波による避難となった今回は、その名簿にしたがって担当者が一人一人連絡を試みましたが、すでに非難して連絡がつかない場合や、「うちは大丈夫だから要りません」というところなどがあって、非効率だったという反省がありました。
また職員も対応しますが、地域住民同士で対応している要援護者も多く、また市役所内部でも福祉班、総務班、市民環境班、消防班など対応する部所が複数ありそれらに統一が図られるか検討が必要です。
さらに、上記で述べたように橋が通行できないという想定のもとで避難支援に迎えるのかというところをもっと入念に想定しておかなくてはなりません。
車いすによる避難者もいましたが、大変だったのはストレッチャーでなくては動けない方もいたということ。これらは一度消防本部まで取りに行ってから現地に向かったのだそうで、津波到達までの時間勝負の中では対応に一考が必要です。
※ ※ ※ ※ ※
こうした数多くの反省と意見を集約して今後は地域防災計画の見直しに反映させる必要があるでしょう。
これまでの災害想定はどれも一緒で、近くの避難所へ避難するというだけのものだったのですが、これからは津波による被害想定だけを別途おこして対応するような事前計画が必要です。
さらに、被害を受けてもなお業務の継続と復旧を図るための「業務継続計画(BCP)」と呼ばれるものも策定することが必要です。
そしてなにより、今回の地震と津波を改めてきっかけとして、市民に対する防災・避難意識の向上を図りたいところです。
ワークショップや対話集会など、きめ細かな対応をモデル的に行うことで関心を寄せる工夫をしたいものです。
防災は典型的な生涯学習の一項目。被災時には自助が七割で共助は二割、公助は一割と割り切って、自分自身の命の助かり方について関心を寄せていただきたいものです。