わが組織の機械舞台にはいろいろと異色な経歴を持つ人がいます。
今日も懇親会をしていたところ、「タイへ派遣されて大洪水被災地で支援活動をしてきました」という人がいました。
タイでの支援活動というのは、北海道開発局が持つ排水ポンプ車を現地へもちこんで、洪水で水に浸かった地域から水を吸い上げて川へ放水する排水作業をするというもの。
「へえ、何日間行っていたんですか?」
「18日間です。途中で輪番で休日を取りましたが、ひたすら作業に没頭していました」
「宿泊はどうしました?」
「はい、JICAさんの手配で、それなりのホテルを手内してもらえましたが、夜遅くに帰ってチームミーティングをして、報告書を書いたらあとは寝るだけでした」
「ポンプで水を吸い上げたと言いますが、どこの水をどこへ排水するのですか?」
「アユタヤの被災地の工業団地地区は、もともと低地で水がつきやすいことから、周りを輪中のように囲んであるんです。そこに水が入ったので、堤の外の川へ排水して水位を下げる作業をするんです」
「ずっと同じところで作業したのですか?」
「工業団地ばかりだと、日本の企業ばかり支援すると思われてもいけないと、市民の住む地域での排水作業もしましたよ。でも市民の住む地域は、早く水を流したくて堤を切ってしまっているところもあるので、事前の調査が欠かせませんでした」
民間企業も交えたこうした支援も日本の国力による、海外支援の一端です。日本の価値を高める地道な作業に、持てる能力を最大限に使っているのです。
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すると一緒に飲んでいた同僚から声がかかりました。
「彼はそのおかげで天皇陛下に謁見できたんですよ」
「ええ?本当ですか?」
「はい、こうした支援が評価をいただいて、皇居で大勢が謁見する機会に支援チームの一員として招いていただきました」
「ほほー、陛下とお話もできたんですか?」
「いえいえ、我々の一団がいたところへ陛下が来られると、皆下を向いてしまってとても顔を上げられなかったのですが、偶然目が合ってしまった人が声をかけられて、ずっとその人と話をしていました。特に皇后陛下が優しく話しかけられてくださいました」
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こうした市井の国民が国を代表して、我が国の地位を高めようとする努力をすれば、どこかでこうしたご褒美もいただけるのですね。
なんともうらやましい話ですが、ますます技術を磨き、質の高い機械力を高めて、これからも広く社会のために力を尽くさなくてはと背筋が伸びる思いです。
いや、仲間にもいろいろな人がいるものです。
【JICAのホームページ】より http://bit.ly/11JrM1s