午前中に友人の課長を訪ねたところ、「滝野公園に熊が出てドタバタしています」とのこと。
そういえば昨日、札幌市南区の滝野公園で熊の足跡が見つかったために臨時閉園をしたということがニュースになっていました。
滝野公園は、札幌にある国営公園ですが、私も長く建設や管理に携わった思い出の公園です。
実は私がこの滝野公園事務所長をしていた平成12年に、まだ未開園だった中心ゾーンに熊がいるのが見つかりました。
このときも臨時閉園をしたのですが、なにしろ熊への対処は初めてだったので緊張するとともに、現状の正しい把握、対策方針の立案、それを関係者に説明してコンセンサスを得ること、対策の実施による再開園と、大変な騒動になりました。
このときは熊の専門家であるM先生に本当にお世話になりましたが、印象的だったのが、「ヒグマには二通りいます。一つは人間の気配を感じると恐がって逃げる『非問題熊』、そしてもう一つは人間は食べ物や美味しいものをもたらす熊にとっての有益な存在だと思うようになってしまった『問題熊』です」という発言でした。
人里で目撃されるだけならまだこのどちらかはわかりません。しかしその行動として、ゴミ箱を漁ったり、誰かが捨てた空き缶をなめたような痕跡が分かれば、これはもう人間社会を怖がらなくなってしまった問題熊となってしまいます。
これを明確に区別して考えて、しっかりとした対処をしなくてはならず、感情的に打ち殺して目の前からいなくしてしまえばよい、という考えは持つべきではない、という当時のアドバイスが今でも蘇ります。
さて、こうした予期せぬアクシデントに対する行動は「危機管理」と呼ばれます。
本来は起きる前の備えが重要なのですが、起きてからはなお一層その危機に対する姿勢が問われます。
現場は情報収集や対策の実行に大変でしょうけれど、一日も早く状況が安定して再開園の日が来ることを祈っています。
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そしてもう一つ世間を騒がせているのが、JR北海道の線路補修放置事件です。
線路の感覚が広がるのを放置しているというのは、専門家の間では「安全意識の欠落で、信じられない」という声が上がっていますが、まさに一般の市民にとっても信じられないというところだと思います。
線路の幅が広がっているということは脱線の危険性を放置しているということだという印象を持ってしまいます。
JR北海道はここのところ、火災や整備不良、脱線と様々な事故やアクシデントが頻発していますが、これもまた組織の危機管理が続いているということです。
危機管理の状況ではマスコミ等にも注目されますが、ここで問われるのがまさに危機に対する姿勢と言えるでしょう。
このときに資金や時間、手間を節約して最低限の対応をしたならば、仮にそれが再発した時に批判の声が倍返しで押し寄せてくることになります。
逆に、資金や手間を惜しまずに「そこまでやりますかねえ」と言われるくらいに大胆な対策を打っておけば、後に何かあっても、「あれだけやってもそうですか」と世間は納得しやすくなるというわけ。
かつて太平洋戦争中、ガダルカナル島で部隊が全滅しそこを奪還するために必要に見たない戦力を何度も投入してはことごとく撃破されるということがありました。
これは「戦力の逐次投入」と言われて、兵法では愚策とされています。
危機管理における対策は、大きく打っても打ち過ぎることはありません。まるでタバコの火を消すのに風呂桶一杯の水をかけるくらいの大胆さがあっても良いのです。
どちらの事案も、一日も早い正常化を祈りたいところです。