東京が2020年のオリンピック開催地に決定しました。東北大震災は東北だけの問題ではなく、日本全体を襲った厄災であり、そこからの復興を果たすためのシンボルとなるでしょう。
まずは素直に喜びを共にしたいところです。
事前の下馬評ではスペインのマドリードがライバルと目され、またトルコのイスタンブールであればイスラム世界初となることの意義を感じる意見などがあり、直前まで予断を許さない状況でした。
しかしそうした予想を覆して、東京という都市の治安、利便の良さや、財政的な運営力、そして国を挙げてのバックアップ体制を示したことなどが評価されて、結果的には他都市に大差をつける形となったようです。
招致委員会の声を聞くと、東京は前回立候補して落選した反省を踏まえて、チーム一丸となってロビー活動を展開してきた、とのこと。
ロビー活動とは、アメリカのグラント大統領がホワイトハウスではなく近くのホテルで葉巻を楽しんでいることを知った関係者が、このホテルのロビーで陳情活動をしたことからその名がついたと言われる。
共に共通の嗜好を持つ者の気安さや親しさからこうした形で情報を伝えお願い事をすることが有効だ、ということが知られて、やがてロビー活動と呼ばれるようになったのだそうです。
中国の古典に「嚢中(のうちゅう)の錐(きり)」という格言があるが、錐は尖っているので袋に入れてもすぐにわかる、ということから、才能のある者は黙っていても知られる、という意味でつかわれます。
また「お天道様が見ているよ」と言われるように、日本人には、良くも悪くも世間には情報が伝わるものだという感覚が強く、黙っていても伝わるのではないか、という期待があります。
おまけにロビー活動というと、どこか後ろ暗くお金も動くような印象から清廉潔白を潔く思う日本人には好まれない向きがあるところです。
しかし国際間交渉の常識は、黙っていては通じないということであり、個人的な信頼と関係を大切に築いたうえで大事なことは声を大にして伝えるということ
今回はプレゼンテーションも相当練習したりプロのアドバイスを受けたりして洗練された印象です。
およそ日本という国がこうした国際舞台で堂々と自説を主張して、人々の心を動かして成果を勝ち取ったというのは初めてのことではないでしょうか。
そういう意味では、東京にオリンピックが来ることは大きな成果として、さらに、日本が国際的に主張する国へと変貌するきっかけになるのかもしれません。
日本がこの活動を通じて得たものは実に大きいことでしょう。