かつて北海道でオートキャンプ場の整備推進活動を一緒に行っていた盟友のAさんと再会して一杯やりました。
北海道でのオートキャンプ場整備推進運動は、自治体が中心となったオートキャンプ場を「オートリゾートネットワーク構想」として連携し、定住人口が減る中で交流人口を増やすことで地域に活性化をもたらそうという試みでした。
オートリゾートとは、オートキャンプ場を中心とした複合的なレクリエーションエリアという概念で、公園の中にオートキャンプ場があるようなものも一つのイメージです。
こうした滞在拠点が道内に点在しネットワーク化することで、ドライブ観光の推進と上記の地域活性化を図りたいという願いが込められた活動でした。
オートキャンプ場の整備で言えば、旧運輸省が「オートビレッジ構想」を掲げたり、環境省が「エコロジーキャンプ」など様々な施策が打ち出されましたが、利用者からすれば、とにかく質の高いキャンプ場ができるのはありがたいことであり、自治体の多くは色々に工夫した起債制度を利用して建設が進められました。
こうしたオートリゾート構想として道内では、平成4年に長沼町のマオイオートランドと苫小牧市のアルテンがオープンしたのを皮切りに、以降整備が進み平成17年度には46カ所が供用されるまでになりました。
観光とは、地域全体の持っている風景、事物、食、人、活動、店などの素材を全て総合して来訪者を楽しませ、もてなす経済行為です。
しかし単に通過する途中で訪ねるよりも、仮にも「一宿一飯の恩義」という日本人の浪花節的な感性に訴えかけることで、地域への記憶と愛着と共感の気持ちをもってもらいたいという願いが、宿泊施設を作ることに込められています。
こうしたオートリゾートネットワーク構想を推進したことで、道内には、それまでは芝生に勝手にテントを張っていたキャンプ場が多かったのが、サイトを区切って水やトイレの設備も整った質の高いキャンプ場が実に多く増えました。
しかしその一方で、管理費と収入の関係を見ると、夏休みと週末が活動の中心であるオートキャンプ場では、稼働日数が少ないためにほとんどのキャンプ場で収益が出ていません。
それは自治体が公園などの管理の一貫として行っているところでカバーしている例がほとんどですが、この経費と地域に及ぼすトータルの貢献を秤にかけているのが実態でしょう。
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オートリゾートネットワーク構想を推進し始めた頃から、そうした課題はある程度見えていて、現役世代が参加の中心である限りこの傾向は変わらないだろうと考えていました。
そしてそれは、当時現役のキャンパーがリタイアして時間が十分にできた時に、空いている平日キャンプへ移行してくれるかどうかが鍵なのではないか、とAさんと話し合ったのをいまでも覚えています。
互いにそろそろそうした年齢にさしかかった二人で、これからシルバーキャンプがどうなるだろうか、と意見を交わしました。
「そういえば、昔、キャンパーがシルバー世代になったら平日利用がされるだろうか、と話しましたよね。Aさんは、いまでもキャンプをしていますか」
「僕のところはしなくなっちゃいました。道具が大きくて持ち運びが大変なのと、うちの奥さんがキャンプはもういいや、という感じなので行かなくなってしまいましたね」
「そうですか。うちは娘が結婚して孫もできたところで、私たちと娘夫婦の二家族でこの週末に道北へ行こうと思っています。かつての現役キャンパーが子供夫婦と行く、という活動もどうなるか見物です」
「そういうある種教育的であり思い出づくり的な活動はあるかも知れませんね。でもやはりそうなると週末中心だよね」
「そうなんです。それと、昔は道具を使って宿泊すること自体が楽しかったのですが、それが『泊まって何をするか』という風に、アクティビティがステップアップしないかな、と思ったのですが、それもなかなか難しいですね」
「そう。かつて先進地としてニュージーランドへ海外視察に行ったことがありますが、やはり泊まって釣りなどのアクティビティをしようと思うような人は当時からホテルに泊まっていました。やっぱりテントを張ることってそれだけで一つのアクティビティだから疲れちゃうんですよね」
「やっぱりそうですよね。私も釣りをするのなら、思い切り疲れた後は畳の上でゆっくり休みたいですもんね」
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テントを張らないキャンプとしては、値段は高いもののコテージによるキャンプというのも一つの流れを作りました。
こちらは数がどうしても増えないのですが、天気や季節を選ばないところと、テントを張る手間がかからないことで高い人気です。
オートキャンプ場はアクティビティと見るか、宿泊手段と見るかでかなり考え方も違いそうですね。
さて、明日からの三連休では道北へテントでのオートキャンプ場へ行ってきます。
どうにも天気が悪そうですが、それもまた経験値を上げる…ということになるでしょうか。
ちょっとびくびくしながらのキャンプです。