つい最近、ネットフリックスというアメリカの世界最大の動画配信サービスが世界130か国・地域でサービスを開始したという報道がありました。
ネットフリックスは日本では既に昨年の9月1日から配信が始まっています。基本的にはケーブルテレビの様な専用回線ではなく、インターネットを介してテレビに繋がるもので、家の中に無線LANの環境があれば、スマホやタブレットなどツールを選ぶことなく見ることができますし、インターネットに繋がっていない既存テレビならば数千円の受信機や超小型パソコンを買えば写すことができます。
また最新のテレビならば既にネットフリックス対応のスイッチが付いているものもあると言います。
動画配信のビジネスモデルは、基本的には月々定額で見たい映像が見放題になるというもので、ネットフリックスはみられるコンテンツが莫大に多く、また値段も格安であるため、利用する人が多いだろうと予想されます。
定額プランは三種類で、画質のきれいさや一度に見られる番組数などが違いますが、650円、950円、1450円の三種類。
なんだレンタルビデオだって最近はそれほど高くないし、月々千円もレンタルビデオに費やしてはいないから損じゃないか、と思われるかもしれません。
しかし、家に居ながらにしておそらくレンタルビデオ屋さんにもないであろう超昔の作品から、誰かに借りられてしまっているかもしれない人気の作品までを自由自在に見ることができ、おまけに返却の手間はないし延滞などということもない環境が手に入ります。
見たかったけれどレンタルビデオ屋が近くにないとか、面倒だとかいった動画コンテンツを遠ざけていた障壁を圧倒的に下げるのがネット動画配信ビジネスというわけ。
このことで、今まで見ることのなかった映画やドラマに触れるようになると、自分の消費時間の中で長時間をそれに費やすという新しいライフスタイルに繋がるかもしれません。
おそらく最もこれを恐れているのは既存のテレビ会社でしょう。ただでさえスマホやインターネットに消費時間を奪われてテレビが見られなくなり視聴率が落ちている今日、さらに視聴者争奪戦に超強力な巨人がやってきたのですから。
Tverなど、民放が連携して見逃し配信を行うようになったのもこうした戦いの一つの小競り合いと言えるでしょうか。
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もっとも日本としてもテレビ会社だけでなく、ドコモのdTVやHuluなど様々な動画配信サービスがあり、これも積極的に顧客を囲い込もうとしてきました。
私はスマホとタブレットがドコモなのですが、契約の時にdTVという月額500円の見放題プランに加入するよう強く勧められて、一応加入すると割引があるという特典目当てに最初は入っていましたがすぐに解約しました。まだ見放題の価値が良くわからなかったからです。(しかし人気シリーズドラマの『ウォーキングデッド』が見られたとは!いずれ契約しようかな)
http://pc.video.dmkt-sp.jp/index?cnt=fo100004
ネットフリックスはアメリカのサービスのため、日本のアニメやドラマなどの版権取得まだ力不足という評価もありますが、その勝負戦略は既存のドラマや映画を買い取って見せるだけではなく、多額の資金を投資したオリジナルのドラマシリーズを創り上げていること。
これが充実したことで、レンタルビデオや他の配信サービスとの料金勝負ではなく、コンテンツ勝負に勝機を見出したのです。
さて、何と言っても人の消費時間には限りがあります。その限りある時間をテレビが取るかスマホが取るか、ネットが取るか、ネット動画視聴が取るか、スポーツ活動が取るかというのは時間と消費者の分捕り合戦の様相で、この勝者こそがビジネス上の勝者と言えるでしょう。。
楽に手に入るものがどんどん増え、かつ値段が下がってゆくネット配信サービス。
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こうした動画配信サービスとは一体何で、どういうことが起きようとしているのかを明らかにしたのが今回読んだ『ネットフリックスの時代』(西田宗千佳著 講談社現代新書)です。
ネットフリックスはただ見たい動画が数多いだけではありません。ネットの利便性を活かして、「それに興味があるならこのドラマはいかがですか?」「この映画はいかがですか?」と興味がありそうな次のコンテンツを薦めてくれる『レコメンド』という機能があるのです。
なのでついつい見ちゃう、という魅力が備わっています。これもネットの情報の力と言えるでしょう。
戦々恐々としているのは既存のテレビだけではありません。時間消費型のレクリエーションやアウトドアレジャー、文化活動など既存のアクティビティがネット動画配信に対抗する術はあるのでしょうか。
消費者が「楽をして○○できる」というのは、ビジネスとしてすごい魅力なのだと思います。私も釣りやキャンプを止めたらビデオ三昧になるのかな。
まずは敵と未来を知りましょう。