北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

下手なのに人気の蕎麦屋、そのわけは

2016-01-22 22:30:48 | Weblog

 以前住んでいたある町に、友人が美味しいと推薦する蕎麦屋さんがありました。

(ふむ、美味しい蕎麦屋と聞いては放っておけないぞ)ということで、近くに行った際に立ち寄ることに。

 ところが実際にその蕎麦屋さんに行ってみて蕎麦を注文すると…、うーむ、蕎麦の切り方が揃っていない…。

 なんと麺の幅が広かったり細かったりして、プロの腕前が感じられません。

 蕎麦を切るときにはできるだけ均等にするというのが上手な技術とされていて、私でも90%以上は同じ幅で均等に切ることができます。

 ところがこのときの蕎麦はそれがばらついていて、おまけに長さも長いのから短いのまでばらつきが。

 蕎麦打ちとしてはできるだけ細く長く均等に打てるということが上手の証みたいなところがあるのですが、そういう腕前にはほど遠いというのが印象でした。

 私の目から見ると、どうにも上手ではないし味もまあまあという感じなのですが、それでもそこを推薦してくれた人にとっては「美味しい蕎麦屋」さんなのでした。

 食べてみたその後で、その蕎麦屋さんを推薦していた人に会ったときに、「美味しいといっていたのは本当にあのお店なの?」と訊いてみました。すると「良かったでしょう?手打ち蕎麦らしくてさ」という答えが返ってきました。

 「手打ちそばらしくてさ」

 初めてそのときに分かったのは、彼は本当に蕎麦の味や技術が優れて美味しいといういうよりも、あの麺の切り方のばらつきに"手打ちらしさ"を感じとってそれを好ましいと思っていたと言うことでした。
 
 最近は蕎麦を切る機械の性能が上がって、細く長い蕎麦を作ることは可能です。なので、魅力的に感じる要素というのは技の上手さというよりは、ばらつきという人間味だったということです。

 逆に、(なるほど、あの蕎麦屋さんはわざと下手に切っているのだ)とようやく気が付いたのでした。


    【上手ければよいというものでもない】


        ◆ 

 
 知り合いのラーメン屋さんが言っていたことを思い出しました。

「最近は食味計が発達しているので、美味しいだけのラーメンだったら簡単に作れるようになりました。でもその美味しいラーメンが人気が出て売れるかというとそうではありません。プラスαの魅力が必要で、それが何かということが商売のキモなんですねえ」

 職人としての上手さの向こうに、人間味をはじめとして買い手の心に響かせる要素とは何か。こだわり?話題性?おまけ?それが分かるということがビジネスセンスということなのでしょう。

 良いものを作れば売れる。しばしば我々はそう考えがちですが、その先のひとひねりに、買い手は人間だという要素を考えるべきなのではないでしょうか。

 下手さが味になる。ヘタウマってそういうことなんですね。

コメント (4)
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