開発局の後輩が所長を務めている道路事務所を訪ねました。
世間話をする中で、彼は「最近、"オンライン面談"を始めました」と言います。
「オンライン面談って、職員に対する勤務評価のこと?」
「いいえ、業者さんたちに対する対応です。最近は在宅勤務が多いもので、せっかく訪ねてきてくださっても会って話ができないことが増えています。そこで、職場のwebexというリモート会議用ソフトを使って、オンラインで会って話をしようという試みです」
「おお、それだとわざわざ事務所を訪ねなくてもいいわけだ」
「はい、おまけに事前に日時を約束することで、在宅勤務の日の家からでも面談ができるんです」
「なるほど。開発局の事務所長にリモートで会いたい、と言うのは敷居が高いかもしれないけどね(笑)」
「いいえ、そういう意味のない壁は取っ払って、意味のある意見交換を効率的にしたいと思います」
なるほど、若い後輩職員には"国の機関は敷居が高い"というような、妙な自意識など無用。実のある情報交換こそ大事という高い意識を持ち合わせた人が増えてきています。
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「そこで、これなんです」と彼がひょいと取り出したのが、平らな板のような電子機器でした。
「これはなあに?」
「書画カメラです」
「書画カメラって初めて聞きますね。これは何をするものなの?」
「昔"OCR"って透明な図版を大きく映し出すプレゼン用の機材があったのを覚えていますか」
「うん、あったあった」
「あれの、"手元を何でも映せるカメラ"ってところです。小学校なんかには"実物投影機"という名称で導入されたところも多いです」
実物投影機なら聞いたことがありました。
学校で先生が子供たちに教科書の絵や図版を示すときに、教壇の上においた撮影機で移してそれをプロジェクターや大きなテレビに映し出していたのを見たことがあります。
折りたたまれていたアームを延ばすと、高さ4~50センチになりました。
「で、なぜこれが良いかということなんですが、工事の現場を預かっていると、現地の現場監督が発注者と打ち合わせをしたいことがよくあります。しかし距離が離れていていちいち車で移動して打ち合わせるのは結構大変です。そこでリモートを活用して、テレビカメラなんかで打ち合わせるということが増えてきました」
「なるほど」
彼が言うには、いざリモートで会議をしようと思うと、図面とか手書きの資料を相手に示すのに、いちいちスキャンしてメールで送るとか、事前にパワーポイントで図版を作らなくちゃいけないとか、図面を見ながら話し合うというのに案外手間がかかるのだと。
それが、この書画カメラならば、手元にある図面や手書きの図をすぐに相手に示すことができて、図や映像をファイルにして送る手間を省略できる。
さらには、カメラを下向きにすれば書画カメラだけれど、自分に向ければリモート会議のカメラにもなるし、新しいものはマイクとスピーカーもついているので、ヘッドセットをしなくてもそのままリモート会議もできるという便利機能もある。
映す図面にはズーム機能もあるので、小さな地図などでも大きく映し出すことができるし、オートフォーカスでピントはばっちり、その場で手書きも色塗りもできる。
彼曰く、「なんでもデジタル化の昨今ですが、この"実際に映す"というアナログ感が、土木工事の現場で物を作るという現場代理人や監督官などのフィーリングにマッチしている感じもする」のだと。
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さらに彼は「打ち合わせも、メールじゃなくて、関係者をグルーピングしてチャットでチャカチャカやればよいのじゃないかと思っているんです。今や若い職員は電話もあまりせず、それよりはパソコンでのチャット感覚の方がコミュニケーションスタイルに合うと思います。そうそう、LINEで会話する感覚に近いのじゃないでしょうか」
うーむ、やはり若い人はデジタル機器の使い方の発想がどんどん進化しています。
仕事も、新しい機械や発想を現代風にアレンジして取り入れながら進化しています。
さて、年寄りはついてゆけるのか…。