先日書いた「関係人口の社会学」という本の感想文。
人口減少に悩む地方にとって、移住・定住を求めるのはハードルが高すぎるし、かといってただ観光に来てくれるだけでは日常の暮らしを安定的に営むための力にはなりえない。
この両者の中間にあるのが、必ずしも地元に住みはしないがこのまちに関心をもって関わってくれる人が外にいるという「関係人口」という考え方です。
ある研究者は「関係人口には『関心を持つ』という意識と『関与する』という行動の両面がある」と言いましたが、なるほど、と思います。
紹介したこの本では、あるところから関係人口と言いながら、「『人口』とは数を意味しているが、関係人口に込められた含意は数と言うより『関わる人』そのものを指していると考えられるであろう」と数への意識を払い去って、移住などによりその町により深くかかわってくれる人について力点を置いた論理展開をしています。
しかし私としては、移住のような高いハードルを越えてくる人ではなく、そこまでいかなくても関心と関与はする、という"人たち"を増やして、より多くからの支援を求めるやり方もあるだろうと思うのです。
そこでもっとも手軽な地域支援、ふるさと支援の方策の一つが「ふるさと納税」ではないかと考えます。
もちろん、単によりコスパの高い返礼品目当てで見も知らぬ自治体にふるさと納税をする人も多いのでしょうけれど、すくなくともそれをきっかけに縁のなかった自治体と新しい縁ができる効果はあるでしょう。
また、やはりかつてお世話になった自治体、市町村への恩義をふるさと納税という形で返すという人も大いに違いありません。
かくいう私も釧路や稚内、掛川などにはふるさと納税をすることでかつてお世話になった気持ちを返しています。
まして地元出身ながら今は都会にいるという人や、ふるさとには帰れないけれどなにがしかの貢献はしたい、という人だって多いはずです。
総務省が作成した「ふるさと納税ポータルサイト」には、ふるさと納税の意義がこのように書かれています。
多くの人が地方のふるさとで生まれ、その自治体から医療や教育等様々な住民サービスを受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行っています。
その結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育った故郷の自治体には税収が入りません。
そこで、「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた
「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制
度があっても良いのではないか」(出典:「ふるさと納税研究
会」報告書PDF)、そんな問題提起から始まり、数多くの議論
や検討を経て生まれたのがふるさと納税制度です。
まさに「ふるさと」に対する寄与貢献であって、そこにはスーパースター的な要素は必要ないし、地元を訪れる必要もありません。
でもふるさとに納税と言う形の寄付をすることで地域に恩恵をもたらしてくれる人の数が大勢いるわけです。
私としては、このふるさと納税の形で地域に恩恵をもたらしてくれる人という意味での関係人口をもっと増やすことで、人口減少に悩む地方への支援をより強化できる方策に非常に期待をもっています。
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今、高校の地理総合と言う新しい学科への支援を模索しているところですが、地方の高校の先生の中には、「地理総合の教科の中で人口減少問題を生徒に扱わせてみたい」と考えている方も多くいらっしゃいます。
まずは人口減少で生じている地元の課題を洗い出したうえで、それがふるさと納税と言う形の寄付や、ふるさと納税以上に関心と関与をしてくれる関係人口を増やすことで解決につなげられないか、という視点の取り組みが良いのではないかと思っています。
この機会に高校生に地元の問題を考えてもらうというのは実に意義深いことですね。
期待が高まります。