こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『海うそ』梨木香歩

2014-12-29 19:37:49 | 読書感想
昭和の初め、人文地理学の研究者・秋野は、緯度的には南九州とほぼ同位置に存在する大きめの島・遅島で、亡くなった主任教授のやり残した仕事を補完しようとフィールドワークをしていた。

古代、修験道のために開かれた島と伝わっていたが、モノミミというさらに古い信仰や、廃仏毀釈によって破壊され跡形も無い寺など、そこにはもっと複雑な背景があった。

また、島に住む素朴で温かい人々は、両親と許婚を亡くした秋野の心を癒していった。

それから戦争を挟んで50年後、再び訪れた遅島は、あまりにも大きく変貌していた。

フィールドワークをしている時は、ひたすら淡々と時が流れているように感じられましたが、50年後、それらの出来事、自然、遺跡、人々がどれほど大切なものだったかを、秋野と共に痛感しました。
秋野には多分、論文を書いていれば少しは・・・という思いが心をよぎったのではないかと思いました。

高度成長期、各地でこのような思いを抱いた人々がいたのでしょう。
コメント
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