こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『失われた過去と未来の犯罪』小林泰三

2016-10-04 19:43:23 | 読書感想
ある独裁者の国で行われた実験により、世界中の人々が長期記憶を保てなくなった。

当時、十七歳だった女子高生・結城梨乃を始め、その事に気づいた人々がメモなどを使って記憶の保存を開始し、多くの人々に広めていった。

この出来事は、その後「大忘却」と呼ばれ、この異常事態を伝えようとした人々を第一動者たちと呼ぶようになった。

その後、インフラの障害の発生を完全に食い止められるようになるのに数か月、障害の完全復旧に至ったのは十年後。
その頃になって、記憶障害についても人工的に長期記憶を行う装置を完成することで、補えるようになった。

記憶を半導体メモリだけに頼る「大忘却」以降に生まれた人々の物語が実に多彩で、身内を思うために罪を犯してしまう気持ちが、痛いほど伝わってきました。

「大忘却」への過程はスリリングでしたが、それ以降の話は胸に沁みるものが多かったです。
また、結末の思いがけなさは、相当大きなものでした。

とても面白く読めました。
コメント
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